原題:Blond Venus

ディートリッヒ+スタンバーグ 1930年代最高のカップルが創り上げた奇跡のエレガンス

1932年/アメリカ映画/配給:オンリーハーツ/日本語版字幕:小飯塚真知子

2000年3月4日よりユーロスペースにてモーニング&レイトロードショー公開

公開初日 2000/03/04

配給会社名 0016

解説

 ベルリン生まれのハリウッド女優、マレーネ・ディートリッヒ。激動の20世紀そのものを生き抜いた彼女は、女優として、妻として、女として、母として、なによりも一個の人間として、完壁なまでの姿を我々に見せてくれた。世紀末を迎えた今、女性史、ファッション史だけにとどまらず、歴史的な背景から見ても20世紀を語るうえで、ディートリッヒは外すことの出来ない人物の一人だろう。ひとつには、彼女が男装や、煙草などそれまでの女性のイメージを一新するスタイルで、大戦後、次々とコルセットを脱ぎ捨て社会に出ていった女性達の象徴となったこと。そして、もうひとつには、典型的なベルリンっ子として生まれた彼女が、ハリウッドに渡り、アメリカに帰化、大戦中にはナチと戦う連合軍将兵のための慰問に身を挺した人だということである。これほどのスケール感を持った女性は他には見当たらない。そんなディートツリヒの魅力を新たな面から見直そうというこの特集上映。ディートリッヒを見出し、ハリウッドに連れていき、彼女を一番美しくフィルムに収めたジョセフ・フォン・スタンバーク監督との一連の作品の中から、あえて、『間諜X27』、『ブロンド・ヴィナス』、『西班牙狂想曲』の3本を選んだ。スタンバークとのコンビでは『嘆きの天使』、『モロッコ』などが有名だが、これらの作品は日本でも観られる機会が多いので、まだ世間ではあまり知られていない作品を鑑賞し、彼女の秘密に迫ってみたいと思う。例えば、『西班牙狂想曲』は、スタンバークとのコンビがうまく行かなくなってきた時期に、とうとうスタンバーク自身カメラまで担当し、挙げ句、興行的には失敗。スペイン政府からはその内容ゆえ、上映禁止令まで出た作品だが、ディートリッピは生涯で一番好きな作品だと語っている。そんなところに、華やかな銀幕の裏にある、彼女のドラマが見えてくるのではないだろうか。

ストーリー

−−−アメリカ人化学者ネッド(H・マーシャル)は、研修で訪れたドイツのナイトクラブ歌手ヘレナ(M・ディートリッピ)に一目惚れし、アメリカヘ連れ帰って結婚する。二人の間には男の子ジョニーも生まれ、貧乏だが幸せな家庭を築いていた。
 ところが、ネッドが研究の最中にラジウムに感染し、ドイツで治療を受けなければいけなくなる。ヘレナは治療費1500ドルを稼ぐため、大反対するネッドを説得して歌手に戻る。
 数年ぶりの初舞台の日、美しい歌手、ヘレナがゴリラの着くるみを脱ぎ捨て姿を現すと、観客は大喝采、一夜で大成功を収める。客席にいた若手敏腕政治家のニック(C・グラント)も、すっかり彼女の歌声と美貌の虜になり、早速楽屋を訪れる。一目で惹かれ会うヘレナとニック。
 ヘレナはニックから受け取ったお金をギャラの前借りだと偽り、夫に与えると、ドイツヘ送り出す。舞台をすっぽかし、ニックに与えられた新しいアパートに息子のジョニーと居着くヘレナ。ネッドの帰国前、ヘレナとニックは二人きりで最後の旅行にでる。「このまま、二人でどこかへ行けたら」というニックに、「夫を愛してるから戻るわ」というヘレナ。
 ところが、帰国が2週間も早まったネッドが、二人の旅行中に戻ってきていた。必死で妻と息子の消息をたずねるうちに、ネッドは金の出所を知ってしまう。
 何も知らず、自宅に戻ったヘレナを詰問するネッド。息子を置いて出て行けと言われたヘレナは、ジョニーを連れて逃げ出した。
 地方を転々としながら逃避行を続けるヘレナとジョニー。そのうち、金も尽き、食うや食わずの生活が続く。一方、ネッドは彼女の捜索願いを出していた。とうとう、ヘレナはある街で見つかり、連絡を受けたネッドが飛んで来る。自分の研究を売ってまでして作った1500ドルをヘレナにたたきつけ、「もう2度と、自分達に近づくな」というネッド。ジョニーを連れて去っていく夫をヘレナは黙って見送るしかなかった。
 愛するものを失ったヘレナはパリに渡り、歌手としてデビューする。彼女がナイトクラブの看板女優として人気者となるのに半年もかからなかった。
 偶然、パリに滞在していたニックが、ヘレナのショーを観に来る。彼女は白のシルクハットに白の燕尾服で登場。堂々としたスターぶりをみせた。ショーの後、楽屋を訪れたニックに説得され、ヘレナはアメリカに戻ることを決意する。
 懐かしの我が家で久しぶりに愛息子と対面し、感涙するヘレナ。ネッドとも和解し、元のさやにに戻ったのだ。(日本公開1932年)

スタッフ

原案・監督:ジョセフ・フォン・スタンバーク
脚本:ジュールス・ファースマン
撮影:バート・グレノン
音楽:オスカー・ポトカー
衣装:トラヴィス・バントン
美術:ウィアード・イーネン

キャスト

マレーネ・ディートリッピ
ハーバート・マーシャル
ケーリー・グラント
ディッキー・ムーア

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