原題:ANYWHERE BUT HERE

母の思い…娘の心 揺れ動き、よりそう二人のハート

1999年度作品/アメリカ/シネマスコープ/ドルビーSR・SRD/上映時間:1時間54分/ 字幕スーパー翻訳:松浦美奈

2003年04月11日よりDVD発売&レンタル開始 2000年6月24日よりシャンテシネ、新宿シネマカリテ他にて公開

©1999 TWENTIETH CENTURY FOX

公開初日 2000/06/24

配給会社名 0589

解説

デッドマン・ウォーキング」でアカデミー賞に輝き、「グッドナイト・ムーン」などで説得力のある女性・母親像を演じてきたスーザン・サランドンと、デビュー作「レオン」でスターの仲間入りをし、「スター・ウォーズ/エピソード1 ファントム・メナス」ではクイーン・アミダラに起用されたナタリー・ポートマンの共演で、時におかしく、時にほろ苦い母と子の心の旅が情感豊かにつづられる。
 娘のためを思うからこそ選んだ道なのに、いつも的外れな言動で娘を悩ませてしまう母。母の愛はわかっていても自分の道を踏み出したい娘。母なら、娘なら、この気持ちがわかるはず。だれもが一度は感じたことのある、母と娘の鬱陶しくて、でも何ものにも代え難い関係を、映画は温かいまなざしで描き出していく。何気なく見えるエピソードに、ふと思い出すかつての自分自身の体験。ていねいな語り口ににじむ、本物の母娘の感情。二人の心の揺らぎがハッとするほどヴィヴイッドに胸に響いてくる。
 原作は様々な賞に輝くモナ・シンプソンの小説。二人の女性の友情を描いた「ジュリア」と、アメリカの家族の真の姿をえぐり出した「普通の人々」で2度にわたってアカデミー脚本賞を受賞している名手アルビン・サージェントが、ここでも二人の女性=家族の感動的な絆を、繊細に、鮮やかに浮かび上がらせる。
 そして、この映画のもう一つの主役はロサンゼルスの町そのもの。ロスはアデルの夢の象徴でもある。映画を見ていると、これまで幾多の映画で見慣れていたはずのロサンゼルスの新鮮な表情に驚かされる。「お定まりのイメージではなく、真のロスを描きたかった」というワン監督の意図に応えて、撮影、プロダクション・デザイナー、衣裳デザインのチームが作り出した背景としての”町”が、ストーリーを力強くサポートしている。
 
 ときには愚かだけれど、娘をだれよりも愛している母アデルを演じたスーザン・サランドンは、彼女の複雑な性格に興味を引かれたという。厳しい作品選びで知られる知性派女優が、ここでは意外なコメディのセンスで”変人”を愛すべきキャラクターにしている。一方、賢い娘アンには、ワン監督が「レオン」を見て以来仕事をする機会を待ち望んでいたというナタリー・ポートマン。口では母を非難しているが心の底では深い愛情で結ばれているアンを、持ち前の品性と知性を漂わせて好演している。ちょうど14歳の娘がいるサランドンと、大学進学を控えていたポートマンにとって、この映画は決して人ごとではない、人生の予行演習のような意味合いもあったようだ。
 また、「ダイ・ハード」シリーズのボニー・ベデリア、「イン&アウト」のシャーン・ハトシー、「ベストフレンズ」のハート・ボックナー、「ゴールデンボーイ」のヘザー・マッコームらが、二人を囲む人々をリアリティのある存在感で演じている。

ストーリー

14歳のアン(ナタリー・ポートマン)はお気楽でハデな母アデル(スーザン・サランドン)を疎ましげに見つめている。アンは思う。「私は母が憎い。母は私の人生を台無しにした」と。
 車は今、西海岸に向かっている。アデルはウィスコンシン州の小さな町ベイ・シティでの退屈な毎日に我慢できず、再婚した夫テッドや老いた母、姉夫婦らに別れを告げて夢の町ロサンゼルスを目指していた。なけなしの金をはたいて買ったのが中古のベンツ。夢の門出を祝うにはゴージャスな車に限る、というのが見栄っ張りのアデルの考え。アンはテッドのプリマスの方がいいと思うのだが……。
 アンの実の父親は彼女が4歳のときに家を出て、今はラスベガスに住んでいた。アデルはロスで教職を見つけるつもりでいる。彼女は娘の才能を伸ばすのが母親の務めと信じ、アンを女優にしたがっている。二人は考え方も服装の趣味も、何から何まで正反対だった。
 やがて車はビバリーヒルズに到着し、二人は美しいパーム・ツリーの並木道にみとれた。早速ビバリーヒルズ・ホテルに入って行くが、1泊1200ドルと聞いて安モーテルヘと方向転換。バスルームに閉じこもったアンは、従兄のベニー(シャーン・ハトシー)の写真を見ながら、田舎での楽しかった日々を懐かしむ。
 二人はダイナーで知り合った不動産屋ゲイル(キャロライン・アーロン)の紹介で安アパートに居を構えた。アデルの就職先も決まった。アデルの学校は騒々しくて物騒だし、アンの学校はビーチ・スタイルの生徒であふれていたが、二人はそれぞれの生活にしだいに馴染んでいく。けれど、だんだんお金も底をついてきて、電気も止められるありさまだ。
 二人は夜逃げ同然に引っ越しを繰り返した。アデルは無理やりアンをオーディションに引き回した。夏になり、アデルはビーチで出会った歯科矯正医師のジョシュ(ハート・ボックナー)に愛想を振りまいて電話番号を渡す。
 そんなある日、べニーが田舎からやって来た。アンの友人も加えてロス観光を楽しむベニー。数日後、ベニーを見送った空港で、アデルは一瞬アンの姿を見失ってパニックに陥る。わざと姿を隠したアンは、そんな母を見て改めてその愛の深さを知らされる。
 ある日、ジョシュから突然電話が入った。狂喜してデートに出かけ、朝帰りしたアデルは、嫌がるアンを起こして日の出を見に海岸へ出かける。ジョシュとの夜を楽しそうに告白するアデル。しかし、ジョシュにとって彼女は一夜の相手でしかなかった。
 アデルの姉キャロル(ポニー・ベデリア)から電話があったのはその頃のことだった。べニーが交通事故で死亡し、母がショックで入院したという。葬式に出席するため、久しふりにベイ・シティに戻った二人。アンにとって心の拠り所だった家が、今ではとても小さく見えた。友人が言うようにアンは変わったのかもしれない。その晩、キャロルの夫とケンカして家を飛び出したアデル。アンは迷った挙げ句、母とともに家を後にする。
 アデルの頭はジョシュのことでいっぱいだった。学校で教師たちの賃上げデモが始まるや、先のことも考えずに辞めてしまう。そんなアデルにあきれて、また口げんかを始めるアン。ある日、嫌々オーディションに出かけたアンは、審査会場でジョシュを巡る母の実体験のドラマを演じていた。様子を見に来てこれを覗いたアデルは、いたたまれずにその場を去る。
 アンの願いは”普遍”に暮らすこと。そして、父を探すことだった。ある日、彼女は友人たちに促されて父に電話をかける。驚きながら、アデルの差し金による金の無心ではないかと疑う父。彼の言葉に傷つき、涙を流すアン。
 アンはクラスメート、ピーター(コルビン・オールレッド)から再三デートに誘われるが、どうも素直になれない。その夏、彼女は17歳になった。アデルは老人のリハビリ施設で働いていた。そこで知り合ったジャックとつき合ってはいるが、愛は感じない。アンは地元のUCLAに進学するように言うアデルを無視して、東部のブラウン大学に願書を出した。けれど、当てにしていた奨学金は一部しか出ず、つまりは入学できないという現実に突き当たる。自分に黙って娘が願書を出したことに傷つくアデル。母から離れて自分の人生を生きたいと思うアン。その夜、泣きながら車を運転していたアデルは、一時停止を無視していつかの警官に呼び止められる。「あの子のためなら何でもするのに」と泣きわめくアデル。静かに聞いていた警官は、「それが答えでは?」と優しくアデルに言う。
 翌日、アデルは通りかかった女性に自慢のベンツを売り払った。アンは「私たちの出発の車なのに」と驚くが、アデルの顔は誇らしげに輝いていた。やがてアンが東部に旅立つ日がやって来た。二人はようやく自分たちの関係に折り合いをつけ、新しい道を踏み出そうとしていた。

スタッフ

監督:ウェイン・ワン
製作:ローレンス・マーク
脚本:アルビン・サージェント
原作:モナ・シンプソン
製作総指揮:ジニー・ナジェント
撮影:ロジャー・ディーキンズ、A.S,C./B.S.C.
プロダクション・デザイナー:ドナルド・グラハム・バート
編集:ニコラス・C・スミス、A,C.E.
衣裳デザイナー:ベッツィ・ハイマン
音楽:ダニー・エルブマン

キャスト

アデル・オーガスト:スーザン・サランドン
アン・オーガスト:ナタリー・ポートマン
リリアン:エイリーン・ライアン
テッド:レイ・ベイカー
ジミー:ジョン・ディール
ベニー:シャーン・ハトシー
キャロル:ポニー・ペデリア
ヒシヤム:ファラン・タイール
ゲイル・レターファイン:キャロライン・アーロン
ピーター:コルビン・オールレッド
ジャニス:ヘザー・マッコーム
警官:マイケル・ミルホーン
ジョシュ・スプリッツァー:ハート・ポックナー

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