原題:AMERICAN BEAUTY

この映画は、仕事について−−− 家族について−− 隣人について、語ります。

アカデミー賞最有力候補! ゴールデン・グローブ賞  最優秀作品賞、監督賞、脚本賞 獲得! ナショナル・ポート・オブ・レビュー 最優秀作品賞受賞 ナショナル・ポート・オブ・レビュー 最優秀新人賞受賞 ロサンゼルス批評家協会賞 最優秀監督賞受賞

1999年/アメリカ/ドリームワークス映画/コーエン・ジンクス・カンパニー・プロダクション/UIP配給 /3,344m 6巻/2時間2分/DTS、SRD、SDDS、SR/シネマスコープ/翻訳:戸田奈津子

2012年07月13日よりDVDリリース 2009年04月10日よりDVDリリース 2005年02月25日よりDVD発売開始 2002年11月22日よりDVD発売&レンタル開始 2000年4月29日より丸の内ピカデリー2ほか公開

公開初日 2000/04/29

配給会社名 0081

公開日メモ 平凡な日々の中で、人はそれぞれの“ビューティー(美)”を夢見る。そして、彼らが無意識にしてきた“がまん”を放棄し、自分の“ビューティー”に向かって邁進する時、何かが起きる。この物語には、そんなコワさが潜んでいる。

解説


平凡な日々の中で、人はそれぞれの“ビューティー(美)”を夢見る。そして、彼らが無意識にしてきた“がまん”を放棄し、自分の“ビューティー”に向かって邁進する時、何かが起きる。この物語には、そんなコワさが潜んでいる。
 これは、ごく普通の市民として、普通の毎日を送ることが、どんなにストレスに満ちているかを、一見、普通に見えるサラリーマン家庭を中心に描いた物語。ただそれだけなのに、まじめにおかしく、陰気でコミカル、そして、時に残酷さも垣間見せる。ともあれ、アメリカの夢の終焉をシニカルに描いた傑作であることだけはまちがいない。
 全米で驚異的なヒットとなった本作は、”本当のアメリカン・オリジナル”と評され、今や世界的な注目を集めている。機能不全に陥ったアメリカの中流家庭が、あらがえない強い引力で“事件”へと転げ落ちていく様が、不可思議な空気の中で描かれる。倦怠が愛を上回り、体裁が本音を覆い隠す日々。不毛感、孤独感、閉塞感……現代人の精神構造をこんなにおかしく、新鮮に捉えた映画は、これまでになかった!
 舞台は郊外の新興住宅地。主人公のレスター・バーナムは、中年サラリーマン。住宅ローンを抱える身に、リストラの風が冷たく刺さる。妻のキャロリンは、取り柄のない夫にうんざりしながら、自分の理想とするオシャレ生活を躍起になって守っている。ハイスクールに通う娘ジェーンは、カッコ悪い父親を嫌って、ろくに口もきかない。アメリカならずとも、世界中、どこにでもある家族模様だ。だが、レスターが、突然、美少女に遭遇したことから、事態は急変する。吹っキレたのか、キレたのか別ムラムラと燃え上がった中年男の恋心が、すべてを、危険な方向へと変えていく……。
 主人公レスターには、『ユージュアル・サスペクツ』でアカデミー賞助演男優賞を受賞したケビン・メヘイシー。頭脳戦専門の知恵者を演じることが多かったスペイシーが、普通のダメ男役に初挑戦だ。妻キャロリンを演じるアネット・ベニングも、『バクジー』などで見せたゴージャスな女のイメージを返上、上昇志向に取り愚かれた女の見苦しさと痛々しさを、いわば捨て身で演じている。娘のジェーン役には『パトリオット・ゲーム』のゾーラ・パーチ。自分が望むものが何かもつかめない、不安定なティーンエイジャーを好演する。その友人で、レスターの不埒な妄想の対象となる美少女アンジェラには、『アメリカン・パイ』などのミーナ・スバーリ。また、得体の知れない隣家の青年リッキー役は、多くの若手人気スターが候補になった中で、無名の新人ウェス・ベントレーに白羽の矢が立った。ビデオフリークで無機質な美を愛するリッキーの登場は、鬱屈したジェーンに大きな変化をもたらしていく。その両親、退役軍人の父にクリス・クーパー(『遠い空の向こうに』)、息をひそめて家族を見守る母にアリソン・ジャニー(『パーフェクト・カップル』)が扮し、おかしいような哀しいような絶妙の演技を見せる。さらに、キャロリンの浮気相手として、『あなたが寝てる間に…』のピーター・ギャラガーが登場して彩りを添える。
 監督は、イギリス演劇界で名を馳せた新進気鋭の演出家サム・メンデス。本作で、映画監督としてのデビューを飾った。最高の俳優たちから最高の演技を引き出すため、映画では珍しい舞台流のリハーサルを実施。また、イギリス人であることが、この生々しいアメリカ的なドラマに、一種の“退いた”視点を付加し、全編に乾いたトーンを生み出した。製作は、ブルース・コーエン(『マウス・ハント』)とダン・ジンクス(『ナッシング・トゥ・ルーズ』)。卓抜な脚本は、テレビシリーズ「シビル」で活躍したライター、アラン・ボールが書き下ろした野心作。映画の脚本は本作が初めてだ。
 初監督作を充実させるため、メンデスは熟練のスタッフを選択した。まず、『明日に向って撃て!』でアカデミー賞を受賞した撮影監督コンラッド・L・ホール。『リプレイスメント・キラー』の美術監督ナオミ・ショーバン。『12モンキーズ』でアカデミー賞候補になった衣装デザイナーのジュリー・ワイス。そして、音楽は、『ショーシャンクの空に』などで3度、アカデミー賞にノミネートされたトーマス・ニューマンが担当した。
 タイトルの”アメリカン・ビューティー”とは、妻が庭で栽培する米国産の赤いバラの品種名。主人公レスターは、その深紅のバラに埋もれて、文字通りビューティー(美少女)を抱くことを夢見る。妻は、素敵な家に住み、素晴しい仕事をすることが人生のビューティー(成功)だと信じている。隣家の青年とジェーンは、風に舞うビニール袋に共通の美学(ピューティー)を見出す。それぞれの”ビューティー”が、それぞれの登場人物の運命を狂わせていく。

ストーリー



レスター・バーナム(ケビン・スペイシー)は42歳。雑誌社で広告の仕事をしている。郊外に買った家で、妻キャロリン(アネット・ベニング)、娘のジェーン(ゾーラ・パーチ)と暮らしている。妻は、外では不動産ブローカーとして活躍、家では家具から庭のバラまですべてコーディネートし、雑誌から抜け出したような生活を愛している。それが彼女の大好きな“成功”の在り方だった。娘は典型的なティーンエイジャーで、怒りと不満で常に情緒不安定、まともに口もきかない。レスターの生活は、死んだようなもの。その上、今日は上司に呼ばれ、リストラを前提としたリポート提出を言い渡される。ある日、レスターはジェーンがチアガールとして出場するバスケットの試合を見に行った。だが、レスターの目はジェーンではなく、チームーの美少女アンジェラ(ミーナ・スバーリ)に釘付けになる。その瞬間、レスターは、いってみれば恋におちたのだ。そんな様子を察知して、アンジェラは得意顔。ジェーンは、自分の友達にメロメロの父親を心底ケイベツする。不機嫌になって帰宅したジェニンは、少し離れた所から、自分をビデオで撮影している青年に気づく。隣に越してきたリッキー(ウエス・ベントレー)らしい。
 そのリッキーが、ジェーンと同じ高校に転校してきた。彼は、美しいアンジェラには見向きもせずに、ジェーンに対して強い関心を示す。リッキーの家は、元海兵隊大佐の父(クリス・クーパー)の威厳がすべてを支配していた。母(アリソン・ジャニー)は、ほとんど神経症のようになっている。クリスマス・パーティーの夜、キャロリンの見栄にうんざりしているレスターに、ボーイのアルバイトをしていたリッキーが声をかける。レスターは、リッキーに勧められてマリファナを吸い、最高にハイな気分を味わった。その夜、レスターは、家に泊まりに来ていたアンジェラが、「もう少し筋肉をつけたら、レスターと寝るわ」と言っているのを立ち聞きする。そうか、筋肉か!奮い立つレスター。彼はそのまま地下室に飛んでいき、古い鉄アレーを持ち出した。
 真夜中、キャロリンは隣で寝ている夫の様子がおかしいことに気づく。なんと、レスターは、裸のアンジェラを夢想し、自慰にふけっていたのだ。キャロリンは、火がついたように騒ぎ出した。その時、レスターの中で何かがキレた。
 次の日、上司の不倫をネタに脅して会社を辞め、学生時代のようにハンバーガー・ショップで気楽なアルバイトを始める。口やかましい妻には皿を投げつけ、生意気な娘を平手打ちした。後先を考えず派手な車を買い、リッキーからはマリファナを買い続けた。筋肉トレーニングにも余念がない。もちろん、アンジェラに好かれたい一心からだ。夫がそうなら妻のキャロリンだって負けてない。かねてから仕事上の高嶺の花だった不動産王バディ(ピーター・ギャラガー)に急接近し、ついに安っぽいモーテルでベッドイン、欲求不満を一気に解消していた…。

スタッフ

監督:サム・メンデス
脚本:アラン・ボール
製作:ブルース・コーエン、ダン・ジンクス
撮影:コンラッド・L・ホール,A.S.C.
プロダクションーデザイナー:ナオミ・ショーハン
編集:タリク・アンウォー、クリストファー・グリーンバリー
衣裳デザイン:ジュリー・ウェイス
音楽:トーマス・ニューマン
音楽:スーパーバイザー、クリス・ダーリダス

キャスト

レスター・バーナム:ケビン・スペイシー
キャロリン・バーナム:アネット・ベニング
ジェーン・バーナム:ゾーラ・パーチ
リッキー・フィッツ:ウエス・ベントレー
アンジェラ・ヘイズ:ミーナ・スバーリ
バディ・ケイン:ピーター・ギャラガー
バーバラ・フィッツ:アリソン・ジャーニー
フィッツ大佐:クリス・クーパー

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