原題:UNE AFFAIRE DE GOUT

それは、不完全なる調和……。

フランス映画祭横浜2000出品::http://www.nifty.ne.jp/fanta/france2000/

(初公開:フランス2000年04月26日公開)

2000年/フランス映画/90分/35mm/カラー/1:1.85ヴィスタ/DTSドルビー 配給:クレストインターナショナル

2000年11月18日より新宿シネマスクエアとうきゅうにて公開 2001年6月6日DVD発売/2001年6月6日ビデオ発売

公開初日 2000/11/18

配給会社名 0096

解説

男は、青年に自分と同じ味覚を持たせようと思った。それが「もう一人の自分」をつくる手始めだった。青年は男の味覚を共有し、その分身となり、最後には相手を乗っ取れると思った。手繰り手繰られ、魅了し魅了される心理ゲームは、同じ歓び、同じ絶望を感じるまでつづき、その「趣味=テイスト」の問題が命にかかわる危険なゲームヘとつきすすむ。復讐よりも、脅迫よりも、いちばん怖いサイコティックでセンシュアルなサスペンス。

 テレンス・スタンプ主演の前作『私家版』で“本が人を殺す”という新しい心理ミステリーを仕上げたベルナール・ラップ。その彼が、新たに創造し、鮮やかな手さばきで完成させた心理サスペンスが、この『趣味の問題』である。冒頭、何か恐ろしい事件が起こる。このサスペンスの核心は、「何」が起きるかでなく「何故」起きたのか、だ。観客はその「何故」をひとつ、またひとつ見つけるたび、知らず知らずに、人間の心の淵へと近づいてしまう。

 第1の登場人物はフレデリック。富も名声も得た経済界の実力者。すべてに洗練された趣味を持ち、完壁主義者で、美食家として知られている。第2の登場人物はニコラ。若く美しく野心を秘めた青年。フレデリックはニコラが自分とまったく同じ「趣味=テイスト」を持つことを望む。同じものに感動し、同じものを愛し、同じものに歓びを感じる「もう1人の自分」がいたら…。ニコラもまた、フレデリックの分身となることに、甘い誘惑を感じる。彼はいつか、フレデリックとの立場を逆転し、相手を乗っ取るのだという欲望を心の内に育てていく。
 裕福な男と、それに憧れる青年の気紛れな遊びかに思われた2人の関係。しかし、やがてそれは、2人にとって命さえ賭けるべき危険なゲームとなり、その心理の交錯は、観る者を思いもよらぬ崖っぷちまで引きづっていく…。

 原作はフランスの作家フィリップ・バランのミステリー小説。その同名原作を、監督ベルナール・ラップとともに、知的な刺激と官能性にあふれる心理サスペンスに仕上げたのは、アンドレ・テシネの『野性の葦』などで知られる脚本家ジル・トラン。撮影には『エステサロンヴィーナス・ビューテイ』のジェラール・ド・バティスタがあたっている。また、音楽は『私家版』に引き続き、ジャン=フィリップ・グード。オープニングを印象的に彩るのはヴィヴァルディの《ニシ・ドミヌス》の第4曲である。

 主演のフレデリックに、名優ベルナ—ル・ジロドー。青年ニコラには、期待の若手実力派ジヤン=ピエール・ロリ。二人を支えるキャストとして、ジャン=ピエール・レオー、シャルル・ベルリング、紅一点のフロランス・トマサン。その他、『ヘンリー&ジューン』のアルチュス・ド・パンゲルン、『ペダル・ドゥース』のロラン・スピールヴォージェル、『見憶えのある他人』のアンヌ=マリー・フィリップが引き締まったアンサンブルでサスペンスを盛り上げている。

 本作は2000年フランスコニャック国際ミステリー映画祭に出品され、ブライアン・デ・パルマの絶賛と強力な推薦で見事グランプリをはじめ3賞を獲得。審査委員長オリバー・ストーンから賞が手渡された。洗練された趣味を持ち、美食家として知られる経済界の実力者フレデリック。ある日、彼は青年ニコラに出会い、料理を的確な言葉で表現する才能があることに気づくと、自分のパーソナル・テイスター(試食係)になるよう多額の報酬を提示する。やがてフレデリックは料理の味見だけでなく、ありとあらゆる事をニコラに“味見”させるようになる。そして、その危険な戯れは二人をそれぞれの深淵へとひきずりこんでいく…。

ストーリー

まるで心を失ってしまったかのように、浴室に座りこんでいるニコラ。恋人ベアトリスが何を問いかけても、口を閉ざしたままだ。一体、何が起こったのか?判事が、精神鑑定の専門家が、医師が、彼の心の謎を理解しようとする。次々に関係者たちが登場し、それぞれの立場から惨劇を語る。

 
 フレデリック・ドゥラモンは、リヨンで国際的な化粧品会社を経営している五十代のフランス経済界の有力者。三ツ星レストランをも敬服させる美食家である彼は、すべてに洗練された趣味を持ち、財産も権力も名誉も得て、まさにその成功の頂点にいる。ある日、彼はレストランで働く青年ニコラに出会う。ニコラは、若く美しいだけでなく、レストランが出す料理を適格な言葉で表現することができた。一目で彼を気に入ったフレデリックは、自身のパーソナル・テイスター(試食係)になるよう、多額の報酬を提示する。
 あまりにも風変わりな申し出にニコラはためらいを覚えるが、同時に謎めいた魅力を感じ、仕事を受け入れる。高級スーツに身を包み、常にフレデリックと行動を共にするようになるニコラ。フレデリックが嫌いな魚とチーズが料理に含まれていないかを確かめたり、接客の相手に薦めるメニューを決めたり。ニコラは恋人ベアトリスには仕事の内容を明かさず、ベアトリスはニコラがしだいに変わっていくことに不審を抱きはじめる。
 しばらくし、フレデリックは研修と称してニコラを自分の別荘へ連れていく。本当に味のわかる舌を持つために、一度絶食をする必要があるという。そして、つらい絶食を終えた時、ニコラを待っていたのは山盛りの豪華な魚介類料理とチーズのデザ一ト。最高級の食事を貪ったニコラだったが、その晩ひどい食当たりをおこしてしまう。だがしかし、それは自分と同じように魚とチーズを嫌うようにと、フレデリックの差し金でコックが嘔吐剤を盛ったせいだった。悪びれもせず、その事実を告げるフレデリックに嫌悪感を悪じながらも、ニコラは彼との仕事を辞めることができなかった。
 自分の生活に不快な出来事が入り込むのを防ぎ、完璧を手に入れたいと望むフレデリックは、ニコラがすべての趣味を共有する”もう一人の自分”になることを欲する。しだいに、フレデリックはニコラに料理の試食だけでなく、ありとあらゆる“味見”をさせるようにエスカレートしていく。人を殴った手の感触を説明させたり、ニコラに女を先に抱かせてから、自分がベッドを共にするというように。二人の関係は、雇い主とテイスターから微妙な変化を見せ始め、危険な様相を呈していく。金持ちの気まぐれで始まったこの奇妙なゲームは、ニ人を予想もしなかったそれぞれの深淵へとひきずりこんでいくのだった…。

スタッフ

監督:ベルナール・ラップ
脚本:ジル・トラン、ベルナール・ラップ
原作:フィリップ・バラン(「趣味の問題」早川書房刊行予定)
製作:カトリーヌ・デュサール
製作補:シャルタン・ペラン
製作主任:フランザベルベール・ダマンム
助監督:クリストフ・シェイソン
撮影:ジェラール・ド・バティスタ
編集:ジュリエット・ヴェルフリング
録音:ポール・レネ
音編集:ヴァンサン・ギヨン
調整:エリック・ティスラン
音楽:ジャン=フィリップ・グード
美術:フランソワ・コメ
衣装:マルティーヌ・ラパン
配役:ジェラール・ムレヴリエ
クラリネット:ポール・メイエ
ピアノ:ブリュノ・フォンテーヌ

キャスト

フレデリック:ベルナール・ジロドー
ニコラ:ジャン=ピエール・マリ
ベアトリス:フロランス・トマサン
ルネ・ルセ:シャルル・ベルリング
予審判事:ジャン=ピエール・レオー
フラヴェール:アルチュス・ド・パンゲルン
ロシニョン医師:ロラン・スピールヴォージェル
カロリーヌ:エリザベット・マココ
フェエリエール女医:アンヌ=マリー・フィリップ
ナタリー:デルフィーヌ・ジング
マルコ:ダヴィッド・ダンジェオ
フェリックス:フレデリック・ゴルドフィーム
運転手:パトリック・ジンメルマン
警備員:クロード・レスコー
第二の味見人:ヴァンサン・テペルノフスキ
シェフ:フィリップ・シャヴァン
レストラン店主:ミシェル・コルド

LINK

□IMDb
□この作品のインタビューを見る
□この作品に関する情報をもっと探す