原題:HELL

平成ニッポンの眠りをさます鬼才・石井輝男監督の世紀末超話題作!

☆東京国際ファンタスティック映画祭'99出展作品::http://www.nifty.ne.jp/fanta/tokyo/index.htm

1999年度石井プロダクション作品/ヴィスタサイズ/カラー 監督・脚本・プロデューサー:石井輝男/製作:石井プロダクション 配給:石井プロダクション+オービー映画

2002年08月28日よりDVD発売開始 2002年4月12日ビデオ発売2002年4月5日ビデオ発売&レンタル開始 1999年11月20日より上野スター座にてロードショー

公開初日 1999/11/20

配給会社名 0435/0578

解説

連続幼女誘拐殺害事件、宗教団体による事件、毒入りカレー事件……。平成日本を震撼させた事件を生々しく再現し、事件を引き起こした犯罪者たちを地獄で裁くという戦慄の世紀末超問題作、その題名は『地獄』。この誰も手をつけたがらないアンタッチャブルな題材に挑むのは鬼才・石井輝男。
『網走番外地』シリーズで高倉健を大スターに育て上げ、近作『ゲンセンカン主人』『無頼平野』『ねじ式』でも独特の石井ワールドを展開し、健在ぶりをアピールし、90年代に入ってからの旧作『恐怖奇形人間』や『徳川いれずみ師・責め地獄』の名画座上映の人気も手伝って“キング・オブ・カルト”監督として若者を中心とする映画ファンに絶大なる人気を誇る、文字通りの鬼才監督である。
常に時代の最先端を行き、スキャンダラスな話題を提供してきた石井監督だが、本作は中川信夫監督『地獄』、そのリメイクである神代辰巳監督『地獄』の三度目の映画化ながら、前2作があくまでもフィクションで構築された地獄図であったのに対して、本作は平成日本に起きた大事件を物語の中心に置き、全く新しい視点で映画化。日本全土を恐怖のドン底に陥れた事件を克明に再現し、犯人たちに地獄の閻魔大王が刑を下すという、実録&怪奇映画のテイスト溢れる超モンドな間題作である。
そもそもは刑事被告人の人権ばかりが取り沙汰されて被害者の肉体的および精神的苦痛はないがしろにされてはいないだろうかという、石井輝男監督の義憤から出発した本作だが、これを社会派の間題作として映画化するのではなく、モンドでビザールな石井ワールドに題材を引き付けて、映画化したところが“キング・オブ・カルト”の称号にふさわしい石井監督の面目躍如たるところだ。そのため石井監督は私財を投げうって、本作の映画化になみなみならぬ熱意を燃やしている。
もちろん各方面から激しい非難の声が上がるのも承知の上。本作は人々の記憧から事件が風化する前に一体あの事件は何だったのかを日本国民に問い、刑事披告人の人権擁護ばかりを唱える風潮に対する挑戦状でもあるのだ。

石井輝男監督自身の手による脚本が書き上げられ、早速映画化の準備が開始されたのが、今年の初春。内容があまりに過激なため、及び腰になるスタッフ編成は難航し、ピンク映画のスタッフと、石井監督を慕う若いスタッフ、それに映画製作を志す映画学校出身の若者や学生などを中心に、スタッフ編成が行われた。製作総指揮はピンク映画第1号『肉体の市場』を監督し、今もピンク映画界最古参の監督として精力的に作品を発表する小林悟が担当。かって新東宝では石井監督の助監督に就いた経験があり、いわば石井監督とは師弟の関係にある仲。難航する撮影を取り仕切るため、真っ先に石井監督に駆け付け、スタッフ編成を行った。撮影の柳田友貴は小林悟監督とピンク映画でコンビを組むベテラン。美術監督には平成ガメラシリーズの特殊造型など、日本の特殊造型の第一人者である原口智生が担当し、赤鬼や青鬼が罪人どもを裁く地獄をめくるめく美術と特殊造型でクリエイト。亡者たちがさまよう阿鼻叫喚のおどろおどろしい血の池地獄、無間地獄などを平成日本に現出せしめた。
キャストはオーディションによって選ばれ、事件の被疑者や関係者を連想させるそっくりさんが多数キャスティングされた。物語の狂言回しとして、おぞましい事件を再体験しながら、地獄と事件を往還するヒロイン・リカには、新人・佐藤美樹を大抜擢。彼女は名古屋の大学に通う現役女子大生である。ほかに某宗教団体の危険性をいち早く報道する女性ジャーナリストに西谷有可、リカを地獄へ案内する魔子にサンミュージック期待の新人・斉藤のぞみ、宗教団体の信者・夢子にオーディションで選ばれた新人・小野裕美が顔を揃える。
そのほか、石井監督の古巣、旧・新東宝の出身のスターたちが石井監督の熱意に応じて大挙出演。主なところでは、石井組の支柱ともいうべき丹波哲郎を始め、若杉英二、鳴門洋二、浅見比呂志などの石井作品には欠かせない顔のスターが重要な役で出演。とりわけ日本映画史上、初のヌードを披露して、日本中にセンセーションを巻き起こした伝説的女優、前田通子が閻魔大王の役で42年振りに日本映画の銀幕に復帰するのも話題のひとつ。ほかにもゴジラ役者の薩摩剣八郎、高崎隆二、特別出演として、石井監督の熱烈な信者の脚本家・桂千穂、石井監督の『元禄女系図』『徳川いれずみ師・責め地獄』など東映“異常性愛路線”の脚本家・掛札昌裕など、石井監督の待望の新作に駆け付けた著名人も多数ゲスト出演する。
撮影は都内某所のスタジオで極秘に開始され、宗教団体の修行道場を始め、鬼たちが闊歩する血の池地獄、亡者たちがさまよう三途の川、閻魔大王が君臨する閻魔庁などのセットが組まれた。ロケ地は極力事件の起こった場所で行われる予定。忌まわしい連続幼女殺害事件、宗教団体の十指にも余る犯罪の数々とその組織の実態、毒入りカレー事件、一般の人々が新聞やマスコミを通してしか知ることのできなかった事件の全貌が明らかにされる。平成の日本に何が起こったのか、事件から学ぶべきものは何なのか、少なくとも「怖い」とかいって目をそむけたり、事件の本質から目をそらせ、記憶の中に風化させることは何の教訓にもならないのではないか。再びこのような忌まわしい事件を引き起こさないためにも事件を検証し、それら事件の意味を仏教的な地獄という概念で対比させることによって、浮かび上がってくるものがあるはずだ。
キワモノ映画結構。映画の歴史はキワモノ映画の歴史でもあったのだ。アメリカのB級映画の帝王ロジャー・コーマンを見たまえ。コッポラもスコセッシもそこから出発したのだ。オリバー・ストーンだって今なおキワモノだ。いたずらにスキャンダルを煽るだけだという批判も結構。スキャンダルこそ一映画の特権である。少なくとも愚にもつかぬオバサンタレントの私的なケンカを報道して視聴率を荒稼ぎしているワイドショーより意義がある。決審の出ていない刑事被告人を裁いていいものかという議論もあるだろう。議論さえない世の中の方こそ病んでいるのだ。そうした議論を提供する意味においても、平成日本の抱える病根を鋭くえぐる本作の公開は必要不可欠になってくるはずだ。石井監督は宗教団体との討論も辞さない。マスコミの批判も受けて立つ。逃げも隠れもしないと明言している。

ストーリー

人生に思い悩む少女リカは、公園で出会った老婆によって、地獄へ連れていかれる。そのでリカが見たものは、現世で大罪を犯した亡者たちが閻魔大王の裁きによって、鬼たちに地獄の責めを受ける阿鼻叫喚の修羅場であった。リカは地獄の使者の導きによって、亡者たちが現世で犯した悪辣非道な事件を再体験していく。連続幼女誘拐殺害事件、某宗教団体の一連の事件、毒入りカレー事件…。

スタッフ

監督・脚本・プロデューサー: 石井輝男
製作総指揮: 小林悟
美術監督: 原口智生
撮影: 柳田友貴
照明: 野口素畔
録晋: 谷口シマ
美術: 港博之
音楽: 竹村次郎
編集: 井上和夫
製作担当: 徳山嘉拓
演技事務: 大塚仁博
記録: 田口艮子
特殊メイク: 宗理起也
キャラクター造型: 伊藤成昭、山岡英則
特殊造型: 栄福哲史、山田陽
メイク: AKO
衣裳: 小河原歩、西村英雄

キャスト

リカ: 佐藤美樹
間魔大王(老婆): 前田通子
魔子: 斉藤のぞみ
海王: 平松豊
翁鬼: 鴫門洋二
嫗鬼: 大地輪子
赤鬼: 高崎隆二
青鬼: 薩摩剣八郎
宮島ツトム: 平山久能
夢子: 小野裕美
教祖: 和田洋一
村西: 戌亥照雄
相谷: 田崎敏路
田沢宮子: 里見瑶子
石川寿子: 新恵みどり
元子: 守屋端香
明子: 藤田むつみ
折沢: 吉家明仁
須田: 北村有起哉
館弁護士: 幸野賀一
里美: 吉田チホ
江戸川草子: 西谷有可
成田清一: 浅見比呂志
水野とみ子: 三輪禮子
検察官: 若杉英二
裁判長: 桂千穂
満寿子: 川上さゆり
明日死能: 丹波哲郎

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