原題:GLORIA

カサヴェテス&ジーナ、最強のコンビによる華麗なる痛快アクションの傑作 リバイバル上映

☆1980年ベネチア国際映画祭金獅子賞受賞、主演女優賞受賞作品

1980年アメリカ映画/コロンビアピクチャーズ製作/121分 カラー/スタンダード/ギャガ・コミュニケーションズ配給

2005年01月26日よりDVDリリース 2003年10月22日よりDVD発売開始 1999年4月24日よりシネセゾン渋谷にてレイトロードショー

公開初日 1999/04/24

配給会社名 0025

解説

カサヴェテス&ジーナ、最強のコンビによる華麗なる痛快アクションの傑作
現代アメリカ最大の映画作家ジョン・カサヴェテスへの称賛の声は、死後10年を経た今もとどまることを知らない。『アメリカの影』『フェイシズ』『こわれゆく女』そして『ラヴ・ストリームス』……。愛と孤独を描いたその作風は、人間の内面に対する深い洞察から得られたものであり、ゴダール、ジャームッシュ、ヴェンダースらから絶大なオマージュを捧げられている。
カサヴェテス伝説を彩る最も重要な人物がジーナ・ローランズだ。1954年カサヴェテスが25歳の時に結婚して以来生涯の伴侶であり、また代表作の数々に主演、息子ニックの監督でジョンの遺作シナリオを映画化した『シーズ・ソー・ラヴリー』(97)でも出演したのは記憶に新しいところ。カサヴェテス&ジーナ、コンビ唯一の痛快で華麗なアクション映画として結実した傑作『グロリア』が18年振りにリバイバルされることになった。1980年、全くのインディペンデントとして自身のプロダクションで一貫して映画を製作・配給していたカサヴェテスが、『愛の奇跡』(63)以来17年振りにハリウッド・メジャーの資本で撮ることを決意、他の誰にも真似の出来ないカサヴェテス・タッチによるエンターテインメントが生まれた。
タフで心優しいグロリア まったく新しいヒロインの登場を予告した
ニューヨーク、サウスブロンクス。ある古びたアパートでプエルトリコ人一家が惨殺された。一家のただ一人の生き残りである6歳の息子フィルは、同じアパートに住みグロリア・スウェンソンと名乗る謎の女に預けられる。フィルは組織の資金の流れが書かれた青いノートを持っていた。母と息子の年齢ながら、子供嫌いのグロリアと、自分をひとかどの男と思っているフィル。グロリアとフィルとの組織の目を逃れての逃避行が始まる。やがて奇妙なカップルの間には、親子とも友人とも恋人ともつかない深い絆が生まれる。かつて組織の一員だったグロリアは、昔の男や友人を敵に回して銃を片手に勇敢に立ち向かっていく。小さな子供を傍らに置いて軽快に銃をぶっ放すグロリアの姿は、全く新しい痛快なタフ・ヒロイン像。その後の映画やテレビに多大なる影響を与えた。折しも99年春、シドニー・ルメット監督、シャロン・ストーン主演でリメイク版『グロリア』が公開される。これにはジーナもカメオ出演、新たな話題を呼ぶことになるだろう。カサヴェテスが拠点としていたニューヨークでオール・ロケーション。ブロンクスからハーレム、アッパー・イーストサイドへと独特の肌触りで捉えた街の風景は、2人の主人公と同格のキャラクターを与えられている。400人の候補者から選ばれたジョン・アダムスは当時7歳の少年。フィルの父は『天国から来たチャンピオン』でウォーレン・ベイティと共同監督したバック・ヘンリー、母はヒスパニック系女優の成功の先駆けと言われる『ミラグロ/奇跡の地』のジュリー・カーメン。
製作はプロデューサー、美術、そして宣伝美術を手がけカサヴェテス作品を支え続け、「ルック」「ライフ」などの写真家としても著名なサム・ショウで、本作ではタイトル・デザインも担当している。撮影監督はマーティン・スコセッシ監督『キング・コメディ』『フレッチ/殺人方程式』のフレッド・シューラー、音楽は『ロッキー』シリーズ、『ライトスタッフ』のビル・コンティ。ジーナがエマニエル・ウンガロのデザインによるアンティック・ファッション(グラン・クチュリエ)に身を包んで登場するのも見どころ。

ストーリー

ニューヨーク、サウス・ブロンクスのあるアパート。表向きは紳士服店に勤めながら、ひそかにある組織の会計係をしていたジャック・ドーン(バック・ヘンリー)が慌てふためいていた。組織の金を着服し、しかもFBIに資金のありかを洩らしてしまったのだ。
同じフロアに住むグロリア(ジーナ・ローランズ)は、大女優グロリア・スワンソンをもじってグロリア・スウェンソンと名乗る正体不明の女。グロリアはたまたまコーヒーを借りにジャックの部屋を訪ねるが、親友であるジャックの妻ジュリ(ジュリー・カーメン)から子どもたちを預かってくれと懇願される。「わたしは子どもが嫌い。特にあんたの子はね」いったんは断るが、嫌がったほかの子どもはともかく6歳の息子フィル(ジョン・アダムス)を渋々引き受けた。フィルは父から青い表紙のノートを大事そうに渡される。それには組織の資金の流れが書かれているのだ。
グロリアはフィルを連れて自分の部屋に戻り、フィルが父からの電話を置いた直後、ジャックの部屋で大爆発が起こる。一瞬の間にフィルは孤児になってしまった。「みんな夢なのよ。よくあるでしょ、夢の中で殺されたりするの。覚めたら元通りってね」グロリアはフィルに言い聞かせる。フィルはグロリアのことを「ブタ!」と憎々しげに叫んだ。
 アパートを脱出したグロリアはフィルを連れて、リバーサイド・ドライブのグロリアの姉の部屋に身を隠した。「電話に出ないこと。あとはじっとしていなさい」とグロリアに言われるが、グロリアが風呂に入っている隙にフィルは表に出る。自分の顔写真が大きく出た新聞を見つけると、一部を盗んで家に引き返す。テレビでは、ドーン一家の惨殺はマフィアの犯行で、フィルはグロリアに誘拐されたと報じている。組織の手がアパートにも及び、部屋の前に戻ってきたフィルの手を引いて、表でグロリアはタクシーを拾おうとする。だが、タクシーはなく、周りを走り回るうちグロリアは赤の他人の子を連れていくのがばからしくなってきた。かつてグロリアは組織に属していた。犯人は昔の仲間だ。このままだと彼女の立場も危うくなる。その時、組織の奴が車からグロリアを呼び止めた。
「子どもとノートを渡せ」
「人前で子どもを撃ち殺す気なの?」
グロリアはやにわにバッグから38口径のクローム銃を出すと、車を撃ち、横転させた。これでグロリアの反抗は決定的になった。グロリアにはこんな小さな子どもを追い回す組織のやり方が許せなかった。
 こうしてグロリアとフィル、奇妙なカップルの逃避行が始まった。まず、貸金庫から金をおろして行動開始。ホテルに泊まろうとするが断られて、グロリアの友人のつてのボロ宿に泊まった。
「ピッツバーグへ行こう。その前に墓地に行かなくちゃ」
墓地で、グロリアはフィルに、どれでもいいから墓石を一つ選んで家族と話すように言う。
「大丈夫。お墓は違っても魂は同じところへ行くの。ちゃんと届くよ」
グロリアの言葉を理解したフィルは、墓に向かって家族に語りかけた。
 空港にも組織の者どもが張っていた。グロリアとフィルは必死で逃げた。だが、翌朝グロリアは、フィルを決定的に傷つける言葉を言ってしまう。
空港にも組織の者どもが張っていた。グロリアとフィルは必死で逃げた。だが、翌朝グロリアは、フィルを決定的に傷つける言葉を言ってしまう。
「あそこのバーでわたしは一杯やるわ。あとからそこに来てもいいし、逃げてもいい。勝手にしていい」冷たい言葉を浴びてフィルが姿を消したとき、グロリアは慌てる。タクシーに乗ってタイムズ・スクエア界隈を流し、フィルの姿を求めた。そして、フィルが組織の末端の男たちの網にかかったのを見るや、銃をふりかざしてスラムに乗り込んでいく。グロリアは容赦なく敵の一人を殺し、フィルを救出、組織の者どもは女子どもも同じに部屋に閉じこめて、2人は逃げる。2人組の男たちが車で追ってくる。グロリアたちは素早くタクシーを降りて、地下鉄に潜り込む。電車内で乱闘になるが、グロリアはチンピラに銃をかざし、ようやく逃げのびる。だが、ピッツバーグへ行くために、その後向かった列車の駅では組織の目に見張られていた。ニューヨークを抜け出すことはとてもできそうにない。
 高級ホテルの部屋を取り、グロリアはフィルに語りかけた。
「わたしはあんたの母親になるよ」
「いいよ。あなたはぼくの母親で父親、そして恋人だよ」
 翌朝、グロリアは組織のボス、タンジーニ(バジリオ・フランチーナ)に電話する。グロリアはかつてタンジーニの愛人だったのだ。グロリアは言う。
「3時間半待ってわたしが戻らなかったら、ホテルを出てピッツバーグへお行き。そこで待ってるから」「愛してるよグロリア。死ぬほど好きだ」
 グロリアはタンジーニのマンションに単身乗り込んでいく。グロリアは、タンジーニの目の前にフィルのノートを置いた。条件は少年の命を保障することだけだ。困惑の表情のタンジーニを尻目に、グロリアは出口に向かい、前に立ちはだかる子分を容赦なく撃ち倒す。グロリアが乗ったエレベーターの天井めがけ、銃弾の嵐が襲った。
 その頃、ホテルを出たフィルは、列車に乗ってピッツバーグにやって来た。グロリアの死を予感しながら、着いたのはカーソン記念墓地だ。一つの墓石を選んでグロリアに語りかけるフィル。
 振り返ると喪服を着た白髪の老婆が立っている。フィルには、それがグロリアだとすぐにわかった!

スタッフ

監督・脚本:ジョン・カサヴェテス
製作:サム・ショウ
撮影監督:フレッド・シュラー
編集:ジョージ・C・ヴィラセノア
音楽:ビル・コンティ
美術:レネ・ドルレアック
プロダクション・マネージャー/アソシエイト・プロデューサー:スティーヴ・ケステン
衣裳デザイン:ペギー・ファーレル
ローランズの衣裳:エマニエル・ウンガロ
絵画:ロマーレ・ビアデン
タイトル・デザイン:サム・ショウ

キャスト

グロリア・スウェンソン (ジーナ・ローランズ)
ジャック・ドーン (バック・ヘンリー)
ジェリ・ドーン (ジュリー・カーメン)
フィル・ドーン (ジョン・アダムズ)
ジョーン・ドーン (ジェシカ・カスティロ)
トニー・タンジーニ (パジリオ・フランチーナ)

LINK

□公式サイト
□IMDb
□この作品のインタビューを見る
□この作品に関する情報をもっと探す