原題:FRENCH Cancan JeanRenoir

限りなく美しいスクリーンに、ギャバンが、アルヌールが、今鮮やかに蘇ります。 甘く切ないムーラン・ルージュ誕生の物語。忘れてはならない20世紀の名作。 ジャン・ルノワール監督没後20年企画としてニュープリント。

1954年フランス・イタリア合作作品/104分/スタンダード/テクニカラー 仏公開1955年4月/フランコ=ロンドン・フィルム+ジョリーフィルム 日本語字幕:寺尾次郎/配給:サジ・フィルム

2002年08月29日よりDVD発売開始 1999年6月5日より、有楽町シネ・ラ・セットにてモーニング&レイトロ一ドショー  大阪・シネマアルゴ梅田、福岡・シネリーブル博多駅、名古屋・名古屋シネマテーク  札幌・シアター・キノ、京都・みなみ会館他にて順次全国公開

サブ題名 復元完全版

公開初日 1999/06/05

配給会社名 0089

公開日メモ 限りなく美しいスクリーンに、ギャバンが、アルヌールが、今鮮やかに蘇ります。甘く切ないムーラン・ルージュ誕生の物語。忘れてはならない20世紀の名作。

解説

『フレンチ・カンカン』は、生涯に37本の作品を残したジャン・ルノワール監督の第32作で、第2次世界大戦の勃発により、アメリカに居を移していたルノワールが、戦後はじめてフランスに帰還して撮った記念すべき作品です。それは39年の『ゲームの規則』(39)以来、15年ぶりの故国での仕事となりました。ルノワールはこの第2次フランス時代の幕開けを飾る作品を撮るにあたって、自分の生家のあるモンマルトルを背景に、カンカン踊りを呼び物にする「ムーラン。ルージュ」誕生秘話を取り上げました。
そして戦前『獣人』『大いなる幻影』などでコンビを組んだ大スター、ジャン・ギャバンに「ムーラン・ルージュ」を立ち上げようとする興行主ダングラール(モデルは「ムーラン・ルージュ」創設者だったジードレル)演じさせます。ギャバンに見いだされる踊り子ニニに、当時人気絶好調だったフランソワーズ・アルヌールを抜擢、その母親に戦前のルノワール作品『ボヴァリー夫人』のタイトル・ロールだったヴァランティーヌ・テシエ、ギャバンの愛人役にメキシコのスター、マリア・フェリックスを起用、この「コメディ・ミュージカル」と銘打たれた作品に彩りを加えています。
『フレンチ・カンカン』はインドで撮影された『河』(50)、イタリアで撮影された『黄金の馬車』(52)に続くルノワールの色彩映画第3弾となりました。そのテクニカラーによる豪華絢爛たる色彩のスペクタクルは、とりわけラストのカンカン踊りのシークエンスで、アルヌールの衣裳のビンクや白色を中心に乱舞し、爆発することになります。
ここでルノワールは、ジャン・ギャバンを通じて、自分の映画=見世物に対する心情告白をしているかのようです。それはギャバンの浮気を知ったアルヌールがショウへの出演を断る場面での、ギャバンがアルヌールに言い放つ「芸人はどんな場面でも客を楽しませねばならない」という台詞に現れています。そうしたルノワールの姿勢が『フレンチ・カンカン』の全篇に漲っているエネルギーをもたらしているのではないでしょうか。
ルノワールは自伝の中で、「『黄金の馬車』『恋多き女』(56)それに『フレンチ・カンカン』に登場する人物たちは、一般に「ありそうもない」人物と呼ばれて然るべき登場人物である。だが「ありそうもない」が、にも拘らず真実だという場合もあり得るのであり、むしろ真実だという場合もあり得るのであり、むしろ真実というものは「ありそうもない」方が大部分なのだ」(西本晃二訳)と述べています。
この言葉にも見合うように、『フレンチ・カンカン』では全篇、撮影所のセットに、1888年のモンマルトルが再現されています。これはロケーションによる生々しい現実感を映画に導入した戦前のルノワールの姿勢とは大きく異なりますが、アメリカ時代を経て、一段と自己の芸術の大きさを増した後の人工性のなかで人間の内的真実を求めようとした後期のルノワールの単純にして明快な境地を示しています。

ストーリー

1888年。ダングラールは“パラヴァン・シノワ”座を経営している。店のスターは“ラ・ペル・アベス”ことローラ。ある夜、ダングラールはモンマルトルの酒場“白い女王”で踊るニニの新鮮さに驚かされ、昔はやったカンカン踊りを復活させようと考えた。ダングラールが買い取った“白い女王”は“ムーラン・ルージュ”と改名。棟上げ式の日、ニニに嫉妬したローラが喧曄をしかけ、しかもダングラールはニニの恋人ポロに穴に落とされ足を折った。退院した日、ローラにそそのかされた出資者が彼への援助を中止。だがこの日、ダングラールとニニは初めて結ばれた。ローラは、ニニに想いを寄せていたアレクサンドル王子の前でニニがダングラールの愛人であることを白状させた。“ムーラン・ルージュ”開店の日、ニニはダングラールの心が新しく発見した歌手に移ったことを知って楽屋にこもり、出演を拒否した。しかしダングラールの厳しい言葉にニニはカンカン踊りに生きる自分を見いだし、舞台に躍り出た。

スタッフ

監督・脚本・台詞: ジャン・ルノワール
原案: アンドレ=ポール・アントワーヌ
音楽: ジョルジュ・ヴァン・パリス
美術: マックス・ドゥーイ
撮影: ミシェル・ケルベール
製作: ルイ・ウィップ
主題歌: 「モンパルナスの丘」(唄:コラ・ヴォケール)

キャスト

アンリ・ダングラール: ジャン・ギャバン
ニニ: フランソワーズ・アルヌール
ローラ“ラ・ベル・アベス”: マリア・フェリックス
ヴァルテル男爵: ジャン・ロジェ・コシモン
アレクサンドル王子: ジャンニ・エスポジト

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