原題:DOG-FOOD

あなたの選んだ道はどこかへ続いていますか? ひとつの別れと再生を描き、手の温もりを伝える映画

☆1999年ベルリン国際映画際フォーラム部門出品作品

1999年/日本/デジタルビデオ→βカム/47分/ 配給:スローラーナー

2000年8月19日よりビデオレンタル開始 1999年4月24日(土)より渋谷・ユーロスペースにてモーニング&レイトロードショウ

公開初日 1999/04/24

配給会社名 0048

解説

一組の夫婦がいる。夫に愛する女がいることが分かったとき、妻は家を出ていった。その後に残されたのは、彼と犬。べトナムヘの赴任を前にして、彼は自分の思いや感情を持て余し、目の前で生きている犬とどう対したらいいのか分からない。砂のように流れる時間。無為な日々の中で、彼は突然自分の犬が、自分からトラックの中に飛び込んで死んだという知らせを受けた…。
『DOG-FOOD』は、これまで俳優として風間志織監督『冬の河童』(ロッテルダム映画祭正式出品作)、岩井俊二監督『四月物語』に主演し、テレビドラマに、舞台にいかんなくその才能を発揮していた田辺誠一の初監督中編作品です。全編デジタルカメラで撮影したこの作品は、一人の男の繊細な心と感情の揺れを寄リ添うように描き出していきます。人と関われなかった自分。他者の存在を自覚すること。淡々とした一週間の日常から田辺監督は真摯な問いを発しています。スタッフは、篠田昇(『スワロウテイル』)の助手としてこれまでキャリアを積んできた福本淳が撮影を担当。これまでトップモデルとして注目を集めてきた椎名英姫が、清冽な魅力で田邊自身が演じる男の妻を演じています。
なお、『DOG-FOOD』は3部作として製作が予定されており、第2部は、すでにポルトガルで撮影が終了、完成が待たれています。

ストーリー

夏祭りの記憶。にぎわう人々。一組の夫婦が、楽しげに歩いている。打ち上げられる花火。彼らは、露店で水風船のヨーヨーを吊り上げる。それは、過去の幸せの光景である。それから、しばらくして夫に愛する女(かざり)がいることが分かったとき、妻(砂城子)は家を出ていった。その後に残されたのは、彼と犬のパオパオ。ベトナムヘの赴任を前にして、彼は自分の思いや感情を持て余し、彼女が残していった犬とどう対したらいいのか分からない。砂のように流れる時間。イラン人の友人が毎日のように風呂に入りにくる奇妙な日々。そして、彼の感情の深く浸食している喪失感。
ある日、散歩に連れ出そうとすると、パオパオはグイグイと彼を見知らぬ道へと引っ張っていった。路地を抜け、たどり着いたのはあるビルの屋上。おそらく、そこは砂城子がよくパオパオをつれてきていたのだろう。男は、一瞬屋上に佇み犬の背中をなぜる彼女の気配を感じるのだった。…答えが出せない…。
失っていく恐さの中で、現実だけが一人歩きをしていく。無為な時間の中で、彼は突然自分の犬が、自分からトラックの中に飛び込んで死んだという知らせを受ける。海外には犬は連れていけないと言っていた電話での会話を、パオパオは聞いていたのだろうか?。手にはパオパオの首輪だけが残された。それから、彼は恋人とも会わずイラン人の友人さえ家に入れなかった。混乱の中で、浴衣姿の妻を街の中で幻視するのだ。自分はどこに向かおうとしているのか。砂城子は、忘れ物をとりに来て、料理を作ると「過去だって、自分の心次第で変えれると思う」という言葉を残して帰っていった。一人の家。彼は気配を感じる。台所に立っていた砂城子の体温を、床に蹲っていたパオパオの気配。悔やみきれない現実だけが残っていた。男は、犬が残したドッグ・フードを手にとり、それを食べる。何かを感じたいと思い、忘れないために…。
しかし、失われた時間を取り戻すことは出来ない。冷蔵庫の中に、あの祭りの日に二人で吊り上げた水風船がしまわれているのを見たとき、ある決意が彼を満たすのだった。
引越しの日がやってくる。イラン人の友人との別れ。犬小屋の中にパオパオがどこからか集めてきた山ほどの靴。男は、水風船を家の門に残して歩き出した。その風船を男の恋人、かざりが手に取る。振り返らず、歩いていく男の後ろ姿。ヨーヨーを見つめるかざり。砂城子の存在の大きさがそこに凝縮されている。男の背中。かざりの目が、一瞬家を見上げた…。

スタッフ

監督+脚本: 田辺誠一
撮影監督: 福本淳
撮影助手: 中村夏葉、馬場元
演出補: 行定勲
音楽: 本位田牧
エンディング・テーマ: ジェーン・バーキン
編集: 田辺誠一、今井剛
制作担当: 森満康巳
プロデューサー:鳥澤晋、田辺誠一

キャスト

夫: 田辺誠一
妻(砂城子): 椎名英姫
恋人(かざり): 友田誉子

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