原題:AME AGARU

黒澤明の遺稿脚本、映画化。

1999年/製作:『雨あがる』製作委員会(スタッフ東京、IMAGICA、博報堂 住友商事、日本カルミック、角川書店、アスミツク・エースェンタテインメント) 制作協力:黒澤プロダクション/配給:東宝、アスミック・エースエンタテインメント

2003年06月06日よりDVD発売開始(Hi-Bit EDITION) 2002年04月26日よりDVDリリース 2000年9月6日よりDVD発売 2000年6月23日よりビデオレンタル発売 2000年1月22日より公開

公開初日 2000/01/22

配給会社名 0007/0001

公開日メモ 1998年9月6日、世界の巨匠黒澤明の死は世界中のマスコミが報道した。ヴェネチア国際映画祭では急邊『羅生門』を追伸上映するなど、その死は多くの映画ファンに惜しまれた。その黒澤明が最後まで映面化を目指した企画が『雨あがる』である。

解説


1998年9月6日、世界の巨匠黒澤明の死は世界中のマスコミが報道した。ヴェネチア国際映画祭では急邊『羅生門』を追伸上映するなど、その死は多くの映画ファンに惜しまれた。その黒澤明が最後まで映面化を目指した企画が『雨あがる』である。山本周五郎原作を黒澤監督が映面化した作品に『椿三十郎』『赤ひげ』『どですかでん』があるが、生前に映面化に向け「なんの花か薫る」「つゆのひぬま」を脚色した『海は見ていた』、そして最後に短編小説を脚色したのが『雨あがる』であった。この脚本を28年間助監督として師事した小泉堯史が完成させ、初監督に挑戦。黒澤組スタッフとゆかりのキャストが結集して、監督デビュー作を支えている。本作は1999年ヴェネチア国際映画祭で1周忌を追悼し特別上映された。会場を埋めつくした観客は上映が終了するとともに総立ちになり大喝采を送り本作を讃えた。黒澤明白身の覚書には次のことが記されている。戦国時代が終わり、その反動で豪奢な元禄時代があり、その奢侈に飽きて質実尚武を尊ぶ享保の時代が舞台である。夫婦の話である。そして、見終わって晴れ晴れとした気持ちになること。
妻は夫に対して、仕官できなくても良い、人を押しのけず真実な人々に希望を与える夫が立派だと考えている。本作を貫いているのは、山本周五郎が書き、黒澤明が脚色し、”黒澤組”の結集の下に小泉堯史が表現した、こうした”優しさ”だろう。本作は見事に小泉堯史監督作として完成した。
時は絢燗の元禄を経た質実の享保時代。武芸の達人だが不器用で仕官がかなわない武士、三沢伊兵衛とその妻たよ。折からの豪雨が旅の途にある夫婦を宿場町に足止めさせる。二人が泊まる安宿には雨が上がるのを鬱々と待つ人々が大勢いた。そんな彼らの心をなごませようと伊兵衛は禁じられている賭試合で金を都合し、酒や食べ物を振る舞う。人々に笑顔が戻った時、雨もようやく上がった。やっと外に出られた伊兵衛は偶然若侍同士の果たし合いに遭遇、懸命に彼らを止めるのだった。その一部始終をこの藩の城主である永井和泉守重明が見ており、伊兵衛に藩の剣術指南番の語が起こる。
主役の三沢伊兵衛には『乱』『夢』『まあだだよ』に主演した寺尾聰が扮し、強い剣豪ながら仕官出来ない心根の優しい浪人を好演している。妻のたよには『乱』の宮崎美子が、夫を優しく支える武家の妻を爽やかに演じている。城主の永井和泉守重明には28年ぶりに映面出演となる三船史郎。そのほか、黒澤映面ゆかりの仲代達矢、松村達雄、原田美枝子、井川比佐志、吉岡秀隆などが脇を固めており、小姓役で黒澤明の愛孫である加藤隆之が映画デビューするのも話題である。スタッフは黒澤明が長年信頼してきた”黒澤組”が結集。撮影に上田正治、撮影協力に斎藤孝雄、美術に村木与四郎、照明に佐野武治、録音に紅谷愃一、衣裳に黒澤和子、音楽に佐藤勝、監督補に野上照代とまさに一騎当千の盤石な構えで、堅固な技が披露されている。製作は『乱』を手掛けた原正人と黒澤久雄が担当。黒澤明ゆかりのスタッフ、キャストの熱い想いが黒澤明の果たせなかった企画を今、現実にする。

ストーリー



連日の豪雨で川が氾濫している。川止めで渡し人足も商売が出来ない。その川を一人の浪人が見て、嘆息している。侍の名は三沢伊兵衛。妻のおたよと川の近くの安宿に泊まっている。安宿には夜鷹のおきんや説教節の爺など雨に降りこめられた人々がたくさんいた。伊兵衛は長雨で荒んだ人たちを喜ばせようと、禁じられている賭け試合で金を稼ぎ、酒や食べものを振る舞った。
翌日、やっと雨があがり、宿に泊まっている人々は大喜びしている。伊兵衛は鈍った身体をほぐそうと森に向かうが、若侍達の果たし合いに遭遇してしまう。慌てて仲裁した伊兵衛に、大きな声が掛かった。その声の主は藩の城主である永井和泉守重明だった。和泉守は伊兵衛に感謝の意を伝えると颯爽と馬で去っていった。和泉守の命を受けた近習頭の榊原権之丞の出迎えにより伊兵衛は城へ出向く。藩の剣術指南番を探している和泉守は伊兵衛に身の止を尋ねる。伊兵衛は江戸での辻月丹の道場における修業の次第を話す。伊兵衛を気に入った和泉守は、指南番に決め家老の石山喜兵衛たちに引きあわすが、御前試合で腕前を披露してから正式決定ということになってしまう。伊兵衛は帰るとすぐ、たよに指南番に決まったようなものだと、一部始終を話して聞かせるのだった。
御前試合当日、城中の使い手を相手に試合いは始まるが、伊兵衛はあっという間に二人を倒してしまう。居合わせた誰も名乗りを上げず、和泉守は自ら槍を手に相対するが、伊兵衛は和泉守を泉水にたたき込んでしまう。
川の水はすでに引き絶好の旅日和となり、宿にいた人々もほとんどが出立していた。たよも準備を始めようとするが、伊兵衛は踏ん切りが着かない。そんな時、石山幸兵衛と榊原権之丞が結果を伝えにやって来た。
石山の□上は、伊兵衛が町道場で賄け試合をしたことにより指南番の仕官の話は無くなったとのこと。それを聞いたたよは賄け試合は悪いが、何をしたかではなく何のためにしたかが重要だと、石山らに言うのだった。
伊兵衛とたよは出立した。
和泉守は石山と榊原から一部始終を聞き、伊兵衛を呼び戻そうと馬で追いかける。その頃、伊兵衛とたよは海を臨む美しい峠の道を歩いていた。

スタッフ

プロデューサー: 黒澤久雄、原正人
監督: 小泉堯史
脚本: 黒澤明
原作: 山本周五郎(角川書店刊)
撮影: 上田正治
撮影協力: 斎藤孝雄
美術: 村木与四郎
照明: 佐野武治
録音: 紅谷愃一
衣裳: 黒澤和子
監督補: 野上照代
助監督: 鈴木康敬
アソシエート・プロデューサー: 桜井勉、吉田佳代

キャスト

三沢伊兵衛: 寺尾聰
三沢たよ: 官崎美子
永丼和泉守重明: 三船史郎
奥方: 檀ふみ
石山喜兵衛(家老): 丼川比佐志
榊原権之丞(近習頭): 吉岡秀隆
内藤隼人(小姓): 加藤隆之
おきん(夜鷹): 原田美枝子
説教節の爺: 松村達雄
辻月丹(剣豪): 仲代達矢

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