ボルケーノ

ビバリーヒルズに押し寄せる溶岩流がロサンゼルスをのみ込み、炎で包む
　「タワーリング・インフェルノ」「ポセイドン・アドベンチャー」「大地震」…。過去、数々のパニック映画が人々を緊張と興奮のるつぼに陥れ、映画史に新たなジャンルを確立した。しかし、そのスケールの大きさ、驚愕のSFXに裏打ちされた破壊の凄まじさで、この映画にかなうものはない。
　“ウエストコーストがトーストになった！”
　センセーショナルなシチュエーションで全米を震撼させ、“パニック映画” ブームのピークに立った話題の映画が、いよいよその姿を現わす。 　ロサンゼルス。世界最大の映画の都。まぶしい太陽が燦々とふりそそぐ、華やかな大都会。しかし、その輝かしい“天使の町”が、地震の多発地帯であることはだれもが知っている。そして、想像を絶する災害の予兆は、小さな地震から始まった。
　地底の奥深くからマントル層の割れ目を通って、文明社会のすぐ下にまで上昇してきたマグマ。驚異的な大自然の巨大エネルギーは、ロサンゼルスの観光名所ラ・ブレアのタール池から一気に噴出する。
　沸騰する公園の池。グツグツと煮えたぎるタール…。じわじわと、そして確実に、その時はやってきた。凄まじい地鳴りとともに噴煙が立ちのぼり、火山弾が噴き出し、大爆発を起こす。ドロドロと溢れ出る溶岩、雪のように空を舞う灰色の火山灰。灼熱の溶岩流は渋滞するウィルシャー通りを川のように走り、地下鉄のトンネルに流れ込んで猛スピードで駆け抜ける。美しい椰子の並木をなぎ倒し、美術館を炎に包み、住宅街、ビバリーヒルズへと襲いかかる。逃げ惑う人々。あらゆるものをのみ尽くす溶岩流。ロサンゼルスは絶体絶命。溶岩の下に消滅してしまうのか!?　地獄のような混乱と恐怖の中で、人類の勇気と英知は自然の猛威に勝てるのか!?
　この史上最悪の都市災害に立ち向かうのは、阪神大震災後、日本でも危機管理の手本として有名になったロサンゼルス郡危機管理局（E．O．C．）。沈着冷静、臨機応変に、抜群のアイデアで対処するEOC局長マイク・ロークに扮するのは、「逃亡者」(93)でハリソン・フォードを追う連邦保安官補を演じてみごとアカデミー賞最優秀助演男優賞に輝いたトミー・リー・ジョーンズ。ハーバード大学卒の知性を秘めた渋い男の魅力に女性ファンも多い。娘の安否を気づかいながら、ロスを救うべく次々と危機を回避していくロークの存在感は圧倒的だ。 　最初はだれも信じなかった火山噴火という事実を示唆し、現状を的確に把握してロークをサポートする女性地震学者エミー・バーンズには「陪審員」(96) でデミ・ムーアの親友役を演じたアン・ヘイチ。彼女は「フェイク」(97)でジョニー・デップ、アル・パチーノと共演。この後もロバート・デ・ニーロ、ダスティン・ホフマン共演の“Wagthe Dog”やハリソン・フォード共演の“6Days，7Nights ”が控えている注目の女優だ。
　ロークの13歳の愛娘ケリーには「めぐり逢えたら」(93)の名子役ギャビー・ホフマン。「青いドレスの女」(95)のドン・チードル、「ファーゴ」(96)のジョン・キャロル・リンチ、「ディスクロージャー」(94)のジャクリーン・キムらが個性的な演技で脇を固めている。
　監督は「ボディガード」(92)でホイットニー・ヒューストンとケビン・コスナーを輝かせ、記録的な大ヒットに導いた才人ミック・ジャクソン。今回は、スティーブ・マーティン主演のコメディ「L．A．ストーリー　恋が降る街」(91)のときとはまるで違う視点からロサンゼルスを描くことになった。
　製作総指揮は「デーヴ」(93)「フリー・ウィリー」(93)のローレン・シュラー・ドナー。製作はインディペンデントの大ヒット作「ジュース」(92)を手がけたニール・H・モリッツと「めぐり逢い」(94)のアンドリュー・Z・デイビス。ジェローム・アームストロングとビリー・レイが書いた脚本のアイデアは、ロサンゼルス地区での火山活動の危険性を示唆した雑誌『サイエンティフィック・アメリカン』の記事から生まれただけに、絵空事ではかたづけられないリアリティがみなぎっている。
　圧倒的リアルな映像は、オランダ出身で、アカデミー外国語映画賞を受賞した『追想のかなた』(87・V）や「ウェインズ・ワールド」(92)などを手がけているテオ・ヴァン・デ・サンド。プロダクション・デザイナーは「スピード」(94) のジャクソン・デゴビア。400メートル以上もあるウィルシャー通りの大セットが臨場感を盛り上げる。音楽は、アカデミー賞にノミネートされた「フォレスト・ガンプ　一期一会」(94)などの大御所アラン・シルベストリ。
　また、この映画のもう一人の主役とも言える溶岩を作り出した特殊視覚効果スーパーバイザーは「ナッティ・プロフェッサー　クランプ教授の場合」(96)のマット・ベック。火山学者リック・ハズレットがコンサルタントとして学術的なアドバイスをしている。
　2，000度もあるという溶岩の熱が伝わってくるようななまなましい溶岩流の動きに、思わず息をのみ、足がすくむ。