この映画「ベント −墜ちた饗宴−」のラヴ・シーンくらい痛ましく悲しく美しく 鮮烈なラヴ・シーンに接したことはなかった。 ●淀川長治氏(映画評論家)

1997年イギリス/カラー/ドルビーステレオ/ビスタサイズ/1時間56分

1999年3月17日よりビデオレンタル開始 97年10月4日、恵比寿ガーデンシネマにて公開!!

©HERALD

公開初日 1997/10/04

配給会社名 0058

解説

狂乱の時代を舞台にした感動のラヴ・ストーリー。

 1934年6月30日。ヒトラーが世界を震撼させる前夜、ベルリンは退廃に酔いしれていた。狂乱の時代を舞台にした「ベント−墜ちた饗宴−」は感動のラヴ・ストーリーである。
 ナチス・ドイツはユダヤ人、政治犯等、そして最下位の同性愛者を社会の害虫とみなし、強制収容所に収容した。主人公マックスは退廃のドイツに酔いしれるかのように男達との一夜を楽しんで生きていた男だったが、ナチスによって収容所に投獄され、そこで出会ったピンク・トライアングルの男、ホルスト(収容所の中で最下位に扱われた同性愛者達は囚人服にピンクの三角を付けさせられていた)と強い絆で結ばれていく。二人は顔を見ることも手を振れることも許されない収容所の中で、言葉だけで愛を交わす。「俺達はやった。こんな収容所の中でだ。殺されもせずに愛し合った。俺達は人間だ!」と叫ぶ。それはゲシュタポに知られず、殺されずに、まだ人間として生きているのだと実感する愛の行為だった。「ベント−墜ちた饗宴−」は、愛することさえ禁じられる憤りと、それでも愛を貫く人間の尊厳を描いた、たぐいまれなラヴ・ストーリーなのである。

伝説の戯曲『ベント』の初の映画化。

 1979年、ロンドンで上演され世界中に反響を巻き起こし、リチャード・ギア、マイケル・ヨークがブロードウェイで、そして日本でも青井陽治翻訳で、役所広司、高橋幸治の演技が絶賛され、“俳優なら一度は演じたい役”といわれつづけた戯曲『ベント』が遂に映画化された。本作の戯曲家、マーティン・シャーマンがファスビンダー、コスタ・ガブラスなどの名監督のアプローチを退け、シャーマン自ら指名した気鋭の舞台演出家、ショーン・マサイアスによって初の映画化となり、「モントリオールのジーザス」のローテル・ブリュトー、ロンドン初演舞台『ベント』でマックス、そして次の公演ではホルストを演じ、サーの称号を受けた『アマデウス』のサー・イアン・マッケラン。さらに特別出演にミック・ジャガーという一流キャストが揃い、斬新で研ぎ澄まされた本作を作り上げ、今年のカンヌ映画祭批評家週間に出品され全世界に話題を呼んだ。

「シンドラーのリスト」には描かれていない、もう一つの真実。
ナチス・ドイツが虐待したピンク・トライアングルの男達の歴史的告発。

 ヒトラーはそれまで腹心であった同性愛者で突撃隊の幕僚長、レーム等を惨殺した。ナチス・ドイツは同性愛行為はドイツ民族を破滅に導く堕落の兆候であるとして「堕落の根絶」を主張し、同性愛禁止法を適用した。同性を好むものはそれだけの理由で収容所に入れられ、大虐殺された。強制収容所で死亡した同性愛者は5万〜10万人(一説には25万人〜50万人とも伝わる)といわれる。彼らはユダヤ人、ジプシー達よりも下等に扱われ、ピンク・トライアングルをつけることを強制された。しかも、同性愛禁止法は戦後も残り、わずかに生き残った同性愛者達はその事実を告白するまでに長い時間を要した。ドイツ・ナチスによる最大量の犠牲者はもちろんユダヤ人であったが、本作は“忘れられた犠牲者”同性愛者達に対する迫害の歴史を告発したものである。
 本作は同性愛者へのナチス・ドイツの虐待の歴史的事実に基づき、脚色され、世界にピンク・トライアングルの存在を告発した作品である。脚本家マーティン・シャーマンはこの事実こそ自分が世界に訴えたかったことなのだと語っている。

※ピンク・トライアングル(ドイツ語ではローザ・ヴィンケル)について

 強制収容所にはユダヤ人だけでなくさまざまな「被収容者」が下記のような色分けをされたトライアングルを縫い付けた囚人服を着せられていた。

 黄:ユダヤ人
 黒:反社会分子
 赤:政治犯
 緑:一般常習犯
 紫:聖書研究所(ナチ式敬礼と兵役拒否をした“エホバの証人”を指す)
 青:亡命者(ドイツ人及び占領地で捕まったドイツ人亡命者)
 茶:ジプシー
 ピンク:同性愛者

○<ベント>舞台上演について

 1978年8月4日 コネティカットのユージン・オニール劇作家協会で朗読形式で初演。
 1979年5月3日 イギリスのロンドン ロイヤルコート劇場にて初演。

演出:
ロバート・チェットウィン
マックス役:
イアン・マッケラン
ホルスト役:
トム・ベル

 1979年12月2日 ブロードウェイ ニュー・アポロ劇場で8ヶ月上演

演出:
ロバート・アラン・アッカーマン
マックス役:
リチャード・ギア
ホルスト役:
デイヴィッド:デュークス
トニー賞作品賞、助演男優賞にノミネートされ、マックス役がマイケル・ヨークにひき継がれた。

ストーリー

スタッフ

監督:
ショーン・マサイアス
脚本:
マーティン・シャーマン
製作:
マイケル・ソリンジャー
ディキシー・リンダー
共同製作:
ショーン・マサイアス
マーティン・シャーマン
製作総指揮:
サラ・ラドクリフ
ヒサミ・クロイワ
プロダクション・デザイナー:
スティーブン・ブリムソン・ルイス
撮影監督:
ヨルゴス・アルバニティス AFC
編集:
イザベル・ロレント
音楽:
フィリップ・グラス
衣装:
スチュワート・ミーチャム

キャスト

ホルスト:
ローテル・ブリュトー
マックス:
クライブ・オーウェン
ルディ:
ブライアン・ウェバー
グレタ(ジョージ):
ミック・ジャガー
フレディ叔父:
イアン・マッケラン
ウルフ:
ニコライ・ワルドー

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