原題:Mal de pierres

2016年/フランス映画/フランス語/120分/シネスコ/デジタル5.1ch/

2017年10/7 新宿武蔵野館、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国ロードショー!

© (2016) Les Productions du Trésor - Studiocanal - France 3 Cinéma - Lunanime - Pauline's Angel - My Unity Productio

解説

 『死刑台のエレベーター』のフロランス、『アデルの恋の物語』のアデル.H、『ベティ・ブルー/愛と激情の日々』のベティ、『髪結いの亭主』のマチルド、そして『アデル、ブルーは熱い色』のアデル…フランス映画史に燦然と輝く、狂おしいまでの愛に魂を捧げた、美しくも勇気あるヒロイン像の系譜に、今、新たな一ページが加わった――それが本作『愛を綴る女』のガブリエルだ。
2006年に出版されたイタリア人作家、ミレーネ・アグスのベストセラー小説「祖母の手帖」(新潮社)の設定を、1950年代のフランス南部に移し替え、17年に及ぶひとりの女性の自由への希求と理想の愛のゆくえを、ストイックかつ官能的に見つめた注目の問題作である。昨年、第69回カンヌ国際映画祭コンペティション部門に出品され、「闘いと狂おしいまでの愛への讃歌」(ELLE)、「情熱的な欲望の美しい旋律」(Le FIGARO)と称賛を浴び、フランスのアカデミー賞であるセザール賞では作品賞、監督賞をはじめ、主要8部門でノミネートされた究極のラヴストーリーが今秋、ついに日本公開となる。
南仏プロヴァンス地方の小さな村で、若く美しいガブリエルは両親と妹と暮らしていた。最愛の男性との結婚を熱望しながらも、地元の教師との一方的な恋に破れたガブリエルは、両親の決めた正直者で情の深いスペイン人労働者ジョゼの妻となる。
「あなたを絶対愛さない」「俺も愛していない」。そう誓いあったにもかかわらず、日々、近づいては離れる官能的な夫婦の営み。そんなとき、ガブリエルの流産の原因が腎臓結石と診断され、彼女は夫の勧めでしぶしぶアルプスの山麓の療養所で温泉治療することになる。そこでガブリエルは、インドシナ戦争で負傷した「帰還兵」アンドレ・ソヴァージュと運命的な出逢いを果たす。それは彼女が綴る清冽な愛の物語の始まりとなるのだった――。

運命の男性を追い求め、熱烈な愛の手紙を綴る情熱的なヒロイン、ガブリエルを演じるのは、『エディット・ピアフ~愛の讃歌』で米アカデミー主演女優賞を受賞後、フランスのみならず『インセプション』『マリアンヌ』など国際的に活躍するマリオン・コティヤール。家族から“変人”と疎まれ、親の言いなりの結婚生活を続ける傍ら、衝動的な愛に身を委ねるガブリエルの自由奔放な欲望を、抑制を利かせた演技でリアルに銀幕に息づかせ、セザール賞主演女優賞候補となった。忍耐強い夫への葛藤、思いがけず出逢った帰還兵へのひたむきな情念、そして突然、希望を奪い取られた喪失感と心の痛みを、紙とペンで赤裸々に綴るガブリエルの神秘的かつ官能的な生きざまは、保守的だった1950年代という時代背景を超えて、社会の生きづらさに手を焼く現代の女性たちにとっても、本能のおもむくまま旧弊な価値観に風穴を開ける勇気あるヒロイン像として大いなる共感を呼ぶはずだ。
ガブリエルの“運命の男”、アンドレ・ソヴァージュを演じるのは、『サンローラン』『モン・ロワ 愛を巡るそれぞれの理由』で今やフランス映画界で絶大な人気を博すルイ・ガレル。エリート軍人一家の出身でありながらインドシナ戦争での負傷で心身ともに消耗した「帰還兵」を、繊細な感受性と儚い気品をみなぎらせて演じ切り、理想の愛を追い求めるガブリエルを一目で虜にするのに充分なその濃密なデカダンスは、観る者をも魅了する。

そして、ガブリエルと愛のない結婚をする夫ジョゼ役には、バルセロナ出身で、『ペインレス』『ローマ法王になる日まで』と近年、ヨーロッパ映画界で頭角を現わす実力派、アレックス・ブレンデミュール。フランコ独裁時代の元レジスタンスであり、決して心を開かないガブリエルを大人の包容力で静かに見守り続けるという難役を、ガレルとは対照的な生命力あふれる野性味で実直に体現。また後年、息子と築く緊密な父子関係も見逃せない。
監督は、女優として『愛と哀しみのボレロ』『ギャルソン!』などに出演した後、『お気に入りの息子』『ヴァンドーム広場』と骨太な人間ドラマに女性ならではの実感を注ぎ込み、高い評価を獲得しているニコール・ガルシア。「私が惹かれるのは、精神的にぎりぎりのところにいる人よ。私はそういう人々に最も自分を投影できる」と語るように、原作の「祖母の手帖」を、『愛を弾く女』『とまどい』でデリケートな女性心理に卓越した才能を発揮した脚本家ジャック・フィエスキとともに、世間の目を恐れず、理想の愛を紡ぐ一途なヒロイン映画として造形。原作を一読して、「このヒロイン役にはマリオンしかいない」と直感し、彼女のスケジュールが空くまで5年間待ち続けたガルシアの拘りと執念はラスト、フランス映画史に残る衝撃的なラヴストーリーとなって見事に結実した。
端正な映像美でガブリエルの“狂気の愛”をじっくりと見つめ、緑あふれるプロヴァンスの自然とラ・シオタの街に吹き込む地中海の風を、詩情豊かにとらえた撮影は、『PARIS』『ヒトラーへの285枚の葉書』の名匠クリストフ・ボーカルヌ。
また、ガブリエルとソヴァージュのかけがえのない想い出を彩り、やがてそれは彼女の息子へと受け継がれるチャイコフスキーの<四季>より“舟唄”が永遠の愛のモチーフとして劇的に引用されていることも忘れられない。
物語の舞台は、薄紫のラヴェンダーの花が色鮮やかに揺れるプロヴァンス地方から、いにしえの歴史が刻まれた風光明媚な大都会リヨンへ――そのとき、頑なだったひとりの女性が波乱に満ちた17年の歳月の果てに知る真実の愛、その懐深くも美しいヒューマニズムの崇高さは、私たちの記憶にいつまでも刻み込まれることだろう。

ストーリー

南仏の小さな村に暮らす若く美しいガブリエル。最愛の男性との結婚を熱望しながらも、地元の教師との一方的な恋に破れ、不本意ながら両親の決めた正直者で情の深いスペイン人労働者ジョゼの妻となる。「あなたを絶対愛さない」「俺も愛していない」。そう誓いあったにもかかわらず、日々、近づいては離れる官能的な夫婦の営み。そんなとき、流産の原因が腎臓結石と診断され、アルプスの山麓の療養所で温泉治療することになる。そこで、インドシナ戦争で負傷した「帰還兵」アンドレ・ソヴァージュと運命的な出逢いを果たす。それは彼女が綴る清冽な愛の物語の始まりとなるのだった――。

スタッフ

監督:ニコール・ガルシア
脚本・脚色:ニコール・ガルシア、ジャック・フィエスキ
製作総指揮:プロダクション・トレゾー
プロデューサー:アラン・アタル
撮影:クリストフ・ボーカルヌ
衣装:カトリーヌ・ルテリエ
編集:シモン・ジャケ
音楽:ダニエル・ペンバートン
美術:アルノー・ドゥ・モレロン
原作:「祖母の手帖」 (新潮クレスト・ブックス)

キャスト

ガブリエル:マリオン・コティヤール
アンドレ・ソヴァージュ:ルイ・ガレル
ジョゼ:アレックス・ブレンデミュール
アデル:ブリジット・ルアン
ジャニーヌ:ヴィクトワール・デュボワ
アゴスティーヌ:アロイーズ・ソヴァージュ
マルタン:ダニエル・パラ

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