2017年 製作国 日本 配給 スールキートス

2017年10月7日

(C)2012 角田光代/中央公論新社 (C)2017「月と雷」製作委員会

解説

この度、直木賞作家、角田光代の小説『月と雷』の映画化が決定し、2017年10月に、テアトル新宿ほか全国公開する運びとなりました。角田作品は世代を超えて女性の支持を得ており、これまで、『八日目の蝉』(11)、『紙の月』(14)などが映像化され、大ヒットを記録している。『月と雷』は2012年に出版された角田の長編小説。一つどころに定住しない根無し草のような女・直子とその息子の智(サトル)、そして、その母子と過去に一緒に住んだ男の娘・泰子(ヤスコ)の物語。
幼少の時に母が家出し、“普通”の家庭を知らぬまま大人になった泰子(ヤスコ)。仕事はスーパーのレジ打ちで、ほとんどは家と仕事場を往復する日々を過ごしている。刺激に満ちた生活を送っているわけではないが、婚約者も出来、亡くなった父が残してくれた持ち家で暮らし、生活の基盤はしっかりしている。そんなある日、父の愛人の息子・智(サトル)が突然泰子の前に現れたことによって、大きな喜びはないが小さな不幸もない平板な泰子の生活は立ちどころに変わっていく。
「親と子」、「家族」、「生活」の意味を根源から問いかける角田光代の真骨頂ともいえる作品だ。

主人公の泰子を演じるのは、初音映莉子。1999年に女優デビューし、その後ドラマや舞台で活躍。映画では、『ノルウェイの森』(10)、『ミツコ感覚』(11)などに出演し、2012年には『終戦のエンペラー』でハリウッドデビューも果たしている。本作で主人公・泰子を演じたことについて、初音は「私が演じた泰子は、大好きな父を亡くし、東京に出るわけでもなく、清算しきれない過去を持ちながら、人の人生にかかわることに積極的でない女性です。自分が持っていたもの、現場で感じたことを一番大切にし、心のアクセルとブレーキを小さく刻みながら、この役を作り上げました。」と話し、本作では自身と同年代の女性の繊細な心の機微を見事に表現しきっている。

そして、初音と共に主演を務めるのは、『軽蔑』(11)で第35回日本アカデミー賞新人俳優を、『横道世之介』(13)で第56回ブルーリボン賞主演男優賞を受賞し、現在放送されているNHK「ぺっぴんさん」では主人公の幼馴染を演じるなど、その突出した演技力と存在感で、多くの映画監督から愛される実力派俳優の高良健吾。本作で高良が演じる智は、泰子と同じ過去を共有し、突如として泰子の日常に大きな変化をもたらす役どころ。高良は、「まず台本を読んで、智の行動を智自身掴み切れてないからこそ、智に対してしょうがないと思えるところがいくつもありました。多くを理解しながらというよりは、その場その場で演っていた記憶です。そして、そこには智の切なさがいつも側にあったと思います。」と話している。

本作のメガホンを撮ったのは、『blue』(03)、『海を感じる時』(14)の安藤尋監督。安藤は、「以前からその作品がとても好きな角田光代さんの原作を映画化することができ、大変嬉しく思っています。そして今回は、初音映莉子さんが、美人であることは面接で分かっていたのですが、実はかなりぶっ飛んだスンゲー女優であり、高良健吾さんがとにかくいいヤツに輪をかけたようにいいヤツで、さらに輪をかけてプロフェッショナルな俳優であることを目の当たりにし、とても貴重な体験でもありました。」と話し、静かな時間と空間が拡がる地方都市で生きる人びとを、さらにリアルな台詞と丁寧な演出で、登場人物の心理描写を強く描き、角田ワールドの世界観を新たに拡げている。原作者の角田も「映画では、登場する人物のひとりひとりが、みんな、断然、小説よりもすてきな人だ。それは生身の人が演じているからかもしれない。俳優さんと女優さんが、登場人物たちの不器用な時間を、ていねいに真摯に生ききってくれているからかもしれない。」と映像化についてコメントを寄せている。

ストーリー

スタッフ

監督:安藤尋
原作:角田光代
脚本:本調有香
音楽:大友良英

キャスト

初音映莉子
高良健吾
藤井武美
黒田大輔
市川由衣
村上淳
木場勝己
草刈民代

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