セザンヌと過ごした時間
原題:Cézanne et moi
2016年/フランス/フランス語/スコープ/114分 配給:セテラ・インターナショナル
2017年9月2日(土)Bunkamuraル・シネマほか全国順次公開
© 2016 – G FILMS –PATHE – ORANGE STUDIO – FRANCE 2 CINEMA – UMEDIA – ALTER FILMS
解説
ポスト印象派の巨匠にして近代絵画の父ポール・セザンヌと
『居酒屋』『ナナ』の小説家エミール・ゾラ
名画に隠された激しくも美しい友情を描く実話
不世出の天才ピカソに「我々の父」と敬愛され、色彩の魔術師マティスに「絵の神様」と崇拝された、画家ポール・セザンヌ。リンゴを描いた静物画や、自身の生まれ故郷である南仏の風景画は、観る者を選ぶことなく広く長く愛され、その作品は今も世界中の美術館に飾られている。
だが、セザンヌが現在の不動の評価を得たのは、亡くなった後のことだった。時の流れが必要な“不遇の天才”には、身を挺して支える者か、互いを高め合うライバルが必ず存在する。セザンヌの場合、その両方の役を担ってくれたのが、不朽の名作『居酒屋』『ナナ』の小説家エミール・ゾラだった。名画と小説に隠された40年近くにわたる、魂を温め合いそして削り合った、激しくも美しい友情の実話が遂に映画化された。
ギヨーム・ガリエンヌとギヨーム・カネ
フランス実力派の名をかけた熱き競演で描く
人生を導く出会いと友情が、心を揺さぶる物語
少年時代に出会ったセザンヌとゾラの絆は、芸術家になる夢で結ばれていた。ひと足先にパリに出たゾラは、新聞に評論を書きながら、小説家としてのデビューを果たす。一方、セザンヌもパリで絵を描き始め、アカデミーのサロンに応募するが、落選ばかりを重ねていく。やがてゾラは、「居酒屋」が大ベストセラーとなって栄光を掴むが、セザンヌは父親からの仕送りも断たれ転落していく。子供の頃にいじめから救ってくれたセザンヌを、物心両面で懸命に援助するゾラ。だが、セザンヌがモデルと思われる画家を主人公にしたゾラの新作小説が、二人の友情にひびを入れる。2年の沈黙の後、ゾラの別荘を訪ねるセザンヌ。芸術家として、そして人としてのそれぞれの未来を決めた、二人の対話とは──?
セザンヌには、監督・脚本・主演を務めた『不機嫌なママにメルシィ!』が、セザール賞作品賞を含む主要5部門に輝き、今やフランスで絶大な人気を誇るギヨーム・ガリエンヌ。破天荒な言動で周りを魅了するセザンヌをダイナミックに演じた。ゾラには、監督を手掛けた『君のいないサマーデイズ』が国内で大ヒットを記録したギヨーム・カネ。最後は謎の死を遂げたゾラの複雑な人物像を繊細に演じた。
裕福なブルジョア家庭で育ち、奔放な青春を謳歌するが、美術界からは無視されたセザンヌ。貧しい母子家庭に育ち、内気な青春を送るが、若くして成功するゾラ。正反対の道を進みながらも、ゾラはセザンヌの“自由な発想”に刺激され、セザンヌはゾラの“真実の迫力”に憧れる。人生を導く出会いと友情の素晴らしさに、心を揺さぶられずにはいられない。
また、『アンナとアントワーヌ 愛の前奏曲(プレリュード)』のアリス・ポル、『タイピスト!』のデボラ・フランソワ、『サンシャイン/歌声が響く街』のフレイア・メーバーら注目の若き女優たちと、『田舎の日曜日』でセザール賞を獲得したサビーヌ・アゼマ、『プロヴァンスの贈りもの』のイザベル・カンドリエらベテラン女優たちの競演も見逃せない。
アートコレクターとしても名高い監督が、
眩い太陽が降り注ぐ南仏プロヴァンスのセザンヌゆかりの地と
芸術の都パリが最も刺激的だった頃のアートシーンを再現
監督は、『シェフと素顔と、おいしい時間』『モンテーニュ通りのカフェ』のダニエル・トンプソン。ロマンティック・コメディーの名手として評価されてきたが、アートコレクターとしても知られるトンプソン監督にとって、セザンヌとゾラの実話の映画化は長年の夢だった。トンプソン監督が脚本の仕上げに入った頃、2014年サザビーズのオークションで、“新発見”が競り落とされる。セザンヌがゾラに宛てた“最後の手紙”で、「君がパリに帰って来たら、会いに行くよ」と綴られていた。奇しくも15年間、膨大なリサーチを重ねたトンプソン監督は、ゾラの小説『制作』をきっかけに決裂したとされてきた二人の“再会”を信じていた。それを“新事実”が補強する形となったのだ。
17~18世紀の町並みが残り、ユネスコの世界遺産に指定されているエクス=アン=プロヴァンスでのロケ撮影を敢行。セザンヌ家の別荘「ジャズ・ド・ブッファン」、セザンヌがアトリエ代わりに借りたビベミュス石切り場に佇む小屋などが堪能できる。さらに、サロンやカフェ、湖へのピクニック風景など印象派が誕生する瞬間の活気あふれる芸術の都パリが再現された。また、メダンにあるゾラの別荘や庭も実際の建物が使用されている。
二人の友情の結末を見届けた後、エンドロールには「サント・ヴィクトワール山」の絵画がモンタージュで映される。人は喜びも悲しみも、こんなにも美しく確かな形に残すことができる──芸術の秘密に心が躍る感動作が誕生した。
ストーリー
1888年、フランスのメダンに佇む瀟洒な別荘のエントランスで、2年ぶりに再会するポール・セザンヌ(ギヨーム・ガリエンヌ)を、エミール・ゾラ(ギヨーム・カネ)が緊張した面持ちで迎える。
セザンヌとゾラが友達になったのは、1852年、まだ少年の頃だった。学校でいじめられていたゾラをセザンヌが助け、ゾラがお礼にひと籠のリンゴを贈ったのがきっかけだった。セザンヌは裕福な銀行家の息子、ゾラは貧しい母子家庭と境遇は正反対だったが、二人は南仏エクス=アン=プロヴァンスの輝く太陽の下で共に成長し、豊かな感性で刺激し合いながら、特別な友情を育てていった。
やがて、詩人を目指してパリへと拠点を移したゾラを追いかけるように、セザンヌも父親の反対を押し切って画家を志す。さっそくアカデミーが仕切るサロンに出品するが、“新しいスタイル”を探求するセザンヌは、ピサロやモネ、ルノワールやシスレーら仲間と共に落選する。
1862年、美術学校への入学を断られ、父親からの送金も打ち切られたセザンヌは、荒れた生活を送っていた。翌年、サロンの落選者たちから審査員への不満が爆発し、大衆が審査する“落選展”が開かれる。そこで話題をさらったのは、マネの「草上の昼食」だった。神話や歴史上の女性ではなく、現実の女性の裸体を描いたために、激しく非難されたのだ。新聞に批評を書き始めていたゾラは、マネを擁護する記事を書く。“落選展”にさえ落ちたセザンヌは失望し、さらに自分のモデルで愛人のアレクサンドリーヌ(アリス・ポル)にゾラが恋をしたことにも腹を立て、エクスへと帰ってしまう。
だが、エクスの豊かな自然の中で、ひたすら孤独に描き続けるセザンヌを支えたのは、ゾラからの心のこもった手紙だった。ゾラは一緒に夢を見た若き日々を「君は僕の青春のすべてだ」と懐かしみ、「勇気を出せ。もう一度、絵筆を持って想像力を羽ばたかせろ。君を信じてる」と励ましていた。
セザンヌはパリとエクスを行き来して創作に励むが、人間関係で問題ばかり起こしていた。ゾラは友を想って、「君は誰にでも横柄で喧嘩っぱやい。だから成功しない」と苦言を呈するが、セザンヌは聞こうともしなかった。
世間からもアカデミーからも無視され続けたセザンヌは、1870年にはレスタックに引きこもり、モデルで新しい愛人のオルタンス(デボラ・フランソワ)と世捨て人のような生活を送り始める。さらに1877年には、アカデミーから印象派が認められ、かつての仲間たちが次々に入選を果たしたことを知って絶望を深めていく。
そんなセザンヌとは反対に、アレクサンドリーヌと結婚したゾラは、小説『居酒屋』が大ベストセラーとなり、続く『ナナ』も大変な評判となり、富と名声を着実に掴んでいく。今やゾラはセザンヌの保護者の如く、オルタンスとの間に生まれた息子のためにも生活費まで工面していた。メダンの別荘で、セザンヌが毒舌を駆使して晩餐会を台無しにしても、二人の絆が切れることはなかった。
ところが1886年、二人の友情に大きな亀裂が走る。画家を主人公にしたゾラの新作小説『制作』を読んだセザンヌが、自分をモデルにしていると深く傷ついたのだ。それから2年、遂にセザンヌがゾラのもとを訪れる。二人が友情と芸術のすべてをかけた、対話とは──?
スタッフ
監督・脚本:ダニエル・トンプソン
プロデューサー:アルベール・コスキ
共同プロデューサー:アラン・テルジヤン、ロマン・ル=グラン、ヴィヴィアン・アズラニアン、ナディア・カムリチ、ギルス・ウォーターキーン、バスティアン・シロド
アシスタント・プロデューサー:フロリアン・ジュヌテ=モレル、アルダヴァン・サフィー
ライン・プロデューサー:ミシェル・シュミット
プロダクション・マネージャー:ジャック・アレクス
オリジナル音楽:エリック・ヌヴー
撮影:ジャン=マリー・ドルージュ(AFC)
編集:シルヴィー・ランドラ
衣装:カトリーヌ・ルテリエ
美術:ミシェル・アベ=ヴァニエ
SFX:ドミニク・コラダン
ヘアメイク:ジスレーヌ・トルトロー
音響:ニコラ・カンタン、アレクサンドル・フルラン、ヴァンサン・アルナルディ
第一助監督:ドゥニ・ベルゴーネ
キャスト
エミール・ゾラ:ギヨーム・カネ
ポール・セザンヌ:ギヨーム・ガリエンヌ
アレクサンドリーヌ・ゾラ:アリス・ポル
オルタンス・セザンヌ:デボラ・フランソワ
アンヌ=エリザベート・セザンヌ:サビーヌ・アゼマ
ルイ=オーギュスト・セザンヌ:ジェラール・メイラン
エミリー・ゾラ:イザベル・カンドリエ
ジャンヌ:フレイア・メーバー
アンブロワーズ・ヴォラール:ロラン・ストケル
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