海辺の生と死
2017年/ 日本/155分/配給:フルモテルモ、スローラーナー
2017年7月29日
(C)2017 島尾ミホ/島尾敏雄/株式会社ユマニテ
解説
本作『海辺の生と死』は、「私小説の極北」と評され戦後文学の傑作として現在も多くの読者を惹きつけている長編小説「死の棘」で知られる島尾敏雄と自身も作家である妻島尾ミホが、それぞれ出会いのエピソードを綴った小説「島の果て」と「海辺の生と死」の二作品を原作に、二人が出会い永遠に解くことのできない赤い糸で結ばれるまでの時間を描いた、「死の棘」へと続く美しい愛の物語だ。
映画の舞台となるのは、透き通った青い海に囲まれ、緑濃い葉が生い茂げり、圧倒的な生命力に満ち溢れ、その美しさから“神の住む島”とも呼ばれる奄美群島内の加計呂間島(かけろまじま)。1945年、太平洋戦争末期―、岬に囲まれた小さな集落も戦争の影に覆われていた。ある日、海軍特攻艇の部隊を率いる朔(さく)隊長が、新たに駐屯してきた。島の子どもたちに慕われ、隊員たちと酒を飲むより島唄を習いたがる…そんな彼を眩しそうに見つめる、国民学校教師のトエ。ある日、トエは朔からの手紙を受け取る。「今夜九時頃浜辺に来て下さい」。トエは、胸の高鳴りを抑えられなかった。体の中に宿った狂おしいほどの愛に戸惑う女。いつまでも下されない出撃命令を待ち、無為に日々を過ごす男。敵からも見離されたような静かな島はゆっくりと終戦を迎えようとしていた――。
トエを演じるのは、日本随一の演技力と圧倒的な存在感を併せ持つ女優、満島ひかり。主人公トエを演じるにあたって、「この脚本と共に、私自身の本性を自らあばいてやろうと思いました。なんにせよ、一生抱えていかなきゃいけない作品になったと思います。」と並々なる気概を持って本作に挑んでいる。「私のルーツは奄美大島にあります」と話す満島は本作で島唄(奄美民謡)の歌唱にも挑戦。満島は、「撮影中、楽しめたことも、できなくて悔しかったこともいっぱいあったけど、奄美のすごさを感じる日々でした」と振り返っている。劇中、満島が披露する島唄は、UAとの共作でも知られる奄美島唄の第一人者、朝崎郁恵が歌唱指導に当たった。満島の繊細な歌声が奄美の美しい自然と共鳴し、観る者の心を揺さぶる。
2017年の今年は、島尾ミホの没後10年、島尾敏雄の生誕100年にあたる。関連書物から浮き彫りになる島尾夫婦がたどった一生は、著名な評論家や作家により、「究極の夫婦愛」を描いたものと評され、取り分け苛烈で劇的な人生を歩んだミホは「純粋無垢ゆえに狂気に至った聖女」であると位置づけられるようになり、神格化されていった。
この戦後文学史に残る伝説的夫婦の愛の物語のメガホンを取った越川道夫監督は、『かぞくのくに』 (2012)など数多くの作品のプロデューサーとして活躍後、2015年『アレノ』に続き本作が監督2作目となる。
「満島さんは、島尾ミホさんをモデルにしたトエを演じ、彼女の戦時中の恋とその時代を、激しく狂おしいまでに駆け抜けていきました。ぼくたちは、島の人々を、島にしげる木々を、島の歌を、海を、満島さんが歌えばその歌声と呼び交すように鳴き始める鳥たちを愛し、彼らとともにこの映画を作りました」とコメントを寄せている。
満島ひかりの渾身の主演作『海辺の生と死』は7月にテアトル新宿にて全国公開。
ストーリー
どうか私のもとへお戻りになって下さいー。第二次世界大戦末期、奄美群島、加計呂麻島(かけろまじま)。岬に囲まれた小さな集落も戦争の影に覆われていた。ある日、海軍特攻艇の部隊を率いる朔(さく)隊長が、新たに駐屯してきた。島の子どもたちに慕われ、隊員たちと酒を飲むより島唄を習いたがる…そんな彼を眩しそうに見つめる、国民学校教師のトエ。ある日、トエは朔からの手紙を受け取る。「今夜九時頃浜辺に来て下さい」。トエは、胸の高鳴りを抑えられなかった。
体の中に宿った狂おしいほどの愛に戸惑う女。いつまでも下されない出撃命令を待ち、無為に日々を過ごす男。敵からも見離されたような静かな島はゆっくりと終戦を迎えようとしていた。
スタッフ
監督:越川道夫
原作:島尾ミホ
島尾敏雄
脚本:越川道夫
脚本監修:梯久美子
企画:畠中鈴子
製作:畠中鈴子
プロデューサー:清野恵里子
財前健一郎
撮影:槇憲治
照明:鳥羽宏文
音響:菊池信之
美術:沖原正純
装飾:藤田徹
衣装デザイン:伊藤佐智子
ヘアメイク:橋本申二
編集:菊井貴
繁音:楽宇波拓
歌唱指導朝:崎郁恵
助監督:松尾崇
制作担当:金子拓也
製作助手:和田理恵
舞石ゆう
キャスト
満島ひかり
永山絢斗
井之脇海
秦瀬生良
蘇喜世司
川瀬陽太
津嘉山正種
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