原題: Jeder stirbt fur sich allein

2016年/ドイツ・フランス・イギリス合作/103分/配給:アルバトロス・フィルム

2017年7月8日

(C)X Filme Creative Pool GmbH / Master Movie / Alone in Berlin Ltd / Pathe Production / Buffalo Films 2016

解説


『インドシナ』(1992)で大女優カトリーヌ・ドヌーヴ、『王妃マルゴ』(1994)ではイザベル・アジャーニの相手役を務め、カルラ・ブルーニ(サルコジ前フランス大統領の妻)らと浮名を流した90年代フランス映画界きってのフェロモン俳優だったヴァンサン・ペレーズの長編監督作3作目になる『ヒトラーへの285枚の葉書』。
いまだ甘い美貌は衰えないペレーズ監督ですが、半分ドイツ人の血を引く彼の本作と重なるルーツゆえ、テーマと真摯にむき合い、あの時代に生きた人間ひとり、ひとりのドラマが浮き上がる映画となった。
予告編では、ヒトラー政権時代の不穏な空気の中、戦争、政府に異議を唱えることがどれだけ危険な行為だったのかを想像させる緊迫感あふれるサスペンスタッチから、お互いへの愛情と敬意を再確認する切ない夫婦愛のドラマも盛り込まれ、引き込まれる映像となっている。

『ヒトラーへの285枚の葉書』映画化まで
600ページを越す大著を、わずか4週間足らずで書き上げたハンス・ファラダの集大成とも言うべき原作「ベルリンに一人死す」がドイツで出版されたのは戦後すぐの1947年だが、ペレーズ監督は2007年にフランス語版が出版された際に初めて読み、その内容に感動し映画化へと動き出すが資金繰りに難航する。その後2010年にアメリカ、イギリスで英語版が発売されるやベストセラーとなり、状況が好転し、英語での映画製作が進みはじめる。
本作が英語映画になったことに対しペレーズ監督は「どこの国、いつの時代でも極端な人間が急に現れる可能性がある、大切なのは、あらゆる場所に住む人たちにこの話を伝えることだ。そして、誰でも闘うことができる、そして闘うには勇気が必要になると示すことが大切だった。だったら、英語の作品にする方がよいだろうと感じた。そうすることでみんなの計画が進むし、この話はいろいろな人に知ってもらうべきだからね」と語る。

本作と監督の類似性 ロシア戦線で亡くなった叔父とガス室送りになった叔父
本作の製作過程で、母親がドイツ人であるペレーズ監督(監督自身はスイス生まれ、スイス育ち)は『ヒトラーへの285枚の葉書』でのクヴァンゲル夫妻との共通点を知りました。それは、ロシア戦線で亡くなった17歳の叔父の存在。本作の主人公クヴァンゲル夫妻は、まだ若い一人息子をロシア戦線で失ったことで、戦争とヒトラーの政策に疑問を持ち、葉書にメッセージを書き、世間の人々へ訴えます。そして、ペレーズ監督のもう一人の叔父は戦時中精神病院に収容されており、後にガス室に送られ亡くなった。また監督の父親はスペイン人であり、祖父は25歳の時に、右翼政党ファランヘ党員に射殺されている。それらのことが重なり、本作の映画製作に使命を感じ長い年月をかけ完成させた。

 

原作者ハンス・ファラダ 新刊
原作者ハンス・ファラダの長編小説“Kleiner Mann, was nun?”(1932)が邦題『どうする小市民』[仮])として、
今夏、みすず書房より6月下旬刊行が決定しました。不況に苦しむヒトラー政権下のドイツで大ヒットし、1934年にはハリウッドで映画化、現在までに世界20ヵ国で翻訳出版された古典的著作です。一介の庶民を主人公に、大衆小説の姿をかりながら社会の暗部を鋭く抉った、ファラダのもうひとつの代表作。

 

 

ストーリー

イギリスの名優が演じるナチス政権下での平凡な夫婦の抵抗と愛

フランスがドイツに降伏した1940年6月、ベルリンの古めかしいアパートで暮らすオットー(ブレンダン・グリーソン)とアンナ(エマ・トンプソン)のクヴァンゲル夫妻のもとに一通の封書が届く。それは最愛のひとり息子ハンスが戦死したという残酷な知らせだった。心のよりどころを失った夫婦は悲しみのどん底に沈むが、ペンを握り締めたオットーは「総統は私の息子を殺した。あなたの息子も殺されるだろう」とヒトラーへの怒りをポストカードに記し、アンナとともにそれを街中にこっそりと置くというささやかな活動を繰り返すようになる。だが、それを嗅ぎ付けたゲシュタポのエッシェリヒ警部(ダニエル・ブリュール)の猛捜査がクヴァンゲル夫妻に迫りつつあった―。

 

スタッフ

監督:バンサン・ペレーズ
製作:シュテファン・アルント
ウーベ・ショット
マルコ・パッキオーニ
ジェームズ・シェイマス
ポール・トライビッツ
クリスチャン・グラス
製作総指揮:マイケル・シール
アリソン・トンプソン
ノーマン・メリー
ピーター・ハムデン
原作:ハンス・ファラダ
脚本:アヒム・フォン・ボリエス
バンサン・ペレーズ

キャスト

エマ・トンプソン
ブレンダン・グリーソン
ダニエル・ブリュール
ミカエル・パーシュブラント
モニーク・ショーメット
ヨアヒム・ビスマイヤー
カトリン・ポリット
ラルス・ルドルフ
ウーベ・プロイス

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