ドリアンドリアン
原題:DURIAN DURIAN
ドリアンは、香港に似ている。 強烈な臭気を放ちつつも、人を惹きつけてやまない、あの香港の雑踏に・・・。
2000年ベネチィア映画祭出品
2000年11月16日香港公開
2000年/香港/カラー/117分/ビスタサイズ/ 提供:大映、博報堂 配給:大映
中国映画の全貌 2007にて上映::http://www.ks-cinema.com/schedule.html 2002年4月13日より恵比寿ガーデンシネマにてロードショー!!
公開初日 2007/07/27
配給会社名 0058
解説
「ドリアンドリアン」は、香港返還3部作をとり終えたフルーツ・チャン監督が、心機一転し「女性映画」という全く新しい分野に取り組んだ意欲作だ。
《チン・ハイルー》「メイド・イン・ホンコン」「花火降る夏」で、中国返還を控えた香港の若者の不安と焦燥を鮮烈に描き、「リトル・チュン」では返還よりも香港の大スター、ブラザー・チュンの死と、その莫大な財産を巡る遺産争いのワイドショーに心奪われる市井の人ノマを温かく描き、香港インディペンデント界の星となったフルーツ・チャン。「メイド・イン・ホンコン」でフルーツ・チャン監督に見出された、街でスケボーをしていた青年サム・リーは、瞬く間に香港映画界のスターダムに駆け上った。そして、香港返還後、新たに中国と香港の関係を見つめなおそうとしているフルーツ・チャンの前に現れたのは、京劇学校を卒業後、北京で演技の勉強をしているチン・ハイルーだった。「リトル・チュン」の取材中に、中国から香港にやってくる出稼ぎの女性たちのモチーフを得ていたフルーツ・チャンは、芯が強く中国の伝統劇・京劇をマスターしているチン・ハイルーに大きな興味を持つ。そしてチン・ハイルーと共に、彼女の故郷である中国東北部、牡丹江を訪れたとき、雪の降らない南国の香港と、ドリアンを知らない大陸東北部の牡丹江を舞台にした「ドリアン ドリアン」の構想が固まった。フルーツ・チャン監督は、迷わずチン・ハイルーをこの映画のヒロインに抜擢した。《ドリアン》チン・ハイルー演じるヒロインのイェンと同じく、香港から牡丹江を旅するもう一人の主役、ドリアン。ドリアンは、強烈な臭気を放ちつつも、そのとろけるような味わいから多くの人を虜にし、果物の王様と呼ばれる不思議な南国の果物だ。フルーツ・チャン監督はこのドリアンに、香港の歓楽街の路地裏をだぶらせている。そこに危険な匂いをかぎつつも、イェンはその雑踏に惹きつけられずにはいられない。やがてイェンはまるで本能に赴くように、ジャンク・フードをもりもりと食べながら、香港一の歓楽街ポートランド・ストリートで体をはって稼ぎまくるようになる。そしてある事件をきっかけに、一個のドリアンが、ポートランド・ストリートに暮らす、様々な人の想いを結び付けてゆくことになる。インド系の青年、まだ年若いぼんびき、子供の養育費のために大陸から出稼ぎにきた中年女性、皿洗いの幼い姉妹…。フルーツ・チャン監督は、臭気の中に隠されたドリアンの味わいを、こうした人々の人生の味わいに、見事に投影している。
ストーリー
中国東北部・牡丹江から中国南部の経済特別区・深蜘(シンセン)に出稼ぎにやってきたイェンは、家族に内緒で3週間の就業ビザを手に入れ香港へ渡る。香港の雑踏の中、ジャンクフードをもりもり食べながら体をはって稼ぎまくるイェン。香港の名所、憧れの海洋公園も、カレンダーの写真で眺めるだけ。男たちに呼び出されるまま、イェンは毎日狭い路地裏を闇歩する。このポートランド・ストリートと呼ばれる路地裏が、イェンの知っている香港の全てだった。出身地を尋ねられるたび、上海、四川、湖南と、男たちを煙に巻きながら、”食べて、売る”というバイタリティ溢れる日々を送るイェン。そこには、哀しさや暗さが入り込む隙もない。イェンは、既に雑多な香港の路地裏の一部だった。ある日、イェンのガード役のチンピラが、ドリアンで頭を殴られるという事件が起きる。危ない商売をしているイェンは警察を呼ぶことができず、路地裏で皿洗いをしている少女ファンに声をかける。だがファンとその家族は、かたくなに警察を呼ぶことを拒む。実はファンの家族もまた、中国本土から就業ビザで香港に渡った不法滞在者だったのだ。イェンはここにも、海洋公園へ行くこともなく、路地裏で働きつづける同胞がいることを知る。故郷の牡丹江に帰ることになったイェンは、ファンに自分の住所を渡す。「私の故郷には雪が降るのよ」。イェンは香港に来て初めて、自分の本当の故郷のことを語った。牡丹江に帰ったイェンは、一躍成功者として迎えられる。東北の中国人たちが憧れる”南方”で、イェンが本当は何をしていたのかは誰も知らない。ただイェンが持ち帰った金額の大きさを知り、親戚たちは自分の娘も”南方”へ連れて行ってほしいとイェンにせがむ。「イェンに任せれば、問題ないわよ」。何も知らないイェンの両親は、娘の出世に上機嫌だが、イェンは複雑だ。実はイェンの携帯には、正月を控えて女の子が足りないという”南方”からの電話がかかっていた。「戻ってきなさいよ。香港の男が飢えているわよ」。その馴れ馴れしい声に、イェンははっきりと嫌悪感を覚えた。中国舞踊ができる従妹を連れて、もう一度”南方”へ行けという両親に、イェンは、「もう”南方”へ行く気はない」と言う。子供のころから京劇の訓練をつんできたイェンは、実際にはそんな特技が何の役にも立たないことを身にしみて知っていた。イェンが家族たちに内緒で、体を売ってまで大金を手に入れたのには理由があった。イェンは離婚し、自立することを考えていたのだ。貯めたお金は、お店を持つための頭金だった。だが、実際に故郷へ戻ったイェンは、そのお金をどうやって使えばいいのか判らない自分に気づいていた。
スタッフ
監督・脚本:フルーツ・チャン
原案:フルーツ・チャン、シン・ジーミン、チャン・ワイクーン
撮影:ラム・ワーチュン
編集:ティン・サムファ
音楽:ラム・ワーチュン、チュー・ヒョンチュン
製作:ドリス・ヤン
キャスト
チン・イェン:チン・ハイルー
ファン:マク・ワイハァン
ファンの父:ウォン・ミン
ファンの母:ヤン・メイカム
ウェンウェン:マク・シュエウェン
イェンの父:チェン・リェングイ
イェンの母:ジャン・リーイェン
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