原題:The Lovers and the Despot

2016年/アメリカ/カラー/94分/ 配給:彩プロ

2016年9月24日よりユーロスペースほか全国順次公開

C)2016 Hellflower Film Ltd/the British Film Institute

公開初日 2016/09/24

配給会社名 0106

解説


本作は、1978年、韓国人女優チェ・ウニ(雀銀姫)と、著名な映画監督であるシン・サンオク(申相玉)が北朝鮮に拉致された事件を追ったドキュメンタリー。拉致被害者であるチェ・ウニ本人の証言や、その家族、当時事件を調査した香港の捜査官や米国務省関係者、元CIA職員らのインタビューを通して、1978年の拉致から86年に亡命するまでの、8年間に及ぶ北朝鮮での生活が解き明かされます。

 金正日(キム・ジョンイル)は自らの肉声をほとんど露出させないことで有名ですが、作中では、2人が密かに録音していた金正日の肉声テープが初公開され、“北朝鮮から国際映画祭に出せるような映画を出したい”“私が2人を我々の方へ渡ってくるようにせよと指示した”と、拉致を指示するその内容は、映画祭で大きな反響を呼びました。 そう、映画マニアであり、およそ2万本ものビデオテープを所有し、『ゴジラ』や『男はつらいよ』のファンであったと言われる金正日は、映画を撮らせるために2人を拉致したのです。拉致後、シン・サンオクは、“申フィルム”映画撮影所総長に任命され、北朝鮮で17本もの映画を製作。子供たちと引き離され、悲しみに暮れるチェ・ウニとは対照的に、監督は何度も逃亡を謀りながらも、国家から与えられる潤沢な資金と、自由に撮影できる環境の下、やがて映画製作に熱中してゆきます。また、“将軍様”として神格化されてきた金正日にとってもシン・サンオクは、唯一対等に大好きな映画について語り合うことができる貴重な存在だったことでしょう。

 映画を愛した独裁者と、映画に取り憑かれた映画監督、そしてそんな2人に運命を翻弄される1人の女性——。亡命から30年の時を経た今、ベールに包まれた国家の内幕が明かされます。

ストーリー







【シン・サンオク(申相玉)】
京城中学校を卒業後、1944年に日本へ渡り、東京美術学校(現東京藝術大学)で美術の勉強を始める。1952年に 16mm 映画『悪夜』で本格的な映画監督デビュー。 映画女優で韓国の大スターだった崔銀姫(チェ・ウニ)と1953年に結婚、2男2女をもうけたが、1976年に離婚。1978年、香港で北朝鮮によって崔銀姫が拉致された後、彼自身も拉致されたが、事件当時、北朝鮮側は自発的な亡命と発表していた。北朝鮮では、“申フィルム”映画撮影所総長を引き受けながら『帰らざる密使』、『プルガサリ』などの制作に携わっていた。1986年に亡命するまでの間、17本の映画を制作している。

【チェ・ウニ(雀銀姫)】
1944年高等女学校卒業後、劇団現代劇場に入り演劇活動を開始する。47年映画デビュー。53年、シン・サンオク監督と結婚。以後、多くのシン監督作品に出演している。64年に安養芸術高等学校を設立。翌65年、「ミンミョヌリ−許嫁−」(未)で監督デビュー。78年1月14日、香港で北朝鮮に拉致される。83年、北朝鮮でシン・サンオク監督と再会。金正日の指示の下、映画制作に携わり、申フィルム映画撮影所で制作された「帰らざる使者」(84/未)でチェコ国際映画祭特別監督賞、85年には「塩」(未)で第14回モスクワ国際映画祭 主演女優賞を受賞する。翌86年、シン・サンオク監督と共に亡命に成功。渡米した後、99年に韓国へ帰国。2010年に第47回大鐘賞映画祭で功労賞を、14年には大韓民国大衆文化芸術賞の文化勲章を授与されている。

【金正日と映画の関係】
平壌中心の高台に「国家映画文献庫」という映画の文献庫を(事実上個人で)持ち、『男はつらいよ』『釣りバカ日誌』『座頭市』『ゴジラ』などの日本映画から、『007』シリーズ『ランボー』『13日の金曜日』などのハリウッド大作まで、およそ2万本のビデオテープを所持していた。ジェームズ・ボンドの『007』シリーズの映画は漏れなく入手して繰り返し見ていたようだ。北朝鮮の労働党内では映画を扱う宣伝部(党中央委員会書記、党組織、宣伝扇動担当)の出身であり、1980年に行われた第6回党大会および党第6期中央委員会第1回総会で党中央委員会政治局常務委員、中央委員会書記、中央軍事委員会委員に就任し、後継者としての地位を確固たるものとした背景には、父・金日成をカリスマ化するプロパガンダに関係した経験が生かされたと言われている。映画論についての自筆の著書「映画芸術論」は主著のひとつで日本語訳も出版されている。
 金正日は60年代終盤から80年代にかけ、800本以上の映画を「制作」したと北朝鮮の公式メディアが伝えている。

スタッフ

監督:ロス・アダム、ロバート・カンナン

キャスト

チェ・ウニ
シン・サンオク

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