原題:Locke

2013年/イギリス・アメリカ/英語/86分/STEREO/シネスコ/日本語字幕:安本熙生 提供:ニューセレクト/配給:アルバトロス・フィルム

2015年6月27日、YEBISU GARDEN CINEMA ほか全国順次ロードショー

(C) 2013 LOCKE DISTRIBUTIONS, LLC ALL RIGHTS RESERVED

公開初日 2015/06/27

配給会社名 0012

解説


究極の限定的状況に揺れる〈人生〉と〈運命〉を描き、圧倒的なサスペンスとエモーションがほとばしる快作

人生は“一寸先は闇”とよく言われるが、ごく普通のイギリス人であるアイヴァン・ロックは、今まさに思いがけない緊急事態に見舞われていた。大手建設会社の現場責任者として絶大な信頼を得ている彼は、キャリア最大の大切な仕事を翌朝に控え、今夜は愛する妻子と共に過ごすつもりだった。そんなアイヴァンのもとに突然1本の電話がかかってきて、家族との約束も明日の大仕事もすべて投げ出さなければならない切迫した事情が生じたのだ。しかし他人には理解しがたいその決断は、仕事仲間や家族を激しく動揺させ、愛車のBMWでロンドンに向かうアイヴァンを電話越しに容赦なく責めなじってくる。自らの輝かしい人生が刻一刻と崩壊するなか、なぜ彼は疾走を続けるのか。闇の中に妖しい光がきらめくハイウェイの果てに、アイヴァンがたぐり寄せるのは破滅か、それとも希望なのか……。
イギリス映画界の才能たちがロンドンに結集し、4日間のリハーサルを経てわずか8日間で撮り上げた『オン・ザ・ハイウェイ』は、あらゆる面で希に見る驚きに満ちたサスペンス・ドラマである。物語はイングランド北部からロンドンに通じるハイウェイの車内だけで進行し、スクリーンに映し出される登場人物はその車を運転する主人公アイヴァンひとりだけ。ある差し迫った理由ゆえに“人生最大の決断”を下した彼の猛スピードで変わりゆく運命が、仕事仲間や妻子との電話での会話によって描かれていく。

しかも約1時間半の出来事がリアルタイムで映像化される一方、車をフィーチャーした映画につきものの派手なカーチェイスや銃撃アクションの類いは一切なし。このうえなく虚飾をそぎ落とした大胆な設定のもと、ひとりの男に降りかかったドラマティックな人生の岐路を凝視し、予想もつかない感情のせめぎ合いへと観客を否応なく巻き込んでいくのだ。ヴェネツィア国際映画祭やサンダンス映画祭で絶賛を博し、アートハウス系映画の賞レースでも快走した野心作の全貌がついに明らかにされる。

疾走する車内だけで進行するひとり芝居に挑んだトム・ハーディ、入魂のパフォーマンス!

回想シーンはおろか場面転換すらまったくない本作で、全編出ずっぱりのひとり芝居を披露するのはトム・ハーディ。
『インセプション』『裏切りのサーカス』『ダークナイト ライジング』といったセンセーショナルな話題作に相次いで出演し、今夏には超大作『マッドマックス 怒りのデス・ロード』の主演を務めるハーディは、まぎれもなく世界中で今最も注目され、最も忙しいスター俳優のひとりである。BMWの運転席に座り続けるという極端に自由が制限された状況のもと、想定外の仕事のトラブル対応を迫られ、家族との葛藤にもがき苦しむ主人公の複雑な心の揺らめきを繊細に表現。その孤独、失意、怒り、悲哀の先に、ひとりの人間の剥き出しの純粋さをも演じきった渾身のパフォーマンスから一瞬も目が離せない。
そして、たった一度の“過ち”をきっかけに人生のすべてを失っていく男の物語を創出したのは、アカデミー脚本賞にノミネートされた『堕天使のパスポート』や『イースタン・プロミス』のシナリオで脚光を浴び、『ハミングバード』で監督デビューを飾ったスティーヴン・ナイト。自ら企画を立ち上げたこの監督第2作では、密室劇にも似た濃密なサスペンスと奥行きあるヒューマン・ドラマを見事に融合させ、イギリス・インディペンデント映画賞の脚本賞を受賞した。

さらに、8日間で撮られたとは信じがたいヴィジュアルの圧倒的なクオリティの高さも特筆ものである。ハイウェイを疾走するBMWのフロントガラスに反射する街灯、信号、カーライトの光を巧みに取り込み、幻想的にしてノワールなムードを醸し出す映像美。ドキュメンタリーのような臨場感をみなぎらせながら、ハーディの多彩なニュアンスの演技を生かした編集テクニックの妙。これら一級の仕事をこなしたスタッフに加え、ハーディと声だけで共演する脇役にもイギリスの実力派が揃った。『アンナ・カレーニナ』のルース・ウィルソン、『思秋期』のオリヴィア・コールマン、TVシリーズ「SHERLOCK/シャーロック」のモリアーティ役で知られるアンドリュー・スコット、『インポッシブル』のトム・ホランドらが、生々しいセリフの応酬で映画をエモーショナルに盛り立てている。

ストーリー








グローバルな大手建設会社のエリート社員、アイヴァン・ロック(トム・ハーディ)にとって、その夜は久々に家族と憩いのひとときを過ごすはずだった。翌朝早くには、55階建ての超高層ビルの工事現場に 200台以上のトラックが押し寄せてきて、コンクリートを流し込む重要な作業が待っている。アイヴァンは妻カトリーナ(ルース・ウィルソン)、ふたりの息子エディ(トム・ホランド)とショーン(ビル・ミルナー)を愛しているが、長らく家庭より仕事を優先させ、今の誇らしいキャリアを築き上げてきたのだ。
ところが思いがけない1本の電話がかかってきて、アイヴァンは愛車のBMWに乗り込んだまま、しばし深刻な面持ちで考えをめぐらせる。そして工事現場から自宅ではなく、遠く離れたロンドンへと連なるハイウェイにハンドルを切った。
それは家族との約束も、今取り組んでいる巨大プロジェクトも、すべてをほっぽり出すという人生最大の決断にほかならなかった。
そんなアイヴァンの他人には理解しがたい行動は、まず仕事仲間にショックを与えた。翌朝の作業の代理をむりやり任された部下のドナル(アンドリュー・スコット)は、電話の向こうで明らかに動揺している。続いて連絡してきた上司のガレス(ベン・ダニエルズ)は、信頼を寄せてきたアイヴァンに裏切られた思いで怒り心頭だ。しかしアイヴァンの決意はまったく揺るがない。ドナルには電話で作業をサポートすると伝え、ガレスには「工事は失敗させない」と言い放つのだった。
アイヴァンにとって仕事仲間よりもはるかに気まずい相手は、何も知らずに夫の帰宅を待ちわびている妻のカトリーナだった。意を決して重い口を開いたアイヴァンは、彼女にたった一度の“過ち”についての衝撃的な真実を告白するが、次の瞬間、無言で電話を切られてしまう。

ハイウェイの制限速度ギリギリでBMWを走らせ、このまま渋滞に巻き込まれなければ、あと1時間余りでロンドンに到着する。そのさなかにもアイヴァンのもとにはひっきりなしに電話がかかってきて、あらゆる事態に冷静に対処しようとする彼を容赦なく悩ませる。シカゴの本社に連絡を取ったというガレスは、有無を言わせぬ口調でアイヴァンにクビを宣告。コンクリートの種類やポンプの確認にてんてこ舞いのドナルは、重圧に耐えきれず酒に手を出してほろ酔い状態だ。落ち着きを取り戻すどころか、いっそう情緒不安定に陥ったカトリーナは、アイヴァンに「ろくでなし!」と罵声を浴びせてくる。ロンドンが近づくにつれ、アイヴァンを取り巻く状況は公私共に悪化の一途をたどっていった。
やがて無邪気な息子たちも、両親の不穏な様子に薄々気づいたらしい。何の罪もないふたりを悲劇に巻き込んでしまったアイヴァンは、彼らと他愛ないサッカーの話を交わしながら、やるせない感情がこみ上げてきて涙をぬぐう。こんなはずではなかった。この夜、アイヴァンは自らが犯した“過ち”と真摯に向き合いたかっただけなのだ。
しかし、もはや後戻りはできない。ロンドンが間近に迫るなか、アイヴァンはほんの1時間半前まで輝きを保っていた自分の人生が、猛烈な勢いで崩れ落ちていくのを実感していた。そして壮絶な破滅と新たな希望のどちらが待ち受けているのかもわからない“結末”に向かって、運命のハイウェイを疾走していくのだった……。

スタッフ

監督:スティーブン・ナイト
製作:ポール・ウェブスター
ガイ・ヒーリー
製作総指揮:スチュアート・フォード
スティーブ・スクイランテ
デビッド・ジョーダン
ジョー・ライト
脚本:スティーブン・ナイト
撮影:ハリス・ザンバーラウコス
衣装:ナイジェル・エガートン
編集:ジャスティン・ライト
音楽:ディコン・ハインクリフェ
音楽監修:ニック・エンジェル

キャスト

トム・ハーディ
オリビア・コールマン
ルース・ウィルソン
アンドリュー・スコット
ベン・ダニエルズ
トム・ホランド
ビル・ミルナー

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