原題:Aimer, boire et chanter

第64回 ベルリン国際映画祭アルフレッド・バウアー賞(銀熊賞)受賞

2014 年/フランス/108 分 配給:クレストインターナショナル

2015年2月14日 岩波ホールほか全国順次公開

© 2013 F COMME FILM – FRANCE 2 CINÉMA – SOLIVAGUS

公開初日 2015/02/14

配給会社名 0096

解説


『夜と霧』から『愛して飲んで歌って』へ。
世界の巨匠が最後に遺したのは、陽気でチャーミングな人間ドラマ。

2014年3月1日、巨星堕つの報せに世界がすすり泣いた。アラン・レネ監督、享年91。アウシュヴィッツ収容所でのホロコーストを告発したドキュメンタリー『夜と霧』(55)で世界に衝撃を与え、『二十四時間の情事』(59)や『去年マリエンバートで』(61)といった傑作で知られる世界の巨匠。『スモーキング/ノースモーキング』(93)以降は、軽妙洒脱なコメディ路線を打ち出し、『恋するシャンソン』(97)などの大ヒット作によって、フランスの国民的監督となった。近年はフランスの新世代監督やスティーヴン・ソダーバーグ、アルフォンソ・キュアロン、クリストファー・ノーランといったハリウッドのヒットメイカーらがレネの影響を公言するなど、世界的評価が一段と高まっていた。
2011年に日本公開された『風にそよぐ草』(09)では、ますます研ぎ澄まされてゆく感性により、もはや不死の人との思いを観る者に植え付けていた。そんな中、最期まで新作に意欲を燃やしていた巨匠の突然の訃報が世界を駆け巡った。ところが巨匠は、肩を落とす私たちになんとも驚くような贈り物を遺していってくれた。それが2014年ベルリン国際映画祭に出品された『愛して飲んで歌って』だ。レネの文学、演劇、音楽、コミックへの造詣の深さをうかがわせ、それらを融合させた軽やかでチャーミングな人間ドラマ。そんな瑞々しいレネの創意と情熱が讃えられて、ベルリン国際映画祭では通常、革新的な若手監督に与えられるアルフレッド・バウアー賞(銀熊賞)を受賞。年を重ねても、常に新境地を開拓してきたレネに対する最高の賛辞となった。

まさに軽妙洒脱!
フランスのエスプリとイギリスのユーモアの見事な融合。

タイトルにも胸躍らされる本作だが、原作は英国の戯曲家アラン・エイクボーンの「お気楽な生活」。このレネのお気に入り作家の作品は、『スモーキング/ノースモーキング』(93)『六つの心』(06)に次いで映画化3作目となる。
とある春の日の田舎道の風景から一転し、英国地図のヨーク市のあたりにカメラが寄っていくと、やがて人気バンド・デシネ(フランス漫画)作家ブルッチによる鮮やかな書割セットが現れる!そこから飛び出してくる3組の夫婦は、友人ジョルジュが末期ガンで余命わずかと知らされ大慌て。彼らは、愛すべき旧友の残り少ない人生を良きものにしようと一致団結するのだが、過去にジョルジュと関係のあった女たちは彼をめぐって火花を散らし、男たちは胸にくすぶる想いを抱えて右往左往することに。そんな人気の的のジョルジュとは、いったいどんな人物なのか……。
ミューズであるサビーヌ・アゼマを筆頭に、俳優もスタッフもレネ組といわれる仲間たちとの共同作業をこよなく愛してきたレネ。その息の合ったアンサンブルが、戯曲家エイクボーンの英国風ユーモアとフランスのエスプリが絶妙に解け合った人間ドラマを生き生きと浮かび上がらせる。不治の病で余命わずかというジョルジュには、病を気力で押しのけながら作品と取り組んでいたレネ自身がどうしても重なる。自作の中で飄々と生前葬を演出する遺作には、アゼマの「(ジョルジュは)人生を見直せと皆に言っているのかしら」という台詞をはじめ、やがて“愛して飲んで歌って、一度しかない人生を思い切り楽しんでごらん”という、巨匠の若々しく、茶目っ気に満ちたメッセージが聴こえてくるようだ。

巨匠のファンタジーを共有するレネ組キャスト&スタッフの抜群のチームワーク。

新作のプロットが決まれば、俳優やスタッフを自宅に招いて意見交換をし、リハーサルを重ね、撮影セットに入る頃にはすべてが出来上がっていたというレネ作品。長年にわたって彼の元に集まり、その世界を共有してきた仲間たちとのチームワークは完璧だ。おしゃべりで自由奔放なカトリーヌ役で映画にエネルギーを注入するのは、11作にわたって巨匠の作品を支えてきたミューズ、サビーヌ・アゼマ。その夫役コリンに、80年代に『イヴォンヌの香り』(94)などの二枚目役で一世を風靡し、近年は渋みや可笑し味も演じ分けるイポリット・ジラルド。夫の浮気に気づきながらも気品とユーモアで対処してきたタマラには、『日曜日が待ち遠しい!』(83)のカロリーヌ・シオル。その夫役ジャックを『風にそよぐ草』に次いで出演のミシェル・ヴュイエルモーズが演じる。アゼマとともにレネ組を支えるアンドレ・デュソリエはシメオン役で映画に深みを加え、『カドリーユ』(97)のサンドリーヌ・キベルランが情緒不安定なモニカ役で念願のレネ作出演を果たしている。
ブルッチによる書割を引き立たせるユニークなセットを手がけたのは、ジャック・ソルニエ。『去年マリエンバートで』以降の全レネ作品のファンタジーを具現化してきた腹心の美術監督が、レネに負けず劣らず、若々しいアイデアで観客の心を浮き立たせてみせる。

ストーリー





イギリス、ヨークシャー郊外。
ジョルジュ・ライリーはカリスマ的な魅力を持つ高校教師。

開業医をしているコリン(イポリット・ジラルド)とその妻カトリーヌ(サビーヌ・アゼマ)。コリンは生真面目な男で、カトリーヌが若いころにジョルジュの恋人だったことを知る由もない。
リッチなビジネスマンであるジャック(ミシェル・ヴュイエルモーズ)はジョルジュの10代のころからの大親友。妻のタマラ(カロリーヌ・シオル)は良妻賢母で、夫の浮気も知らないふりをしている。
ジョルジュの元妻であるモニカ(サンドリーヌ・キベルラン)は、彼の八方美人ぶりに耐え切れず夫を捨て、農夫シメオン(アンドレ・デュソリエ)と新しい生活を始めていた。

始まりは、コリンがジョルジュの余命がいくばくもない事実を妻に明かしてしまったことだった。このショッキングなニュースはおしゃべりなカトリーヌによって瞬く間にみんなの秘密となる。
地元の素人演劇一座で4人芝居をすることになっているコリン、カトリーヌ、タマラは、突然降板することになったもう一人の代役にジョルジュを引っ張り出すことに成功。

ジャックはモニカにジョルジュの元に戻って最期を看取ってほしいと懇願し続ける。最初は拒んでいたモニカだが、シメオンとの関係に疑問を感じていたこともあり気持ちが徐々に傾いていく。4人芝居の舞台ではジョルジュとタマラのラブシーンが用意され、リハーサルごとに二人の関係は親密になっていく。

芝居は成功に終わった。
ところが、愛すべき友人ジョルジュの最期の時間を有意義なものにすべく一致団結していた三組の関係は、おかしな方向に向かっていく。
ジョルジュがモニカ、タマラ、キャサリン三人それぞれに最後のバカンスをスペインのテネリフェ島で過ごそうと誘っていたのだ。女たちは次第にその気になり、それを知った男たち三人は不覚にも動揺し右往左往する。さて、ジョルジュはテネリフェ島へ誰を連れていくことになるのだろうか???

スタッフ

監督:アラン・レネ
製作:ジャン=ルイ・リヴィ
製作総指揮:クリストフ・ジョーフロイ
脚色:ローラン・エルビエ
アレックス・レヴァル(アラン・レネ)
台詞:ジャン=マリー・ブゼ
原作:アラン・エイクボーン“Life of Riley”(お気楽な生活)
第一アシスタント・ディレクター:クリストフ・ジョーフロイ
イラスト・書割:ブルッチ
撮影監督:ドミニク・ビューレル
美術:ジャック・ソルニエ
衣裳:ジャッキー・ビュダン
録音:ジャン=ピエール・デュレ
音響編集:ジェラール・アルディ
ミキシング:ジェラール・ラン
編集:エルヴェ・ド・リューズ
音楽:マーク・スノウ
共同製作:F・コム・フィルム
フランス2シネマ
ソリヴァギュス

キャスト

サビーヌ・アゼマ
イポリッド・ジラルド
カロリーヌ・シホール
ミシェル・ヴュイエルモーズ
サンドリーヌ・キベルラン
アンドレ・デュソリエ

LINK

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