原題:La chispa de la vida

2011年/スペイン/カラー/98分/G 配給:松竹

2014年11月22日(土)より、ヒューマントラストシネマ渋谷、シネ・リーブル梅田 2014年11月29日(土)より、名古屋ピカデリー、福岡中洲大洋 ほか全国順次公開

(C)Alfresco Enterprises y Trivision

公開初日 2014/11/22

配給会社名 0003

解説


孤高の天才か、それとも狂気の破壊者か!?
スペインが世界に誇る型破りな才能、 監督:アレックス・デ・ラ・イグレシアの世界

パブロ・ピカソ、サルバドール・ダリといった不世出のアーティストを輩出してきたスペインは、言わずと知れた芸術と情熱の国。映画史上においてもルイス・ブニュエル、ペドロ・アルモドバルらの希代の才能を生み出してきたこの国は、世界的に見ても極めてユニークな映画の産地として名高い。そんなスペイン映画界で今、偉大なる先達たちの濃厚なラテンの血を受け継ぐかのように、驚異的な傑作&怪作を連打している型破りなフィルムメーカーがいる。その名もアレックス・デ・ラ・イグレシア。俗に言う“天才と狂気は紙一重”なる表現が、これほどふさわしい監督にはそうそうお目にかかれるものではない。
これまでのイグレシア作品は、特集上映やDVDリリースを含めるとほとんどが日本に輸入されてきたが、いずれもひっそりと紹介されたため、一部のファンの熱狂的な支持を獲得するにとどまってきた。そして、このたびゴヤ賞8部門を独占した『スガラムルディの魔女』(13)と奇想天外なブラック・コメディ『刺さった男』(12)の連続公開が決定。はたしてアレックス・デ・ラ・イグレシアとは孤高の天才か、それとも狂気の破壊者か。あなた自身の目で、しかと見極めてほしい。

“崖っぷちの男”を玩ぶ魔女たちの秘密と、 “どん底の男”が命懸けで魅せるショータイム!
究極の驚きに満ちたイグレシアの2作品を連続公開

はちゃめちゃなクライム・アクションとして幕を開けるイグレシアの最新作『スガラムルディの魔女』は、あらゆる観客を行き先不明のジェットコースターに乗せ、ノンストップで疾走するエンターテインメント快作だ。
主人公は職を失い、妻に逃げられてブチ切れ、同じような境遇の仲間をかき集めて白昼堂々と強盗計画を実行した三十男ホセ。幼いひとり息子とともにタクシーに飛び乗って逃走した彼が、パトカーの追跡を交わしてたどり着いたのは何と食欲旺盛な魔女たちが巣食う村! 母子3世代の魔女にまんまと捕らえられたホセたちは、人類の命運をも左右する邪悪な儀式の生け贄にされるのだった……。

伝説の魔女の村に足を踏み入れてしまったダメ男たちの生きるか死ぬかの脱出サバイバルを描く本作は、イグレシアの全作品に共通する異常なテンションの高さに全編が貫かれ、まさに究極のラテン系マジカル・アトラクション・ムービーとなった。妖婆やセクシー美女の姿を借りた魔女たちの大暴走が、スラップスティックなギャグとスリル満載で展開するにとどまらず、クライマックスにはまさかの巨大クリーチャーが出現し、一瞬たりとも目が離せない。おまけに女難に悩む“崖っぷちの男”ホセを翻弄する魔女たちの物語を、男性中心の社会を痛烈に皮肉った女性賛歌として描いている点にも、イグレシアの懐の深さがうかがえる。

『スガラムルディの魔女』の前作にあたる『刺さった男』は、やはりスペインの経済不況のとばっちりを食った中年男ロベルトが主人公。就職活動に失敗したある日、かつて新婚旅行で訪れた思い出の街に立ち寄った彼は、ローマ劇場の遺跡発掘現場にさまよい込み、高所から転落してしまう。からくも一命は取り留めたものの、鉄筋が後頭部に突き刺さって身動きがとれなくなったロベルトは、大勢のマスコミに取り囲まれ、一躍世界中が注目する時の人に……。

失業によって自信を喪失した“どん底の男”ロベルトを襲う悪夢のような運命を描く本作は、頭に鉄筋が刺さるというこのうえなくシンプルかつ仰天必至の設定でぐいぐい見せる衝撃作。他人の不幸は蜜の味とばかりに取材攻勢をかけるマスメディアの本質をシニカル&ポップなタッチで暴きつつ、それを逆手にとって“命懸けの金儲け”に打って出る主人公の奮闘を描出。ブラックな笑いあり、油断禁物のサスペンスあり、ちょっぴりホロリとさせる家族愛ありと、イグレシア的なカオスが満喫できる一作に仕上がっている。

ストーリー







広告業界の元エリート重役ロベルト・ゴメスは、今まさに人生のどん底の苦しみを味わっていた。かつて炭酸飲料のCMを大ヒットさせた彼は、2年前に失業して以来、自尊心をかなぐり捨てて就職活動を行ってきたが、世知辛い不況の嵐が吹き荒れるなか、救いの手を差しのべてくれる人はどこにもいない。もはや世間に見捨てられたと感じ、夫としても2児の父親としても自信を失ったロベルトの心の支えは、美しくて気立てのいい妻ルイサだけだった。
今日も旧知の会社社長に冷たくあしらわれたロベルトは、センチメンタルな気分に駆られ、ルイサと新婚旅行で訪れたカルタヘナ市に車を走らせる。ところが夫婦の大切な思い出の場所であるホテルは、いつの間にか博物館に成り代わっていた。折しもこの日は、古代ローマ時代の劇場の遺跡を観光スポットとしてPRする市長の記者会見の真っ最中。ふらふらと館内に足を踏み入れ、大勢のメディア関係者に揉みくちゃにされたロベルトは、薄暗い立入禁止区域にさまよい込んでしまう。

そのとき思わぬ事態が発生した。警備員に注意されて慌てふためいたロベルトは、クレーンに吊された彫像にしがみつき、はるか下の遺跡発掘現場へ転落。幸いにも一命を取り留めたロベルトは意識もしっかりしていたが、仰向けの状態のまま立ち上がることができない。何と直径約1センチの鉄筋が、彼の後頭部に深々と突き刺さっていたのだ。市長を取材中のマスコミがそれに気づき、たちまち現場は蜂の巣をつついたような大騒ぎとなる。
救急隊や消防隊、地元病院の外科医らが次々とロベルトを取り囲み、マスコミはヘリコプターを飛ばしてライブ中継を開始。記者会見を邪魔される格好になった市長は、ロベルトをさっさと運び出せと急かすが、むりやり鉄筋を引き抜けば出血多量で死にかねない。ロベルト自身からの電話を受けて現場にやってきたルイサは、この世のものとは思えない夫の悲惨な姿を目の当たりにして気絶してしまう。

猛烈な取材合戦を続けるマスコミ、選挙のことしか頭にない市長、人命より遺跡の保護を優先したい館長らがエゴ剥き出しの狂騒を繰り広げるなか、ロベルトは意外な行動に打って出る。元広告マンの彼は、今やスペインのみならず世界中の注目を集めている自分の莫大な“市場価値”を見極め、この千載一遇の好機にひと儲けしようともくろんだのだ。マネージメント会社からロベルトのもとに派遣されてきた代理人ジョニーは、すぐさまメディア王に連絡を取り、出演料 15 万ユーロのテレビ独占インタビューを持ちかける。さらに狡猾なジョニーは、もしもロベルトが死亡すれば事件の悲劇性がぐっと高まると見込み、出演料を 200 万ユーロに増額するのだった。

やがてドリルやノコギリを用いた荒っぽい救出作戦が失敗し、ロベルトの体調はどんどん悪化していく。大量出血覚悟で鉄筋を引き抜いて手術を行うという一か八かの強硬手段が現実味を帯びるなか、ひたすら夫の無事を祈り続けるルイサは、彼の希望を聞き入れてテレビの取材をセッティングする。現場に駆けつけてきたミュージシャンの息子、大学生の娘にも囲まれ、テレビ・カメラの前で最愛の家族への想いを切々と吐露するロベルト。
はたして彼の“命懸けの金儲け”は成功するのか。そして世界一不幸な“刺さった男”は、かけがえのない幸せを取り戻せすことができるのか……。

スタッフ

監督:アレックス・デ・ラ・イグレシア
脚本:ランディ・フェルドマン
撮影:キコ・デ・ラ・リカ
編集:パブロ・ブランコ

キャスト

ホセ・モタ
サルマ・ハエック
ブランカ・ポルティージョ
フェルナンド・テヘロ
アントニオ・デ・ラ・トーレ

LINK

□公式サイト
□IMDb
□この作品のインタビューを見る
□この作品に関する情報をもっと探す