原題:Enemy

“脳力”が試される、究極の心理ミステリー あなたは、一度で見抜けるか────

2013年/カナダ・スペイン合作/カラー/90分/ 配給:クロックワークス、アルバトロス・フィルム

2014年12月24日よりDVDリリース 2014年7月18日(金)よりTOHOシネマズ シャンテほかロードショー

© 2013 RHOMBUS MEDIA (ENEMY) INC. / ROXBURY PICTURES S.L. / 9232-2437 QUEBEC INC. / MECANISMO FILMS, S.L. / ROXBURY ENEMY S.L. ALL RIGHTS RESERVED.

公開初日 2014/07/18

配給会社名 0033/0012

解説


人間の潜在的な不安や欲望を衝撃的にえぐり出す
世界最高峰のミステリー文学、ついに映画化実現!
 この世には理屈では説明できない摩訶不思議な出来事がある。ごく平凡な歴史教師アダムにとって、それはまさに人生が一変するほどショッキングな瞬間だった。ふとDVDで鑑賞した映画の中に、自分そっくりの風貌をした男の姿がはっきりと映っていたのだ。猛烈な不安に襲われ、何かに取り憑かれたようにアンソニーという売れない俳優の身辺を探り始めたアダムは、彼へのアプローチを試みる。職業や服装の趣味は違えども、あらゆる外見的特徴も声質も酷似しているふたりの男。やがてホテルの一室で対面を果たし、後戻りできない極限状況に陥った彼らは、それぞれの恋人と妻を巻き込みながら、想像を絶する運命をたどっていくのだった……。
 ポルトガルのノーベル賞作家ジョゼ・サラマーゴの同名小説を映画化した『複製された男』は、数多くの映画や小説で扱われてきた“もうひとりの自分”というモチーフを、かつてない独創性と寓意をこめて探求した衝撃的なミステリーである。何もかもが自分と瓜ふたつの人物の存在を知ってしまった男の日常が悪夢に変わり、その影響を受けたもうひとりの男もアイデンティティー喪失の危機に見舞われていく。観る者はそんなカフカ的な不条理が濃密に渦巻くストーリー展開に翻弄されながらも引きずり込まれ、連鎖的にわき起こってくる謎の答えを探さずにいられない。ふたりの主人公、アダムとアンソニーのどちらがオリジナルで、どちらがダブル(複製)なのか。いつから、誰のせいで、何のために、こんな異常な事態が発生したのか?

 登場人物の内なる不安や欲望をじわじわとあぶり出すこのスリリングな問題作は、観る者の好奇心を刺激し、潜在的な意識を激しくかき乱していく。暗示的なセリフやキーアイテムをちりばめた緻密な映像世界の果てに、驚愕のクライマックス、前代未聞のラスト・シーンを目撃したあなたは、いかなる想像力を膨らませてミステリーの真相を導き出すのか。ただし解答はひとつとは限らない。この映画のただならぬ魔力に魅入られた者は、例外なく身近な誰かと議論を交わし合い、もう一度スクリーンと向き合いたい衝動を抑えられなくなるだろう。

今最も注目すべき気鋭監督と実力派俳優が放つ
生々しくリアルで、不条理なまでに謎めいた映像世界

 鋭い文明批評と人間観察眼に根ざしたサラマーゴの傑作小説の映画化を実現させたのは、今最も注目すべき気鋭監督ドゥニ・ヴィルヌーヴである。日本を含む世界各国で大反響を呼び起こした『灼熱の魂』でアカデミー賞®外国語映画賞にノミネートされ、ヒュー・ジャックマンを主演に迎えた『プリズナーズ』でハリウッドに進出。ジェームズ・キャメロン、デヴィッド・クローネンバーグ、アトム・エゴヤンといった革新的な才能を輩出してきたカナダ出身のフィルムメーカーが、リアリスティックな肌触りとシュールな非日常性が入り混じる斬新な世界観を創出した。とりわけ高層マンションが建ち並ぶカナダ・トロントとその近郊の都市風景をアーティスティックなカメラアングルで捉え、原作小説にはない“蜘蛛”のイメージを挿入したヴィジュアル感覚は、全編絶え間なく驚きと深読みを誘ってやまない。
 主人公のアダムとアンソニーをひとり二役で演じきったのは、『ゾディアック』『ブロークバック・マウンテン』のジェイク・ギレンホール。『プリズナーズ』でもコンビを組んだヴィルヌーヴ監督との親密なコラボレーションのもと、ふたつのキャラクターの孤独、混乱、狂気をこのうえなく繊細に表現し、傑出した演技派ぶりを改めて証明した。そしてアダムのセクシーな恋人メアリー役と、アンソニーの身重の妻ヘレン役の魅惑的なキャスティングも見逃せない。『イングロリアス・バスターズ』『グランド・イリュージョン』のフランス人女優メラニー・ロラン、『危険なメソッド』『コズモポリス』のカナダ人女優サラ・ガドンが、眩い美貌、肢体を惜しみなく披露し、女性の官能と聖性を鮮烈に体現している。
 決して共存することのできない“瓜ふたつの男たち”の葛藤と対決を描くこの奥深いミステリーは、不確かな現代社会を生きる観客のアイデンティティーを揺さぶる危うい映画でもある。「あなたの“複製”は、絶対にいないと言い切れますか?」。そんな挑発的な問いかけの答えは、私たち自身に委ねられている。

ストーリー





大学の歴史講師アダム・ベル(ジェイク・ギレンホール)は、何の刺激もない平凡な毎日をリピートするように生きていた。高層マンションの住まいは、アダムの空虚な心を象徴するかのようにがらんどうで、キャリアウーマンの恋人メアリー(メラニー・ロラン)とのセックスだけでつながった関係は終わりに近づいている。我が子の将来を案じた母親(イザベラ・ロッセリーニ)はしょっちゅう電話をかけてくるが、それもアダムの気を滅入らせるだけだった。
 そんなある日、大学の同僚からの勧めで『道は開かれる』という映画をDVDで鑑賞したアダムは、目を疑う場面に出くわした。何とホテルのボーイ役を演じている俳優が、アダム自身にそっくりだったのだ。エンドクレジットを手がかりに特定したその俳優の名前はダニエル・センクレア。いても立ってもいられなくなったアダムは、センクレアが所属するエージェンシーのホームページでフィルモグラフィーを調べ、過去の出演作をDVDで確認する。やはりそこに映っていたのは、アダムとまったく同じ風貌を持つ男だった。
 嫌な焦燥感に駆られてエージェンシーを訪ねたアダムは、彼をセンクレアと勘違いした警備員からセンクレア宛の郵便物を入手する。センクレアの本名はアンソニー・クレア(ジェイク・ギレンホール/二役)で、郊外のマンションに住んでいることが判明する。おそるおそるアンソニーの自宅に電話をかけると、応対した彼の妻ヘレン(サラ・ガドン)はアダムの声質があまりにも夫に似ているため悪戯と思い込んでしまう。二度目の電話でようやくアンソニーと直接話すことができたアダムは、今の自分が直面している不可解な事態を説明し、面会の約束を取りつけようとする。
 アダムからの突然の電話は、アンソニーと妊娠6ヵ月目のヘレンの結婚生活を揺るがしていく。浮気の前歴がある夫への不信を拭えないヘレンは、こっそりアダムの勤務先の大学を訪問。キャンパス内のベンチに座っていたその男は、何もかもがアンソニーに酷似していた。「あなたと同じ声で、瓜ふたつだったわ。どういうことなの?」。愕然とした面持ちで帰宅したヘレンから、責めなじるようにそう問われたアンソニーは動揺を隠せない。
 とある日曜日、ついにアダムとアンソニーは、うらぶれたホテルの一室で対峙した。それぞれ背広、革ジャンパーと着ている服は違うが、顔にたくわえた髭までそっくりのふたりは、まさに鏡写しのよう。かつて事故で負った胸部左の傷痕まで同じだと知り、逃げるようにその場を立ち去ったアダムは、得体の知れない恐怖に打ちひしがれていく。
 お互いの存在を知ってしまったアダムとアンソニーは、もはや後戻り不可能な極限状況に陥っていた。やがて敵意を剥き出しにしてアダムの自宅に乗り込んできたアンソニーは、妻を混乱に巻き込んだ償いとしてメアリーを差し出すよう脅迫。やむなくその理不尽な要求を受け入れたアダムは、アンソニーのマンションでヘレンと対面する。アンソニーに成りすましたアダムと、アダムのように振る舞うアンソニー。その世にも奇怪な入れ替わりの果てには、瓜ふたつの男たちの運命をさらにねじ曲げる驚愕の出来事が待ち受けていた……。

スタッフ

監督:ドゥニ・ビルヌーブ
製作:ニブ・フィッチマン、M・A・ファウラ
製作総指揮:フランソワ・イベルネル、キャメロン・マクラッケン、マーク・スローン、ビクター・ロウイ
原作:ジョゼ・サラマーゴ
脚本:ハビエル・グヨン
撮影:ニコラ・ボルデュク
美術:パトリス・バーメット
衣装:レネー・エイプリル
編集:マシュー・ハンナム
音楽:ダニー・ベンジー、ソーンダー・ジュリアーンズ

キャスト

ジェイク・ギレンホール:アダム/アンソニー
メラニー・ロラン:メアリー
サラ・ガドン:ヘレン
イザベラ・ロッセリーニ:キャロライン
ジョシュ・ピース:学校の先生
ティム・ポスト:管理人
ケダー・ブラウン:警備員
ダリル・ディン:ビデオ屋の店員
ミシャ・ハイステッド:暗室の女性
メーガン・メイン:暗室の女性
アレクシス・ウイガ:暗室の女性

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