2014年/日本/カラー/94分/ 配給:東海テレビ放送

2014年4月26日(土)より、オーディトリウム渋谷、新宿武蔵野館(モーニングショー)ほか全国順次公開

(C)東海テレビ放送

公開初日 2014/04/26

配給会社名 1206

解説


【いきることに つかれたら ねむりにきてください】
旅人は、樹木希林。「自分の身を始末していく感覚で毎日を過ごしている」。本作は、そう語る希林さんの人生はじめての「お伊勢参りドキュメント」。旅は、希林さんの東京渋谷の自宅からはじまります。2013 年、伊勢神宮は二十年にいちどの式年遷宮の年。遷宮とはいうなれば、神様のお引越し。
参宮街道を行き、お白石持行事などの祭事に参加、伊勢神宮の神域をめぐり、広大な神宮林の山に登り、俳句をひねる。女たちが祈る志摩の石神さまも訪ねます。希林さんには会いたいひとがいました。歌人の岡野弘彦さんです。戦争と震災と神宮…。89歳のいまも未来に何かをつたえようとしている岡野さんのお話に、希林さんは何を感じたのでしょう。
生きることについて、いのちについて、家族について、それからやっぱり、愛について想いをはせる。そんなお伊勢参り。この旅の映画化について、「生きることに疲れたら、どう
ぞ眠りに(映画館に)来てください。」と希林さんは話しています。あなたもどうか、ゆるりごいっしょください。

ストーリー


女優・樹木希林 70 歳。日々の生活を“自分の身を始末していく感覚で”おくっているという彼女が、20 年に一度の式年遷宮を行う三重県の伊勢神宮へ、初めて参拝の旅に出る。
2013 年 7 月、式年遷宮を 3 か月後に控えた緑深まるお伊勢さんを希林さんが訪ねた。門前町には、芭蕉の句「尊さに みな おしあいぬ 御遷宮」と彫られた石碑。すでに建て替えは少しずつ始まっており、真新しい白木の鳥居や燈籠が所々にある。御垣の向こうでは、御神体がお遷りになる真っ白な新正宮が造営中だ。一方、苔むした荘厳な佇まいの旧正宮の門の前には白い御幌が下ろされ、その向こうに御神体が奉られていることを示していた。遷宮後は解体され、部材は全国各地の神社へ振り分けられる。
お伊勢さんは感謝をするところ。個人的なお願い事はそっと胸に仕舞っておく。

鉄道がない時代には、船で伊勢湾を渡り、お伊勢さんに参る旅人もいた。これを船参宮という。昔ながらの木造の参宮船には今でも乗ることができ、船参宮の途中に希林さんの気まぐれで立ち寄った二軒茶屋は、当時の参拝ルートの一つ。その名も二軒茶屋餅が名物で、希林さんも早速餅屋へ。餅屋のご主人は、今まで何度も友人や客を案内してお伊勢さんを回ってきたなかで、長い参道を進むとき、橋の床を踏む音、玉砂利を踏みしめる音が人々の心を鎮めている様子を間近に見てきたと語る。

伊勢の南、鳥羽市国崎町。大昔からこの海のアワビがお伊勢さんにお供えされてきた。海女さんは 70 歳を超えても現役のお婆さんたち。79歳の太田伊千代さんは「家で休んでいる方が楽やけど、これの楽しみはまた違うわな、磯の楽しみは」とほほ笑む。伊千代さんはたくさん作ったおはぎを自宅の神棚と浜辺の波打ち際にお供えする。そして海に向かって静かに手を合わせる。
国崎の隣町にある神明神社の中にある小さな社・石神さんは地元海女さんの守り神だ。女の願い事なら一つだけ叶えてくれるということで知られ、各地から女性たちが集うようになった。
ここでも希林さんはお願い事は遠慮して、他の人に譲ることにした。

式年遷宮ではすべてのお社を建て替えるので、たくさんのヒノキが必要だ。その初め 1 本が2005 年 6 月、御杣始祭に於いて木曽の山で切り倒された。式年遷宮のためのヒノキは 400 年前からほとんどがここ木曽で切り出されている。
長野県上松町の𠮷川正樹さん 47 歳は代々続く木曽の木こり。先の御杣始祭でもはじめの一本を切り倒すという大役を果たした。前々回、つまり 1965 年から使われている、一族に受け継がれてきた斧だ。40 年前の御杣始祭では大叔父が握っていた。ヒノキを切り倒す正樹さんのヘルメットの天辺には「ありがとうございます」と書かれたステッカー。お天道様に向けてのメッセージだ。

お伊勢さんを囲む緑の森は神宮林(神宮宮域林)という。伊勢市全体の 4 分の 1 という広さ。
案内されて森に入ってみると、希林さんを出迎えたのは山に植えられて 4 年目の可愛らしい小さなヒノキだった。鎌倉中期までは遷宮のためのヒノキはこの森から切り出されていた。しかし江戸時代になりお伊勢さんへの参拝者が全国から集まるようになると、薪や炭のために切り出されるヒノキの量が増え、ついに森は悲鳴を上げた。森再生の取り組み「神宮森林経営計画」は、大正12年、今から 90 年前に始まる。毎年2 万本ずつ植林して、いずれは遷宮のヒノキをすべて賄う計画だ。今回の遷宮でようやく、伊勢のヒノキも使われるようになった。しかし森が元通りになるのは、まだ 100 年も先だという。

神宮林をさらに奥へ。岩肌の山を登ると、眼下に広がるのは太古を思わせる深い森。まるで天照大神に照らされているような景色。森に生えるヤブニッケイをもんで嗅いだ希林さんが一句。
「やぶ役者 ヤブニッケイと 伊勢参り、ってのはどう?」

お伊勢さんに繋がる五十鈴川を渡って、御正殿の周りに敷き詰める石を地元の人々が運ぶ、20年に一度のお白石持行事。地元の人々が木遣り歌とともに川を進む。神様が住まうことになる新しいお社を人々が間近に見ることができるのは、御白石を敷き詰めるときだけ。一人が一つ、お白石を手に取り、丁寧に置いていく。

お伊勢さんに奉納する稲を育てる神宮神田の稲穂も黄金に染まり、こうべを垂れる季節になった。この 2 か月間、希林さんは神様のこと、この時代のこと、いろいろと思いを巡らせていた。そんなとき、お伊勢さんに奉げられた 68 年前の和歌に出会った。

スタッフ

監督:伏原健之
プロデューサー:阿武野勝彦
撮影:中根芳樹、谷口たつみ
編集:奥田繁
音楽:村井秀清
音楽プロデューサー:岡田こずえ

キャスト

樹木希林

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