モーニングセット、牛乳、春

主人公の一郎を演じるのは、今なお新しい役柄に挑戦し続けている平田満。人生の中盤にさしかかり、忘れかけていた情熱にもう一度手を伸ばそうともがく中年男の悲哀を見事に演じ切っている。相対するヒロイン・春には、多数の候補者の中からオーディションで選ばれた期待の新人女優・水本佳奈子。みずみずしい生命力にあふれた彼女は、名ベテラン俳優との絶妙なコントラストによって、作品の中でよりいっそうのきらめきを放っている。脇を固める出演者に、「雷魚」の伊藤猛、「バトル・ロワイヤルⅡ」の石井明日香、「すんドめ」の入江麻友子、「闇金ウシジマくん」の吉岡睦雄など、実力派キャストが多く顔を揃えた。監督は、サトウトシキ。かつて瀬々敬久、佐野和宏、佐藤寿保らとともに「ピンク四天王」と呼ばれた鬼才だが、現在は『愛妻日記』『ちゃんこ』『ジャイブ 海風に吹かれて』など、一般映画の世界に活躍の場を移し、映画ファンから絶大なる支持を受けている。気鋭の脚本家・竹浪春花とは、『花つみ』『イチジクコバチ』『青二才』に続いて４度目のタッグとなる。二人の息の合ったコンビネーションと化学反応によって、禁断の秘密をめぐる青春の哀しみ、中年男の愛と切なさを無駄のない抑制された演出で描いている。