原題:Japan's Tragedy

釜山国際映画祭2012A Window on Asian Cinema部門ワールドプレミア

2012年/日本/カラー・B&W/35㎜(DTS)/DCP(5.1ch)/101分 配給:太秦 配給協力:一般社団法人コミュニティシネマセンター

2013年8月31日(土)よりユーロスペース、新宿武蔵野館ほか全国順次ロードショー!

(c) 2012 MONKEY TOWN PRODUCTIONS

公開初日 2013/08/31

配給会社名 0864

解説


ひとつ屋根の下、つつましく暮らす父と息子。
終わりがくると知った日、父は息子に何を残そうとしたのか。
大病を患い余命幾ばくもないことを知った父親は、病院から帰った翌日、自室を封鎖し食事も水も摂ることをやめる。そんな父親の狂気に混乱し、怒り、悲しみ、呆然とする息子。妻と子に去られた失業中の息子は、未だ生活を立て直せず、父親の年金を頼りに暮らしていた。そんな息子を残し、扉を固く閉じた父親の真意とは……。

日本中を騒然とさせた無縁社会が生む現実
イラクで起こった日本人人質事件を題材に製作され賛否両論を巻き起こした問題作『バッシング』、老人と孫娘の寄る辺なき旅と家族の絆の脆さを描き、現代の日本にのしかかる高齢化問題を浮かび上がらせた『春との旅』。
常に現代の日本を真正面から見据える大胆なテーマに挑んできた映画作家・小林政広が14作目の最新作『日本の悲劇』では、ある家族の崩壊をとおして日本が陥っている「無縁社会の深淵」を描いていく。
年間自殺者27,766人(2012年)、非正規雇用率50パーセント以上(正社員に対して)、最近では「無縁死」「就活自殺」という新たな死が報じられ、うつ病患者数100万人を越えているといわれる現代の日本。復興が進まない東日本大震災の処理、年金不正受給など、かつて誰もが体験したことがない未曽有の閉塞感と孤立感に覆われた日本の現実を正視した作品、それが『日本の悲劇』だ。
「悲劇」の象徴として本作のモティーフになったのが高齢者所在不明問題とそこから派生した「年金不正受給事件」だ。父親の年金が生活のよりどころだった長女が父親の死後も死を隠し続け、年金や給付金を不正に受け取っていたという東京荒川区で起こった事件が報じられたのは2010年7月。この事件を知り衝撃を受けた小林監督は、遺書を書くような気持ちで『日本の悲劇』第一稿を書き、東日本大震災の直後から、改稿を繰り返した。そして『春との旅』の仲代達矢の出演快諾を得て再タッグが組まれ、映画を完成させた。
外部との接点をなくした極限状態の家族が、その果てに選ばざるを得なかった究極の愛の形——。本作は誰の身にも起こりうる私たち家族の物語といえるだろう。

日本最高峰の俳優・仲代達矢×新境地を切り開いた・北村一輝
見る者を圧倒する魂のぶつかり合い!
出演者は父親・不二男に仲代達矢、息子・義男に北村一輝、別れた妻・とも子に寺島しのぶ、不二男の妻・良子に大森暁美の四人。
最大の見どころは、父親の決断を阻止しようとする息子と餓死しようとする父親の扉越しの攻防戦だ。まるで舞台のふたり芝居のように仲代と北村が愛憎をぶつける激しい演技の応酬を披露する。圧倒的な存在感で憂いをたたえた平凡な父親を演じる仲代と、どうしようもない感情を剥き出しに泣き叫ぶ北村の熱演は胸に突き刺さる。世代を代表する俳優の魂のせめぎ合いは、ただただ見事というほかない。

世界が注目する小林政広、孤高の渾身作
小林監督の過去の作品の殆どがオリジナル脚本であったように本作もその例外というのみならず、自らプロデュースも担い「日本の現在」に問題提起を行っている。その波紋は世界に広がり、既に韓国釜山国際映画祭を皮切りにインド、スイス、スェーデン、ノルウェー、フランス、イタリア、アルゼンチン、そしてオランダのロッテルダム国際映画祭など世界各国で今も上映され続けている。

ストーリー








2011 年10 月。東京葛飾区金町の木造平屋の古い村井家に、息子義男に付き添われた不二男が帰って来る。
3 月11 日の東日本大震災の日に不二男は入院、肺ガンの診断を受け一度の手術を経験した。
不二男が医師の制止も聞かず退院したのは、二度目の手術を告げられたからだった。医師は不二男に手術をしなければ、三ヶ月の命だと宣告した。にもかかわらず不二男は勝手に退院してしまった。その日は不二男の妻良子の命日だった。
勝手に退院した不二男に義男は病院に戻るよう懇願するが、不二男は耳を貸さない。義男は突然職を失ったことでうつ病を患い、妻と子とも別れ、父親の年金を頼りに無為無職の日々を過ごしていた。
不二男は帰宅した翌日、大工だった頃の商売道具を使い、自室のドアや窓にクギを打ち、自分はミイラになると宣言し、良子の遺影に向かい正座した。義男は懸命にやめるよう説得するが不二男は聞く耳を持たない。一日が明け、また一日が明けてゆく。
不二男の脳裏には過去の様々な光景が浮かんでは消えていった。それはまだ義男が精神を病むまえ、妻のとも子とのあいだにできた赤ん坊を交えた平凡だが幸せな日々の光景だった。不二男はなぜ閉じこもってしまったのか? 日本の悲劇とは何か? 胸に刺さるドラマの終焉が待っている。

スタッフ

脚本、監督:小林政広
製作:小林直子 
プロデューサー:小林政広 
撮影:大木スミオ
照明:祷 宮信 
録音:福田 伸 
美術:山? 輝 
編集:金子尚樹 
助監督:石田和彦
衣裳:宮田弘子 
ヘアメイク:星よしみ 
装飾:及川幸恵 
小道具:佐藤 希 
大道具:手塚常光/村尾圭太 
建具:阿久津正巳 
造園:渡辺 篤 
スチール、タイトル:小林直子 
子役:羽鳥颯馬
協力:無名塾、仕事、フロム・ファースト、フレンドスリー、アプティパ
製作:モンキータウンプロダクション
助成:文化芸術振興費補助金

配給:太秦 
配給協力:一般社団法人コミュニティシネマセンター

キャスト

仲代達矢
北村一輝
寺島しのぶ
大森暁美

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