桃（タオ）さんのしあわせ

いつも、あなたがいてくれた…。
実話から生まれた、ささやかだけど、大きな愛に包まれた物語。
60年間、同じ家族に仕えてきたメイドの桃さんが、ある日脳卒中で倒れた。
日々の暮らしの中で、最低限の言葉しか交わさず、ごく当たり前に身の回りの世話を任せていた雇い主の息子、映画プロデューサーとして働くロジャーは、その時初めて、桃さんがかけがえのない人だったことに気づき、多忙な仕事の合間を縫い、介護に奔走することになる。
迷惑をかけまいとする、穏やかだが芯の強い桃さん、
老人を巡る社会環境の現実を目の当たりにしながらも、献身的に尽くすロジャー、
ふたりは、やがて母と息子以上の絆で結ばれていくが…。
本作のプロデューサーでもある、ロジャー・リーの実体験を元にした感動のストーリーが、
実話の持つリアリティと説得力で、単なる美談を超えて、観る者の心に明かりを灯します。

アジア各国で大ヒット！
幸せに逝くために、悔いなくるために、
桃さんが教えてくれた、いちばん大切なこと。
今春、中国、香港、台湾で公開されて以来、15億円以上の興収を上げ、非アクション映画としては異例の大ヒットとなった本作。そのヒットの要因は、誰にでも訪れる“老い”の現実を、やさしく、温かく描いたことにある、と言われています。
人生の終い支度の季節を迎えたとき、そばに誰かがいてくれることの幸福、いつの世にも変わらない人と人との絆の尊さが、シンプルに、ストレートに、伝わったからに他なりません。
また、公開後、中国ではネット上に「分かってるよ！いちいちうるさいな！」などの “両親に言ってはいけない9つの言葉”を紹介した匿名の書き込みが出現、ニュースで取り上げられる大きな反響を呼びました。その背景は、本作を観て親孝行の大切さに気づいた若者が反省したのでは、と分析されたほど。中高年齢層に限らず、あらゆる世代に愛された作品と言えましょう。

ヴェネチアを皮切りに、映画賞を席捲！
大スターと、往年の名女優、アジアを代表する女性監督の奇跡のコラボ。
本作を真っ先に評価したのは、昨年9月のイタリア・ヴェネチア国際映画祭。10年ぶりの銀幕復帰となった、桃さん役の名女優ディニー・イップの主演女優賞受賞のニュースが、世界に配信されました。それを皮切りに、台湾金馬奨で主要3部門、香港金像奨では最多主要5部門を総なめ。今なお各国の映画祭に招聘され続けています。
監督は、アジアを代表する女性監督アン・ホイ(『女人、四十。』)。普遍的なテーマを、細やかな演出で、時にユーモアを交えながら美しく描きます。
ロジャー役には、本作の企画に賛同し、共同プロデューサーにも名を連ね、ノーギャラで出演したアジアの大スター、アンディ・ラウ。50歳を過ぎた市井の独身男役で、新境地を開拓しているのも話題です。ツイ・ハーク、サモ・ハン、アンソニー・ウォン等、香港映画人が、本人役で大挙出演しているのも、見どころのひとつ。