どん底から這い上がり、夢を持って未来を生きようとする人へのメッセージを込める

2012年/日本/カラー/84分/ 配給:ミロク革命社

2015年10月02日よりDVDリリース 2013年10月26日よりジャック&ベティにて6ヶ月ロングラン上映

© 2013 MIROKU All Rights Reserved.

公開初日 2013/10/26

配給会社名 1421

解説


昭和文学稲垣足穂作品初の映画化

『弥勒』は、林海象監督が2002 年に、稲垣足穂氏のご遺族に映画化の許可願いの手紙を書くところから暖めてきた企画。立命館大学在学時に家出ྣ然に京都を出て東京に向かい、寺山修二氏の天井桟敷に加わるも、どん底の極貧生活に陥り、餓死寸前の状態から、デビュー作『夢見るように眠りたい』を発表するまで這い上がった過去を持つ監督自身が、極貧の中、原稿用紙に向かう稲垣足穂の自伝的小説『弥勒』に想いを重ね􀾜わせ、脚本も自ら書き下ろして準備。東日本大震災や原発事故、世界的な経済の行き詰まりなど苦しい社会情勢の中、精神的にも実際的にもどん底にいる人々に向けた這い上がるためのメッセージを、叙情的な作品の中に織り込みます。

「夢を持って未来を生きようとしている少年少女、そして大人たちにこの映画を捧げたい」とは、林海象監督の言。

また、主人公の少年時代を含め、少年の役を全て女性が演じ、またྣ学科伊藤高志教授による実験映像を劇映画中に挟み込んで、叙情的で哲学的な稲垣足穂の世界に迫るのも特徴のひとつ。
キャストは、主人公江美留役を永瀬正敏氏、実在の画家津田季穂氏がモデルといわれる「放浪画家T」を佐野史郎氏、極貧の主人公に「お前の目指す人間とは何か?」と迫る鬼の役を井浦新氏が務め、その他志賀勝氏、福本清三氏、近衛はな氏らプロの俳優とともに、主人公の少年時代の役を映画俳優コース3回生の土村芳(つちむら・かほ)が務めるほか、友人役など6􀾡の学生が抜擢されました。

京都造形芸術大学映画学科(学科長林海象)は、第一線の映画人が集う自由で活気のある「撮影所」を学内に設けることで、学生に熱い生の学びの場を提供し、後に「北白川派」と呼ばれるような運動にまで発展することを志しており、学生とプロが一緒に劇場公開映画を撮影する企画を「北白川派」と􀾡づけて取り組んでいます。2008 年に撮影された故木村威夫監督による『黄金花』を第1作目に、2009 年に高橋伴明監督(教授)による『MADE IN JAPAN〜こらッ!〜』、2011 年に山本起也監督(准教授)による『カミハテ商店』と撮影し、今回の撮影は北白川派第4 作目。ྣ学科の高橋伴明教授(プロデューサー)、山本起也准教授(ラインプロデューサー)、嵩村裕司准教授(装飾)、浦田和治客員教授(録音)、伊藤高志教授(実験映像)、水上竜士准教授(俳優)ら各部門の現役プロフェッショナルの元、約60名)の学生がスタッフあるいは出演者として参加します。公開は2013 年夏を予定しています。

林海象監督は、1957 年京都市生まれ(55 歳)。1985 年に製作・脚本・監督をてがけたモノクロ・無声映画『夢みるように眠りたい』で映画監督デビューし、国内外でグランプリ受賞。『我が人生最悪の時』『遥かな時代の階段を』『罠』の『私立探偵濱マイク』シリーズを生み、探偵ブームを巻き起こしました。2010 年、NHKドラマ『大阪ラブ&ソウルこの国で生きること』の脚本を手がけ、ྣ作の制作スタッフが「放送人グランプリ2011」のグランプリを受賞しました。

ストーリー








「第一部・真鍮の砲弾」

ある夜、停電した部屋のベッドから天井を見つめる少年・江美留は、闇の中からゆっくりと現れる光を目撃する。やがてその光が満点の星空となっていく幻想を体験する。
翌朝、薄暗い部屋の中で目覚めた江美留は、雨戸の小さな穴から差し込んだ光に乗って侵入した外の風景が、上下逆さまとなって壁に映し出されていることに気づく􄠄ピンホールレンズの原理䠋。江美留が見た壁の映像は、家の外の『最終の都市』の風景。少年が雨戸を開けると、大量に差し込んだ光とともに壁の映像は消失し、代わりに都市の実景が前方に広がる。
時は進み、以前目撃した『最終の都市』の屋上に江美留はいて、ひとりの少女と空中世界について話をしている。少女、空中都市の響きに興奮する。
一方、江美留は、学校の友人たちとの会話のなかで刺激的な感覚を覚える。
友人Iが江美留の前で「六月の夜の都会の空」と黒板に書く。その言葉が掻き立てるイメージが、江美留には、空中世界のイメージとつながって興味をそそる。友人Nは黒板を使い江美留に宇宙について講義をおこなっている。その内容は江美留には理解できないが、ただ、彼にはNの話が素敵なことに聞こえて仕方がない。
友人Fには暗い過去があった。Fは友人Hが自殺しようとしていたことを知っていながら止めず、結果的にHは自殺してしまったのだ。そんなFと一緒に公園にいる江美留は、自分が自叙伝を書いていることを彼に賞賛され、さらにFが読み上げた『ショーペンハウエル随想録』の一節に惹かれる。
江美留は瞳を輝かせながら、小説『ポン彗星から来た夢』を書き始める。

「第二部・墓畔の館」

文学に夢を抱いたときから十数年たち、江美留も成長し大きくなっている。だが現状は、売れない極貧作家で、部屋の中のものを質屋に出してはコップ酒に変える堕落した生活を送っている。
そんな江美留はある日、窓ガラスに映る鬼の姿を目撃する。鬼、怯える江美留に執拗に話しかけながら、最後に「お前の目指す人間とは何か?」と問う。ついには、飢えのあまり江美留自身が薄汚い鬼の相貌となり、周囲からも敬遠される。
それでも、精神だけは強くあらねばと言い聞かせる江美留。そんな折、彼は部屋のなかで、言海に挟まれた半跏思惟像「弥勒」の写真を見つける。そして・・

スタッフ

原作:稲垣足穂「彌勒」
製作:株式会社北白川派  
プロデューサー:高橋伴明
脚本・監督:林 海象  
特殊視覚効果:伊藤高志
撮影監督:長田勇市(JSC)  
撮影:藤本啓太 
音楽:渡邊 崇  
編集:鈴木 歓
美術監督:竹内公一(A.P.D.J)  
美術助手:大須賀文香、堀 千夏  
装飾:嵩村裕司(A.P.D.J)
特殊メイク・造形:宗理起也  
衣装:辻野孝明  
衣裳助手:金 紗耶  
メイク:小沼みどり
録音:浦田和治  
録音助手:倉貫雅矢  
音響効果:帆苅幸雄
監督補:北浦寛之  
助監督:関谷 崇  
監督助手:坂野達哉  
制作:山内源太
ポスターデザイン:大月雄二郎
宣伝サポート: 河村充倫 / theatre tokyo (シアタートーキョー有限責任事業組合)

キャスト

青年・江美留/永瀬正敏
少年・江美留/土村 芳
老天文学士/四谷シモン
放浪画家T/佐野史郎
大工/志賀 勝
質屋/福本清三
女/近衛はな
鬼/井浦 新
教頭先生/水上竜士
ポン彗星/古元美千子
江美留の友人I/中里宏美
江美留の友人N/土居志央梨
江美留の友人F/水本佳奈子
江美留の友人H/大西礼芳
少女/原田衣織
Hの母親/仙洞田志織

LINK

□公式サイト
□この作品のインタビューを見る
□この作品に関する情報をもっと探す