原題:Faust

第68回ヴェネチア国際映画祭 グランプリ<金獅子賞>受賞! 第16回 サテライト賞 外国映画賞・撮影賞・美術賞・衣裳デザイン賞ノミネート 第55回 ロンドン映画祭 美術監督賞ノミネート 第49回 ヒホン国際映画祭 美術監督賞受賞 第36回 トロント国際映画祭 正式出品

2011/ロシア/ドイツ語/140分/ヴィスタ/日本語字幕:吉川美奈子 配給:セテラ・インターナショナル 宣伝:テレザ+グアパ・グアポ

2012年6月2日(土) シネスイッチ銀座 ほか全国順次公開

© 2011 Proline-Film,Stiftung für Film-und Medienförderung, St.Petersburg,Filmförderung, Russland Alle Rechte sind geschützt

公開初日 2012/06/02

配給会社名 0117

解説


第68回ヴェネチア国際映画祭グランプリ<金獅子賞>受賞!
ミステリアスで壮大な不朽の名作を圧倒的な映像美で映画化生きる意味を探していたファウストに舞い降りた、甘い誘惑と愛をめぐる物語
 かつてドイツに実在したといわれている魔術師ファウスト伝説をもとに、文豪ゲーテが生涯をかけて残した不朽の名作「ファウスト」。人間と悪魔が繰り広げる、人生のロマンと愛をめぐるミステリアスで壮大な物語は、文学や演劇だけでなく、音楽、漫画、そして映画など、時代とともに姿を変え世界中の人々を魅了しつづけてきた。そして21世紀の今、ロシア映画界が誇る巨匠アレクサンドル・ソクーロフ監督が、この魅惑的な物語を、斬新な演出と軽妙な台詞、圧倒的な映像美で映画化。第68回ヴェネチア国際映画祭では、審査員の満場一致でグランプリ〈金獅子賞〉を獲得。審査委員長のダーレン・アロノフスキーが、「観た人を永遠に変えてしまう映画がある。この映画がまさにそうだ。」と授賞式の際にコメントしたほど、ソクーロフ監督が描いた現代の『ファウスト』は新たな伝説誕生の予感を秘めて、未来への1ページを開く──。
 本作『ファウスト』の舞台は、神秘的な森に囲まれた19世紀のドイツの町。あらゆる地上の学問を探求したファウスト博士は、研究をつづけるために悪魔と噂される高利貸マウリツィウスのもとを訪れる。金は貸さないが、生きる意味を教えようと囁くマウリツィウスに誘われたファウストは、純真無垢なマルガレーテと出会う。マルガレーテの美しさに一目で心奪われたファウスト。彼女の愛と引き換えに自らの魂をマウリツィウスに差し出す契約を結ぶ……。 理想を追いながらも人生にむなしさを感じるファウスト。お金と誘惑で人の弱さにつけこむマウリツィウス。マルガレ—テの無垢な美と愛。生と死の狭間を漂い、運命に翻弄される3人の人生ドラマは、私たち自身に“生きる”ことを真摯に見つめさせ、私たちひとりひとりの覚悟と行動へと導いていく。
 主人公ファウストを迫真の存在感で演じるのは、ドイツが誇る人気俳優ヨハネス・ツァイラー。アントン・アダシンスキーは、ダンサーである身体を生かしてエネルギー溢れるマウリツィウスを演じる。二人の駆け引きが、時に笑いを誘いながら、エンドロールまで物語の世界へと引き込んでいく。そして、まるでフェルメールの名画のように美しく輝くマルガレーテ役のイゾルダ・ディシャウク。初めて抱いた恋心を貫こうとする純真さが甘美な切なさを誘う。 『太陽』『エルミタージュ幻想』など日本国内のみならず世界中で高く評価されてきた巨匠アレクサンドル・ソクーロフ。監督念願の企画であった「ファウスト」を、今回力強くファンタジックな映像で魅せるのは『アメリ』の撮影監督ブリュノ・デルボネル。『エルミタージュ幻想』で美術を担当したエレーナ・ジューコワと衣装デザインのリディヤ・クリューコワがバロックのような荘厳さで美しさを際立たせ、アンドレイ・シグレの重厚な音楽が神秘さを纏わせる。魅惑的な映像と巧みな誘惑に導かれ、観る者の心を虜にして離さない永遠の傑作が誕生した。

ストーリー




19世紀初頭、神秘的な森に囲まれたドイツの町。高名な学者のファウスト博士は、助手のワーグナーとともに研究室で“魂”の存在を探していた。人体のどこにも“魂”を見つけることができないと嘆くファウストに、ワーグナーは「魂の正体を知っているのは神と悪魔だけです」と囁く。ファウストは神など存在しないと言い放つが、「悪魔は金のあるところにいて、広場の近くに住んでいる男が悪魔と噂されている」とワーグナーは言う。
 研究費も底をつき、まともな食事もできないファウストは、父親を頼って診療所へ赴く。貧しい患者たちを黙々と診察しつづける父に、ファウストは「すべてを学んで研究につぎ込んだが、人生がむなしい」と打ち明ける。しかし父は、「金を貸すことはできない、ましてや生きる意味など教えられない」と彼を追い返すのだった。
 町をさまようファウストは、いつしか悪魔と噂される高利貸の家へ。そこは神父さえも出入りしているようだった。高利貸はマウリツィウス・ミュラーと名のり、部屋は町の人たちが持ち込んだ担保の品々で溢れている。ファウストが指輪を担保に金を借りたいと申し出ると、男は「価値があるのは金ではなく、時と芸術。金は貸さないが、別の形でなら力になろう」と提案する。しかし、借金を断られたと思ったファウストは耳を貸さず男の家をあとにする。

 ファウストが家にもどると、ワーグナーが小瓶をもってやって来た。毒を手に入れるように助手に頼んでいたのだ。そこへ、正装したマウリツィウスが訪ねてくる。彼は部屋にあった毒の小瓶を見つけ飲み干してしまうが、なぜか毒の効果は現れない。人間ばなれしたマウリツィウスに興味をおぼえたファウストは、「知らないことを教えてやろう」と唆されてマウリツィウスとともにふたたび町へ出かけて行く。
ファウストが連れて来られたのは、女たちが集う洗濯場。奇妙な振る舞いのマウリツィウスを見て大騒ぎする女たち中で、ファウストはひと際輝くマルガレーテを見つける。一目でその美しさに心奪われたファウスト。家までお送りしようと彼女に申し出るが、すぐに断られてしまう。
つぎに訪れた地下酒場では、兵士たちが終戦を祝って陽気に歌い飲み明かしていた。マウリツィウスは、兵士のひとりであるバレンティンにわざと酒をかけて騒ぎを起すと、魔法を使って壁からワインを噴出させる。その騒動にまぎれ、マウリツィウスにフォークを握らされたファウストは、バレンティンを誤って刺し殺してしまう。その男が実はマルガレーテの兄だと知らないファウストは、マウリツィウスに連れられてその場を逃げだす。

罪の意識に苛まれるファウスト。死んだ男の家族に償いをしたいとマウリツィウスに頼むが、自分の殺した男が愛しいマルガレーテの兄であることを知り、愕然とする。兄の葬儀の日、ファウストはマルガレーテに近づくため、黒衣に身をつつんだ人々の群れにまぎれ参列する。ファウストは彼女を慰めながら束の間の逢瀬を楽しむが、二人きりのところを母親に見つかり、マルガレーテは母に「恥知らず」と激しく怒られる。
 気持ちが安らがないマルガレーテは、葬儀から帰ると教会へ向った。母への愛について悩み神に懺悔をしていると、そこにファウストが現れ「母を愛せなくても、愛は強制ではない」と優しく語る。その言葉に励まされたマルガレーテは、彼に心を開き大切な兄の形見をみせるのだった。
しかし、マルガレーテが家に帰ると、兄を殺した犯人はファウストだと告げられる。ショックを受けた彼女は、家を飛び出しファウストのもとへと急ぐ。ためらいながらも兄を殺したのかと問うマルガレーテに、ファウストはもはやなすすべもなく事実を認めるしかなかった。

 マルガレーテにすべてを知られ、それでも彼女への想いを断ち切れないファウストは、ふたたびマウリツィウスのもとを訪れる。一晩だけでもマルガレーテとともに過ごしたいと懇願するファウストに、マウリツィウスが一枚の紙を差し出す。それは、魂と引き換えに、その望みを叶えるという契約書。ファウストは、ためらうことなく悪魔の差し出した契約書に自らの血で署名をする…。

スタッフ

監督:アレクサンドル・ソクーロフ
原案:ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテ「ファウスト」
台本:ユーリー・アラボフ
脚本:アレクサンドル・ソクーロフ、マリーナ・コレノワ
撮影:ブリュノ・デルボネル 
美術:エレーナ・ジューコワ
衣裳:リディヤ・クリューコワ
プロデューサー・音楽:アンドレイ・シグレ

キャスト

ヨハネス・ツァイラー
アントン・アダシンスキー
イゾルデ・ディシャウク
ゲオルク・フリードリヒ
ハンナ・シグラ

LINK

□公式サイト
□IMDb
□この作品のインタビューを見る
□この作品に関する情報をもっと探す
http://youtu.be/kmBleOLXVsE
ご覧になるには Media Player が必要となります