原題:Route Irish

世界で最も危険な道路(ルート)

第63回カンヌ国際映画祭 コンペティション出品作品

2010年/イギリス・フランス・ベルギー・イタリア・スペイン合作/英語/109分/カラー/ 配給:ロングライド

2012年3月31日(土)より、銀座テアトルシネマほか 全国ロードショー

(C) Sixteen Films Ltd, Why Not Productions S.A., Wild Bunch S.A.,France 2 Cinéma, Urania Pictures, Les Films du Fleuve,Tornasol Films S.A, Alta Producción S.L.U.MMX

公開初日 2012/03/31

配給会社名 0389

解説


現代の名匠ケン・ローチ監督が男たちの感動的な友情を描きだした最新作
 『麦の穂をゆらす風』でカンヌ映画祭パルムドール(大賞)に輝き、その後も『この自由な世界で』、『エリックを探して』と、着実に新作を撮り続け、世界の映画界から絶賛されてきたイギリスの名匠、ケン・ローチ監督。最新作『ルート・アイリッシュ』は幼なじみとして育ちながらも、イラク戦争で謎の死を遂げた友人の死の真相を探る男の物語で、いつもながら誠実で骨太のドラマ作りが熱い感動を呼ぶ。

主人公ファーガスと友人フランキーは兄弟同然に育ち、成長後は兵士としてイラク戦争に参加する。ファーガスはひと足先に故郷リヴァプールに戻るが、イラクに残ったフランキーは、戦場で帰らぬ人となる。彼が亡くなった場所はルート・アイリッシュ。それはイラクのバグダッド空港と市内の米軍管轄区域グリーンゾーンを結ぶ12キロに及ぶ道路のことで、03年の米軍によるイラク侵攻後、テロ攻撃の第一目的とされる“世界一、危険な道路”として知られていた。フランキーの死後、ある携帯電話に残されたイラクでの映像を手がかりにファーガスは彼の死を探り始め、やがて、戦争を背景にした軍事ビジネスの恐るべき真実が浮かび上がる……。

「イラクで起こったことは、私と脚本家と製作者が長い間、描きたいと思っていたことだった。あの戦争はイラクの人々に対する大きな犯罪で、たくさんの不正もあった。私たちは戦争中にあった様々な出来事をほのめかすような物語とキャラクターを見つけることだった」と語るローチ。彼の映画には珍しくスリラーやアクション映画の要素も盛り込み、新境地ともいえるスリリングな謎解きのドラマが展開する。

イラク戦争に参加したコントラクター(民間兵)の知られざる真実に迫る
ポール・ラヴァーティのリアルな脚本
 今回の映画の脚本を手がけているのは、ローチ監督の創造上のパートナーともいえるポール・ラヴァーティで、これまで『SWEETSIXTEEN』,『麦の穂をゆらす風』等にも参加し、ローチ映画の世界観を作り上げるのに欠かせない存在となっている。今回の映画作りにあたってラヴァーティはイラク戦争に参加した多くの兵士にインタビューを重ねた後、ファーガスというキャラクターを生み出した。ファーガスは戦場で亡くなったフランキーよりタフな人物だが、物語の進展と共に心に深い闇を抱え、戦争の痛みを引きずっていることが分かる。

「イラクで兵士たちの面倒をみていた看護師に会ったが、彼女の話によれば多くの兵士が『昔の自分を取り戻したい』と語っていた。その話を聞いて、イラクを引きずったまま、英国に帰るキャラクターを思いついた」とラヴァーティは語る。これまでローチ映画では社会の底辺で生きる人々の複雑な問題点や矛盾が描かれてきたが、今回の新作では戦争の後遺症を抱えながらも、故郷で日常生活を送ろうとする人物たちの深い喪失感に迫ろうする。また、イラク戦争中に約16万人いたといわれるコントラクター(民間兵)の真実を本格的に描いた初めての映画でもある。危険な任務に身をさらすことで大きな報酬を得ていた彼らの真実の姿を名脚本家ラヴァーティが大胆な語り口で見せてくれる。

ケン・ローチが絶賛する新人俳優たちによる心をゆさぶられる愛の物語
 「ルート・アイリッシュ」はイラクで夫を失った妻と夫の友人、戦争の痛みを分かち合う男と女の愛の物語でもある。友人フランキーの死に不信感を抱くファーガスは、その死の真相を探っていく。そんな彼の追いつめられた心を誰よりも深く理解したのが、残されたフランキーの美しい妻、レイチェルである。ふたりは男と女としても強く惹かれあいながらも、やがては異なる道を選択することになる……。

タフな肉体と繊細な心を同時に持つファーガス役を強烈な存在感で演じているのは、テレビドラマで活躍しながらも、今回、この映画で初デビューを飾ったマーク・ウォーマック。また、真の強さを持つレイチェル役を同じくテレビ出身の新人アンドレア・ロウが演じる。ふたりの確かな演技力に関してはケン・ローチ監督も絶賛している。優しい性格のフランキーを演じるのはリヴァプール出身のスタンダップ・コメディアン、ジョン・ビショップ。
製作は『麦の穂をゆらす風』など数多くのローチ映画を手がけてきたレベッカ・オブライエン。撮影監督はローチの60年の代表作『ケス』に参加し、近年では『愛を読むひと』など手がけた名カメラマン、クリス・メンゲス。
プロダクション・デザインのファーガス・クレッグ、編集のジョナサン・モリス、音楽のジョージ・フェントンらは、これまで『麦の穂をゆらす風』など、数多くのローチ作品に参加してきた常連スタッフである。衣装デザインは『エリックを探して』のサラ・ライアンが手がけている。

ストーリー







 2007年、リバプールの教会ではひとりの兵士の葬儀が行われた。その葬儀に参加したファーガス(マーク・ウォーマック)はやりきれない思いを抱えながらそこにいた。死んだ兵士、フランキーはファーガスの最も大切な友人だった。5歳の時に出会ったふたりの夢は「世界をまわること」。マージー川を行き来するフェリーに乗った彼らは、世界への夢をふくらませながら育った。そして、大人になったふたりは兵士としてイラク戦争に参加し、皮肉にも憧れていたはずの世界に踏み出すことになった。

フランキーが亡くなった日、ファーガスの電話に彼のメッセージが残されていた。「大事な話だ。今夜でないとだめだ。電話がほしい」。しかし、ファーガスはその電話に答えることができなかった。関係者の話によると、フランキーはイラクで最も危険なエリア、ルート・アイリッシュでの車の炎上のため、帰らぬ人となったという。しかし、そんな関係者の説明をファーガスは信じたくなかった。フランキーは彼にとって兄弟同然の存在だったからだ。葬儀で深い悲しみに暮れていたのはファーガスだけではない。残されたフランキーの美しい妻、レイチェル(アンドレア・ロウ)も、突然の死に衝撃を受けていた。

葬儀の時、ファーガスはイビサ島に住む知り合いの女性マリソルから、フランキーが残した包みを受け取った。その中には手紙と携帯電話が入っていた。ファーガスはイラク出身のミュージシャン、ハリムを訪ね、その携帯電話に収められていた画像の中の言葉を翻訳してもらう。そこには幸せそうな家族の映像の後に続き、ある銃声と共に二人の少年が銃殺される様子が収められていた。銃を撃ったのはイラクにいる兵士ネルソンで、その場にいたフランキーは激怒した。それは罪のない民間人が殺害される瞬間を収めた映像だった。

その映像を見たファーガスはフランキーの死に対して不信感を強める。もともとフランキーをイラク戦争に誘ったのはファーガスだった。彼らは国家の軍隊が派遣した兵士ではなく、戦争をビジネスとする企業が派遣したコントラクター(民間兵)だった。コントラクターは危険な任務と引き換えに大金を稼ぐことができる。学のないファーガスやフランキーにとって、それはまたとない大金稼ぎのチャンスでもあった。しかし、戦場では、タフなファーガスとは異なり、優しい性格のフランキーの精神は崩壊しかけていた。ファーガスは彼より先に本国に帰ったが、戦場に残ったフランキーの神経はさらに張りつめたものとなり、ネルソンが民間人を殺した時は、大きな衝撃を受け、残された遺族に対する責任を感じるようになっていた。

ファーガスはレイチェルの協力を得ながら、フランキーの死の真相を追っていた。フランキーの思い出や戦場での厳しい現実についてレイチェルに語るファーガス。彼の心にも、また、戦争で負った深い傷跡が見えた。そして、時間を共有しあううちに、ふたりは惹かれあうようになる。しかし、ファーガスは彼女を愛しながらも、彼女との人生を選択せず、フランキーの身に起きたおそろしい事件を解明するため、イラク軍にいる知人トミーなどの協力を得て、軍事企業の秘密を暴こうとする。   

やがて、事件の証拠となる携帯電話を探すため、レイチェルの家には何者かが押し入り、ファーガスに翻訳者として協力をしていたハリムも暴行を受ける。そして、調査を続けるうちにフランキーが体験した戦場での恐ろしい事件の真相が見えてくる……。

スタッフ

監督:ケン・ローチ
脚本:ポール・ラヴァーティ
製作:レベッカ・オブライエン
製作総指揮:パスカル・コシュトゥ、ヴァンサン・マラヴァル
プロダクション・デザイン:ファーガス・クレッグ
撮影:クリス・メンゲス
録音:レイ・ベケット
キャスティング:キャスリーン・クロフォード
衣裳デザイン:サラ・ライアン
助監督:デヴィッド・ギルクライスト、マイケル・クイーン
ロケーション:クラリー・ニュートン
録音編集:ケヴィン・ブレイザー
ライン・プロデューサー:ティム・コール
編集:ジョナサン・モリス
音楽:ジョージ・フェントン

キャスト

ファーガス:マーク・ウォーマック 
レイチェル:アンドレア・ロウ
フランキー:ジョン・ビショップ
ウォーカー:ジェフ・ベル
ヘインズ:ジャック・フォーチュン
ハリム:タリブ・ラソール
クレイグ:クレイグ・ランドバーグ
ネルソン:トレヴァ−・ウィリアムズ
トミー:ラッセル・アンダーソン
ジェイミー:ジェイミー・ミッチー
少年時代のファーガス:ブラッドレイ・トンプソン
少年時代のフランキー:ダニエル・フォイ
マリソル:ナイワ・ニムリ
フランキーの母:マギー・サウザーズ
デヴィッド:R デヴィッド

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