孤島の王
原題:Kongen av Bastoy
2010年/ノルウェー・フランス・スウェーデン・ポーランド/117分/カラー/ノルウェー語/シネスコ/2.35:1/ドルビー/ 配給:アルシネテラン
2012年4月28日よりヒューマントラストシネマ有楽町にてロードショー
(C)les films du losange
公開初日 2012/04/28
配給会社名 0013
解説
言葉を失うほどの衝撃を呼び起こす 北欧に実在した〈監獄島〉の真実とは?
『クリスマスのその夜に』『キッチン・ストーリー』の名匠ベント・ハーメルらを輩出し、北欧独特の風土と文化を反映した良作を世に送り出してきたノルウェー映画界から衝撃的な一作が届けられた。同国の栄えあるアマンダ賞で8部門にノミネートされ、作品賞、脚本賞、助演男優賞、音楽賞を受賞。私たち日本人はもちろんのこと、ノルウェー国民にさえもほとんど知られていなかった歴史の闇に光をあて、大反響を呼んだ実録サスペンス・ドラマ、それが『孤島の王』である。
その驚くべき物語は、1915年、不敵な面構えの少年エーリングがオスロ南方のバストイ島に上陸するところから始まる。外界とは隔絶したこの島には、何らかの罪を犯した大勢の少年たちを収容する矯正施設があった。4つの棟のうちのC棟に配属されたエーリングは、尊大な院長と寮長への反発や脱走を繰り返し、そのたびに惨たらしいイジメにも似た懲罰を課せられていく。やがてエーリングの孤独な抵抗は、C棟のリーダーである優等生オーラヴの心を動かし、バストイ島の理不尽な秩序を根底から揺るがしていくのだった……。
本作がノルウェー本国で大ヒットを記録した理由は、観客が目の当たりにした歴史的事実があまりにもショッキングだったことによる。実際にバストイ島には1900年から1970年まで非行少年向けの矯正学校が存在し、1915年には少年たちによる壮大な反乱劇が勃発したという。この映画が語るストーリーはあくまで“実話に基づくドラマ”ではあるが、製作陣は孤立した自然環境や劣悪な労働状況といった史実のリアリティを可能な限り追求。卓越した心理描写、サスペンス演出に定評があり、数多くの受賞歴を誇るノルウェーの俊英監督マリウス・ホルストが、並々ならぬスケール感と迫真性を備えた問題作を完成させた。
自由を渇望する少年たちの痛切な運命。 その魂の叫びに
胸を衝かれずにいられない極限の孤島サバイバル&脱出サスペンス
本作に登場する“囚人”たちは、あどけなさを残す11〜18歳の少年である。人生において最も多感で輝かしい時期にあらゆる自由を剥奪され、過剰な抑圧を受ける彼らの痛切な運命を生々しく描出。その一方でエーリング、オーラヴというふたりの主人公が、架空の物語を創作することで友情を育み、絶望的な日々を生き抜いていくエピソードには、みずみずしい青春映画のような情感が息づいている。
また全編を貫く圧倒的な緊迫感は、ノルウェー&エストニア・ロケを実施した荘厳な映像美抜きには語れない。太陽の恵みにすら見離されたバストイ島上空は鉛色の雲で覆い尽くされ、荒れ狂う海はひとりの脱走者も許さない。さらに幾度となく到来する嵐や豪雪が、いっそう少年たちを苦境に追い込んでいく。映画史上において『太平洋の地獄』『蝿の王』『キャスト・アウェイ』といった無数の孤島ものが作られてきた事実が物語るように、極限状況にさらされた人間の本能やサバイバルを描くうえで孤島ほどうってつけでポピュラーな舞台設定はない。『アルカトラズからの脱出』『シャッターアイランド』『ゴーストライター』のように、監獄ものやミステリーのエッセンスを加味した孤島映画も少なくない。少年たちの切なる自由への叫びが、比類なき衝撃と感動に結実する『孤島の王』のクライマックスは、観る者の心を震わさずにおかないだろう。
エーリング役のベンヤミン・ヘールスター、オーラヴ役のトロン・ニルセンを始めとする新進若手俳優たちの渾身の演技に加え、北欧を代表する国際派俳優ステラン・スカルスガルドの鬼気迫る存在感も見逃せない。『奇跡の海』から『メランコリア』まで鬼才、ラース・フォン・トリアー監督作品の常連俳優として知られ、幾多のハリウッド大作でも活躍する名優が、欺瞞と矛盾に満ちた院長役に深みを与えている。
ストーリー
1915年のノルウェー。罪を犯した元船乗りの少年エーリングが、本土からバストイ島に送還されてきた。この島には非行少年を収容する矯正施設があり、院長の厳格な指導のもと、大勢の少年たちが青い作業着を身にまとい、過酷な自然環境での労働に従事していた。到着早々、髪を短く刈られたエーリングはC19という番号を与えられ、威圧的な寮長ブローテンが監視の目を光らせるC棟での生活をスタートさせる。
筋金入りの問題児として島に送り込まれてきたエーリングを警戒する院長は、従順な優等生であるC棟のリーダー、オーラヴにお目付役を命じる。卒院を間近に控え、揉め事を起こしたくないオーラヴは、エーリングに規則を守らせようとするが、エーリングはまったく意に介さない。それどころか浜辺のボート小屋に目をつけ、さっそく島からの脱走に思いをめぐらせるのだった。
C棟の少年たちは皆、理不尽な暴力をふるうブローテンに恐れおののいていたが、エーリングは朝礼の際にブローテンに反抗的な態度を示し、懲罰として石運びをさせられる。さらに同じ棟のオイスタインとの喧嘩沙汰を起こした彼は、止めに入ったオーラヴとともに森での重労働を強いられた。凍てつく雨の日も風の日も馬車馬のごとく酷使され、食事はバケツに盛られた魚の骨の残飯。耐え難いほど惨めな日々のなか、小説家のように物語を書きたいという密かな夢をオーラヴに打ち明けたエーリングは、“銛を3本打っても死なない鯨”の話を語って聞かせる。戦友のように辛苦を共有したふたりの間には、確かな絆が芽生えつつあった。
ある日、エーリングはかねてから練り上げていた脱走計画を実行に移す。わざと毒キノコを食って保健室に運ばれた彼は、真夜中にボート小屋の扉をノコギリでこじ開け、まんまと小船での脱出に成功。しかし数日後、警官に捕まって島に連れ戻され、容赦なく鞭で背中を打たれるはめに。皮肉にも、その鞭を握らされたのはオーラヴだった。
そんななか新たな大問題がC棟に持ち上がる。やせっぽちの内気な少年イーヴァルが、ブローテンから執拗な性的虐待を受けていたことが明るみに出たのだ。それは多くの少年や職員たちが知る暗黙の事実だったが、オーラヴの訴えを聞いた院長は激高し、「イカれた妄想だ!」とはねつける。それからまもなく波打ち際でイーヴァルの溺死体が見つかった。長らく独りで思い悩んでいたイーヴァルが、自ら海に身投げしたことは疑いようもない。にもかかわらず事を荒立てたくない院長は、この一件をイーヴァルが脱走を企てた末の事故として処理し、過ちを犯したブローテンを本土に送り出す。
やがて矯正施設で6年も過ごしたオーラヴが島を去る日がやってきた。オーラヴはブローテンの虐待行為を揉み消した院長に非難の目を向けるが、エーリングに我慢するようたしなめられる。ところが当の加害者であるブローテンが、何の咎めも受けることなく平然と職務に復帰したことを知り、ついに怒りが爆発。ブローテンに猛然と殴りかかったオーラヴは卒院を取り消された揚げ句、乱闘に加わったエーリング、オイスタインとともに地下監禁室の檻に拘束されてしまう。
院長とブローテンによる強固な支配体制が復活し、島には再び沈黙が広がった。しかしC棟の少年たちの内にくすぶる大人たちへの不信感は、もはや消しようがなかった。自由を渇望するエーリングとオーラヴは、一瞬の隙を突いて監禁室の暗闇から脱出。彼らの命懸けの抵抗は、ついに監獄島を揺るがす凄まじい反乱へと発展していくのだった……。
スタッフ
監督:マリウス・ホルスト
キャスト
ステラン・スカルスガルド
クリストッフェル・ヨーネル
ベンヤミン・ヘールスター
トロン・ニルセン
LINK
□公式サイト□IMDb
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「孤島の王」マナー予告::http://www.youtube.com/watch?v=DGMGI1A1BLI
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