普通に生きる
2011年度作品/日本/ビデオドキュメンタリー/カラー/83分/ステレオ 配給:マザーバード
2011年ポレポレ東中野にて10月22日~28日の1週間、毎朝10:10〜特別限定プレビュー 2012年1月公開
公開初日 2011/10/22
公開終了日 2011/10/28
配給会社名 1273
解説
静岡県富士市にある 生活介護事業所でら〜とは、『どんなに重い障害を持っていても、本人もその家族も普通に生きてゆける社会をめざす』という理念のもと、親たちの努力で、ゼロから立ち上げた重症心身障害児者のための通所施設です。
重症児の多くは、嚥下障害、呼吸障害等のため、日常的な介護として経管栄養、痰の吸引、酸素吸入等の医療的ケアを必要としています。そのため、でら〜とには生活支援員の他に看護師も常勤し、毎日、それぞれの障害や個性に合わせたプログラムで日中活動を支援しています。利用者は多くの人や地域との関わりの中で、社会性を身につけ、誰からも介護を受けられるように成長してゆきます。そして親たちも、法制度の改革の波に揉まれつつも行政に働きかけ、自分たちのニーズにあった制度や施設づくりを行い続けてきました。いずれは親も子もそれぞれの人生を明るく送れる地域社会づくりを目指して、『福祉の受け手から担い手となる』発想が、親たちの新しい未来を切り拓いてきました。映画は、2つ目の施設建設計画が持ち上がった頃からの5年間を追います。
ストーリー
「障害者の実情をよく知らない議員たちに、障害者福祉政策の重要性を知ってもらうため、でら〜とに通う利用者の様子を撮ってもらえないか」と熱心なメールをいただいたのは2006年秋。メールの主はでら〜との設立代表者であり、富士市市議会議員を務める小沢映子さんだった。
小沢映子さんとは、マザーバードの前作「晴れた日ばかりじゃないけれど」の上映会でお目にかかっており、何度かのメールの往復で、結局そのオファーを引き受けた。小沢さんから富士市の福祉事情などを伺い、富士市からメッセージできることを一緒に作品にしようということがトントン拍子に決まっていったのだった。
ちょうど富士宮市に第二の「でら〜と」を建設する計画が持ち上がっており、その動きを中心に撮影を始めた。同時に、富士市でひとり暮らしを7年も続けている脳性小児麻痺の男性・渡邊雅嗣さんも撮影させていただくことになる。
東京から静岡県富士市に通い、こつこつ地味に撮影を続け、2年後、第一作目である短編ドキュメンタリー「ささやかな日常〜ひとり暮らしサイコーだぜ!〜」が完成した翌年、主人公である渡邊雅嗣さんが心不全で急逝された。渡邊さんはそのDVDと共に各地の小学校を講演して廻りたいと希望されていたのだが、残念ながら叶わなかった。
他にも数名「でら〜と」の利用者が亡くなった。
重い障害を抱えて生きてゆくということの難しさに唇を噛みながら、「でら〜と」がとても大切にしている成人式には結局3度参加させてもらったのだが、この日はどうにも涙でぐしゃぐしゃになって撮影どころではなくなってしまうのだった。
最終的に撮影を開始してから4年、この間に回した60分テープは160本を超えた。いくつもの問題提起ができるほどの出来事が収まっていた。どのエピソードも内容が濃く、160時間上映できるものなら全部見てもらいたい程だ。
これを、マザーバードの洪 福貴が構成・編集し、制作補の梨木かおりも交えてスタッフ三人で激論激闘を交えながら再構築を繰り返し、追撮を重ね、テーマが徐々に「重症心身障害者の自立を支える社会の成熟」であることが見えてきた。まさにこの作業は肉を切らせて骨を断つ闘いであった。
しかし、完成が近づいた時、小沢映子さんに3度目の市議会議員選挙が迫っていた。映画は小沢映子さんの政治活動のプロパガンダが目的ではなかったので、完成予定を2011年4月末に仕切り直したが、東日本大震災に遇ってさらに延び、2011年5月末、ようやく完成に至った。
スタッフ
共同監督:貞末麻哉子・梨木かおり・洪 福貴
制作・撮影:貞末麻哉子
構成・編集:洪 福貴
制作補:梨木かおり
整音(CSW):中山隆匡 成ケ澤玲
カラリスト:稲川実希 太田義則
音楽:木霊
ナレーション:長谷川初範
キャスト
(主な登場人物)
小林不二也
小沢映子
小澤ゆみ
細貝多津美
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