原題:趙氏孤児 / SACRIFICE

この愛だけは、死なせない。

2010年/中国映画/カラー/128分/スコープサイズ/ドルビーSRD/字幕翻訳:水野衛子 配給:角川映画

2011年12月23日、Bunkamuraル・シネマのリニューアル・オープニング第一弾

©Shanghai Film Group Co., Ltd. Shanghai Film Studio/TIK FILMS/Stellar Mega Films Co., Ltd. /21 Century Shengkai Film

公開初日 2011/12/23

配給会社名 0058

解説


『さらば、わが愛 覇王別姫』 『北京ヴァイオリン』 『花の生涯〜梅蘭芳〜』 の名匠チェン・カイコー監督が
「命」をテーマに贈る感動の歴史ロマン
『さらば、わが愛 覇王別姫』でカンヌ国際映画祭パルム・ドールを受賞し、日本でも大ヒットを記録。続く『花の影』『北京ヴァイオリン』『始皇帝暗殺』『花の生涯〜梅蘭芳〜』といったヒット作、話題作を次々と世に送り出してきた名匠チェン・カイコー監督の最新作が、ついに日本でそのヴェールを脱ぐ。
監督にとって長編12作目にあたる本作のテーマは、「命」。そして、その命への「愛」。ただ一人残された趙一族の子を救うために、自らの命を犠牲にした母、父、そして多くの人々。わが子の命を引きかえにされ、復讐を誓った主人公の医師の苦悩や葛藤。
残された命をめぐって繰り広げられる愛憎劇が、見るものの魂を深く揺さぶる。
2011年の第61回ベルリン国際映画祭では特別招待作品として上映され、大きな衝撃と感動を呼んだ超話題作!

司馬遷 『史記』 に記される名作であり、2600年もの永きに渡って語り継がれ、
京劇としても高い人気を博す「趙氏孤児」を完全初映画化
中国の歴史書の雛型として、その歴史的・学術的重要性が認められている司馬遷の『史記』。「趙氏孤児」の物語は、中国古代・春秋時代に実際に起こった歴史的事件を背景に、『史記・趙世家』に記される。後に、雑劇、京劇、新劇など、時代を越え、さまざまな形式で繰り返し舞台化され、さらには国を越え、ヨーロッパでも上演されるほどの名作となり、今なお高い人気を博している。本作は、その物語を現代にも通じる普遍的な人間ドラマとして再構築。命を支え、つなぐ最高の感動作に仕上げられた。

謀略により滅亡させられた趙一族。ただ一つ残された命は、未来への希望か、絶望か。
今から約2600年前の中国・春秋時代、晋の国。
敵対する武官の謀略により、趙氏は一族300人を皆殺しにされるが、生まれたばかりの男の赤子だけ、母である妃の機転で難を逃れた。
「この子が大きくなっても、仇が誰なのか教えないで」出産に立ち会った医師に最後の言葉を残し、妃は自害。医師は、趙氏の根絶やしを図る武官から赤子を守ろうと奔走するが、その子の命と引きかえに、彼自身の子を殺されてしまう。さらには愛する妻までも…。
武官への復讐を誓った医師は、幾多の犠牲のうえに生き延びた孤児を引きとり、武官の門客となった。何も知らない武官は趙氏最後の子を溺愛し、何も知らない孤児は医師を「父さん」、武官を「父上」と呼び慕うようになる。それが、医師の狙いだった。武官の孤児に対する愛が深くなればなるほど、孤児から受ける復讐のダメージも深くなる。
やがて15年の歳月が経ち、2人の「父」に育てられた運命の子が、すべてを知る時がやってくる。

グォ・ヨウ、ワン・シュエチー、ファン・ビンビン、チャン・フォンイー、ホワン・シャオミンなど、
中国映画界のトップスターが集結
現在の中国を代表する名優たちがチェン・カイコー監督の下に集結した。主人公の医師役に、チャン・イーモウの『活きる』でカンヌ国際映画祭主演男優賞を受賞した演技派グォ・ヨウ。仇役に、チェン・カイコー監督の『黄色い大地』や『花の生涯〜梅蘭芳〜』、近作では『孫文の義士団』で好演したワン・シュエチー。日本ではサントリー烏龍茶のCMでその美貌が大きな話題になっている『墨攻』、『孫文の義士団』のファン・ビンビンが孤児の悲運の母親役を好演。さらに『さらば、わが愛 覇王別姫』『レッドクリフ』で大きな存在感を示したチャン・フォンイー、『女帝〔エンペラー〕』『イップ・マン 葉問』の期待の人気スター、ホワン・シャオミンなど、豪華な俳優陣が素晴らしい演技を披露している。

ストーリー

今から約2600年前の中国・春秋時代、晋の国。
宰相をつとめる趙盾の息子、趙朔は、現君主の姉・荘姫を妻にし、自身も将軍として勇ましく出陣する。栄華を謳歌する趙氏一族だったが、武官の屠岸賈がひそかに謀叛を企てていた。彼は王殺害の罪を趙盾に着せ、その勢いに乗って趙氏一族300人を皆殺しにする。

40歳を過ぎて息子を授かった医師・程嬰は、その騒ぎのさなか、荘姫の出産に立ち会い、男児を取り上げる。夫を殺され、自身の運命を悟った荘姫は、子供を公孫に託すよう程嬰に頼み、「この子が大きくなっても、仇が誰なのか教えないで」という言葉を残して自害する。孤児を殺し損ねた趙家の家臣・韓厥は、屠岸賈に顔を切りつけられてしまう。

屠岸賈による徹底的な趙氏孤児探しが始まった。程嬰は、ひとまず孤児を自宅に連れ帰り、「公孫様のお邸に行く前に乳を飲ませてやりたくて」と、妻に託す。迎えを頼みに外に出た程嬰は、兵士たちが家々から赤子を残らずさらっているところを目の当たりにする。その頃、兵士は程家にもやって来た。妻は、たまたまそのとき抱いていた孤児を差し出すしかなかった。手元に残っているのは、荘姫が程勃と名づけてくれた程嬰たちの実子だ。このままでは、この子が匿われた子、すなわち趙家の孤児と誤解されてしまう!

そこに、趙家の門客、公孫が訪れる。公孫は程嬰の妻と赤子を自邸に連れて行き、「屠岸賈は念のため赤子を2人とも殺すに違いない」と言い、2人を隠し部屋に入れる。一方、程嬰は、孤児を救うため、赤子を取られた親たちとともに屠岸賈邸の庭にいた。趙家の子を盗んだ者が寅の刻までに姿を現さなければ、集めた子をみな殺すと屠岸賈は告げるが、同時に「たった1人のために100人を犠牲にする人間なんていないだろう?」と親たちを安心させる。

いよいよ寅の刻が来た。点呼の際にひとりだけ親が名乗り出なかった子が程嬰の家から連れてきた子であることを知った屠岸賈は、程嬰を呼び出す。シラを通そうとした程嬰だが、「趙家の子を誰に渡したか言わないと赤ん坊をみな殺しにする」と言われ、「公孫様に渡しました」と白状する。屠岸賈は多数の兵をともなって公孫の邸宅に駆けつける。趙家に恩義を抱く公孫は「子供は渡さない」と盾になるも、刺し殺されてしまう。

隠れ部屋にいた程嬰の妻子は屠岸賈に見つけられてしまう。「他人の子をなぜかばう?」と問われた妻は、一瞬のためらいののち「親のない子だから…」と力なく答える。だが、渡さなければ殺すしかないと言われ、見せるだけと信じた程嬰が差し出した子を、屠岸賈は抱き取って顔を一瞥するや、床に叩き落とす。息絶えた子を抱きとった妻も、兵士の刀で刺し殺されてしまう。

程嬰は、茫然自失の状態で趙氏の孤児を引き取る。訪ねてきた韓厥に、「屠岸賈に死の苦しみを与えてやる。私の子が死んだのは運命だった。この子を育てて息子の仇を討たせる」と語る。そして、自ら屠岸賈の家臣となる。

何も知らない屠岸賈は、程勃すなわち趙氏最後の子を溺愛し、程勃は程嬰を「父さん」、屠岸賈を「父上」と呼び、慕うようになる(※)。それが程嬰の狙いだった。屠岸賈の程勃に対する愛が深くなればなるほど、やがて程勃から受ける復讐のダメージも深くなる。屠岸賈への復讐という点で目的を一つにする程嬰と韓厥は、人目を忍んで計画を練り上げていく。

少年になった程勃は、心配症の「父さん」に見張られているような毎日に反発するようになり、屠岸賈は彼を草原へ連れ出して息抜きさせる。「父上に敵はいる?」という程勃の問いかけに「私の敵はお前が生まれた年に全滅させてやった。父さんはそのときに危うくお前を失いかけて心配症になった。誰にでも敵はいる。誰もが敵を敵と思わなければ、敵はいなくなる」と屠岸賈は答え、程勃に「敵のやっつけ方を教えてやろう」と、剣さばきを教えるのだった。

こうして、あの運命の日から、15年が過ぎる。2人の父親に育てられた運命の子が、自らの出生の秘密について、すべてを知るときがやって来る。

(※)西洋の伝統的なキリスト教社会において、キリスト教徒が生みの親である実の父のほかに、洗礼式の立会人である「代父(ゴッドファーザー)」を立てる習慣がある。中国社会においても、実の父親・配偶者の親である義理の父親のほか、西洋のゴッドファーザーに似た「干爹(ガンディエ)=一種の義理の父親」を立てる習慣があった。「干爹」は、生みの父親とは別に、父親と近い年配の人に「後見人」になってもらうという制度である。「干爹」になると、披露宴を開いて、世間に義理の親子関係を結んだことを公表することになる。本作において、屠岸賈が程勃の「干爹(ガンディエ)」となっている。

スタッフ

監督・脚本|チェン・カイコー(陳凱歌)
原典|司馬遷(しばせん)『史記』
エグゼクティブ・プロデューサー|レン・チョンルン(任仲倫)/ロン・チウユン(龍秋雲)/チン・ホン(覃宏)/チェン・ホン(陳紅)
プロデューサー|チェン・ホン(陳紅)/チン・ホン(覃宏)
撮影|ヤン・シュウ(楊述)
美術|リウ・チン(柳青)
衣装|チェン・トンシュン(陳同?)
武術監督|クウ・フエンチュウ(谷軒昭)
音響|ワン・タンロン(王丹戎)
編集|デレク・フイ(許宏宇)
エンディング曲|タン・ジン(譚晶) 

原典:司馬遷『史記』/原題:趙氏孤児{Sacrifice}/原作小説:陳凱歌「運命の子」(角川文庫刊)

キャスト

程嬰(ていえい)|グォ・ヨウ(葛優)

屠岸賈(とがんこ)|ワン・シュエチー(王学圻)
荘姫(そうき)|ファン・ビンビン(范冰冰)
韓厥(かんけつ)|ホワン・シャオミン(黄暁明)
程嬰の妻|ハイ・チン(海清)
公孫(こうそん)|チャン・フォンイー(張豊毅)
趙朔(ちょうさく)|ヴィンセント・チャオ(趙文卓)
程勃(ていぼつ)・8才|ウィリアム・ワン(王瀚)
程勃(ていぼつ)・15才|チャオ・ウェンハオ(趙文浩)
晋の君主(霊公)|ポン・ボー(彭波)
策士|ワン・ジンソン(王勁松)
趙盾(ちょうじゅん)|パオ・グオアン(鮑国安)

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