スピーク
原題:The Speak
『パラノーマル・アクティビティ』 『REC/レック』の極限恐怖が増幅する! 新たな戦慄を呼ぶ〈P.O.V.〉超常スリラー
2011年/アメリカ/カラー/83分/ 配給:ブロードメディア・スタジオ=カルチュア・パブリッシャーズ
2012年01月20日よりDVDリリース 2011年10月1日(土) 池袋シネマ・ロサ、お台場シネマメディアージュ 他全国順次ロードショー
(C)2010 THE SPEAK PRODUCTIONS LLC
公開初日 2011/10/01
配給会社名 0551
解説
ハリウッドの大手スタジオがVFXや3Dの技術革新を推進する昨今、より小さな予算規模のインディペンデント映画の作り手たちが刺激的な作品を生み出すため、こぞって採用している演出スタイルがフェイク・ドキュメンタリーである。疑似ドキュメンタリー、またはモキュメンタリーとも呼ばれるこの手法は、架空の事件や現象をさも本当にあった出来事、すなわち記録映画のように見せるというもの。こうした試みはかなり以前から行われてきたが、世界的に大ヒットとなった『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』(99)の影響で、P.O.V.(ポイント・オブ・ビュー=主観撮影)の導入が広まり一気にブーム化。『REC/レック』(07)、『クローバーフィールド HAKAISHA』(08)がこのスタイルを劇的に進化させ、フェイク・ドキュメンタリーの新時代が到来した。わずか1万5000ドルとされる製作費で社会現象を巻き起こした『パラノーマル・アクティビティ』(07)が、画期的な成功を収めたことも記憶に新しい。そして森の妖精トロールを巨大モンスターに仕立て、海外で大反響を呼んだノルウェー産モキュメンタリー『THE TROL HUNTER』のハリウッド・リメイクも決定。まだまだ開発&研究の余地があるフェイク・ドキュメンタリーの快進撃は、今後もしばらく続きそうだ。
そんな現代の先端をゆく一人称視点のフェイク・ドキュメンタリーに果敢にも挑んだ新人監督アンソニー・ピアースは、この手法と相性抜群の“密室の恐怖”をテーマに選んだ。舞台となるのは、全米で最も恐れられ、呪われた場所と噂される廃墟ホテル。そこに乗り込んだ映画撮影隊の想像を絶する運命を、大胆にも全編リアルタイム進行で映し出す。撮影クルーが回し続けたビデオカメラは、漆黒の闇に覆われた館内でいったい何を捉えたのか。くしくも『REC/レック』の逃げ場なき極限状況と、『パラノーマル・アクティビティ』の不可思議な超常現象が融合したかのような衝撃映像が、未知なる戦慄を呼び起こすP.O.V.スリラー、それが『スピーク』である。
忌まわしい廃墟ホテルに潜入した映画撮影隊
逃げ場なき密室と化したその迷宮空間で
ビデオカメラはいったい何を記録したのか?
とある深夜、売れない若手映画監督シェリーが率いる撮影隊が、オレゴン州の夜道に集結した。シェリーの目的は、悪名高き“呪われたホテル”の廃墟で潜入ルポ形式の恐怖ドキュメンタリーを撮り上げること。メンバーはシェリーの彼女兼プロデューサーのペイジ、カメラマンを務めるシェリーの弟ルイス、音響担当のジェイソンとその恋人ルイサ、そしてアメリカ先住民の血を引く美女マリアという6人だ。一行はホテル管理人の物々しい忠告を無視し、街なかにひっそりと佇むドン・パーク・ホテルの内部に入っていく。ところが降霊の儀式によって異界から呼び出されたのは、霊能力者マリアさえも震え上がる“想像を超えた邪悪な何か”だった。一行が廃墟ホテルの呪いの伝説は今も生きていることに気づいたときは、もう遅かった。常識では計り知れない怪異に見舞われ、館内に閉じ込められた6人は、ただ絶叫とともに逃げ惑うのだった……。
人の気配もなくひとりでに開閉するドア、画面の奥を横切る謎の人影、どこからともなく聞こえてくる姿なき住人たちの囁き声(=スピーク)。こうした恐怖演出はホラーやスリラーの分野ではすっかり定番化しているが、『スピーク』はリアルタイム感覚をいっそう強調するため、何と巨匠ヒッチコックの『ロープ』ばりの実験的技法に挑戦。まるで全編がワンカットで繋がっているかのような長回し撮影を実践し、まさにドキュメンタリー調の臨場感を徹底的に追求した。むろん全ショットは登場人物のひとりであるカメラマンの主観映像で成り立っているため、観る者のスリルを煽る迫真性は倍増。おまけにオレゴン州に実在する怪奇スポットさながらのホテルでロケを敢行したことで、スクリーンに映るものすべてがリアルで不気味なパラノーマル・スリラーが完成した。
また映画撮影現場で異常な出来事が続発する、という映画ファンの好奇心をそそる設定も本作の重要ポイント。主人公の崖っぷち映画監督シェリーとその弟ルイスは、必死の思いで異次元の迷宮のごときホテル内を駆けずり回り、並々ならぬ執念で撮影を続行していく。キャストは全員が無名だけに、誰が最後まで生き残るか、もしくは誰が最後に死ぬかは予測不可能。いつしか観る者は“フェイク”という前提を忘れ、この斬新なP.O.V.スリラーに没入してしまうはず。はたしてカメラは何を“記録”したのか。もちろん、その惨劇の目撃者&体験者となるのは観客自身である。
ストーリー
その夜、野心あふれる若き映画監督シェリーは、いつにも増して気合いが入っていた。お世辞にも売れっ子とは言い難い彼は、オカルト&パラノーマル系のネットムービーを自主製作でこしらえてきたが、なかなかステップアップのきっかけが掴めない。今夜は何が何でも人生最高の恐怖ドキュメンタリーをモノにするつもりで、“北米で最も恐ろしい場所”として名高いオレゴン州のドン・パーク・ホテルにやってきたのだ。さっそく深夜のひと気のない道端に立ったシェリーは、芝居がかったジェスチャーを交えて前口上を始める。
「今夜、我々は皆さんに必ずお見せします。幽霊が存在する証拠を!」
その姿をビデオカメラで撮影するのはシェリーの弟ルイスである。映画監督としてのキャリアの危機を感じているシェリーとは対照的に、お気楽な性格のルイスはまるっきり緊張感がない。
自信過剰気味で実務能力の乏しいシェリーに代わって、あらゆる裏方仕事を切り盛りするのはプロデューサー、ペイジの役目だ。シェリーの恋人でもあるペイジは、今夜の撮影のために雇ったスタッフを紹介する。モデルと見紛うほどの美貌とプロポーションを誇るマリアは、ネイティブ・アメリカンの霊媒師の血を引く女性で、ホテル内での降霊の儀式を取り仕切る。音響担当のジャクソンは、笑えないジョークを連発するKY男。その恋人で音響助手のエルサは「スクービー・ドゥー」マニアのオタク系女子だ。ホテル管理人の中年男ドイルとひと悶着あったものの、何とか入り口の鍵を手に入れた撮影隊一行6人は、ドン・パーク・ホテルの内部に足を踏み入れていく。
長らく廃墟として放置されてきたホテルの中は、ひたすら暗く不気味だった。マリアが儀式にふさわしい場所を探し、ジャクソンとエルサが録音機器の準備をしている間に、シェリーはペイジをむりやりカメラの前に引っ張り出し、ドン・パーク・ホテルの説明をさせることにした。しぶしぶ引き受けたペイジは、天井や壁があちこち破損した廊下を歩きながら、ホテルの血塗られた歴史を語り始める。19世紀にこのホテルを買った町長が妻と弟を惨殺し、自らも首を吊ったこと。その後、オーナーになった女性が屋上から謎の転落死を遂げたこと。さらに精神病院に改装された1940年代には、患者への残虐行為を犯した職員が死刑に処せられたこと。そんな説明の最中に、真っ暗な廊下から転がってきた白いボールにギョッとしたシェリーは、すかさず「今夜、初めてカメラが捉えた超常現象です!」と興奮気味にまくし立てる。ところが呆れたことに、それはジャクソンの悪ふざけだった。
憤懣やるかたないシェリーに新たな問題が持ち上がる。マリアが「撮影は止めたほうがいいわ。嫌な感じがするから儀式はできない」と不安げな面持ちで言い出したのだ。しかしこの新作にキャリアの存亡が懸かっているシェリーは、マリアにギャラの増額をちらつかせて強引に説得する。
かくして一行はマリアが選んだ小さな部屋に集まり、蝋燭の灯りを囲んで円陣を作った。いよいよ“スピーク”と呼ばれる降霊の儀式の始まりだ。
「……我らは語り手。霊よ、どうぞこちらにお越しください」
呪文が反復されるうちに、窓の開いていない部屋の中にどこからともなく風が吹き込み、ビデオカメラの画像に奇怪なノイズが生じる。さらにライトが明滅し、建物がきしみ音をあげたかと思うと、ホテル全体が激しく揺れ動いた。儀式は成功だった。役割を終えたマリアは急ぎ足でその場を立ち去ろうとするが、得体の知れない力が働いたかのように出口が閉ざされ、そのほかの窓や非常口も外部と遮断されてしまう。
「我々は閉じ込められた! はたして目に見える霊の証拠を捉えられるのか!」
一同が顔を凍りつかせるなか、ただひとりシェリーだけはこの異常事態を待っていたとばかりに、笑みさえ浮かべて俄然活気づく。
しかし、そんなシェリーの創作意欲を打ち砕く怪現象が勃発する。殺人と首吊り自殺の忌まわしい過去がある207号室に向かった彼は、姿なきカラスの群れの羽ばたき音に戦慄し、大パニックに陥ってしまう。
「……私たちは霊の世界への扉を開けた。でも来たのは、想像を超えた邪悪なものよ。彼らは私たちをひとりずつ殺すわ」
マリアが震えた声でそう呟くなか、エルサが何者かに首を絞められて無残に息絶えた。それまでエルサに付き添っていたジャクソンは、何かに取り憑かれたかのように凶暴な振る舞いを見せ始める。
もはや撮影どころか命すら危うくなった一行は、最後の脱出ルートである屋上をめざすことにする。しかしそのためには、かつて孤児院だったフロアを通過せねばならない。シェリー、ペイジ、ルイス、マリアは、おどろおどろしい子供の泣き声が聞こえてくる廊下を歩き、地獄のような迷宮の奥深くへと進んでいくのだった……。
スタッフ
監督/脚本:アンソニー・ピアース
製作:マーティン・ワイリー、ブレット・ドノフー
製作総指揮:ポール・ハドソン
キャスト
スティーヴン・ネルソン(シェリー)
クリスティーナ・アナパウ(ペイジ)
ウナ・ジョー・ブレイド(エルザ)
ティナ・カスチアーニ(マリア)
ブレット・ドノフー(ジャクソン)
マイケル・クリンガー(ルイス)
トム・サイズモア(ドイル)
LINK
□公式サイト□IMDb
□この作品のインタビューを見る
□この作品に関する情報をもっと探す