日本映画史上最大の暴走族映画にして、最も繊細なヤクザ映画

2010/ 日本映画/ カラー/ ビスタ/121 分 配給:グアパ・グアポ

2011年8月13日(土)より、シネマート六本木にてロードショー 全国順次公開

(C)2010 LEONE

公開初日 2011/08/13

配給会社名 0231

解説


「映画作り」に携わった人、これから「映画を観る」という形で携わる人。
その全ての人が『運命』を共にして、初めて作品は完成する———。

2008年12月某日。冬空が茜色に染まる頃、私、プロデューサーの久保和明は撮影班を伴い東京郊外にあるヘリポートにいた。もう十日以上もここへ通い詰めていた。来る日も来る日も撮影班たちと、ただじっと控え室の窓から空を見ていた。「この物語は「光」と「影」がテーマです」この作品の映画化が決定した時に原作者の白川蓮が言った言葉だった。「主人公をはじめ、登場人物すべてが光と影を持っていて、常に光りを追い求めています。時には真っ暗な闇の部分から光りを見上げたり、時には光りだらけの中で求めている光りを見失っていたり……。そうやって生きています。その先にあるだろう答えを探している人間たち、それがこの物語の中で生きた者たちなのです。そんな、あたりまえのことがテーマです。彼らが何者か? なんてことは実は何者でもよかったんです。人間ならば誰だって光と影の中で葛藤しながら生きているのですから……何が綺麗で何が汚くて、と事あるごとに目の当たりにしながら」そして白川は、「だからこそ、どこの誰が見ても美しいと思えるような、何か、すべての感覚が浄化されるような、そんな画を撮れませんかね?」と続けていた。それから数日して台本を読みながら私が思い立ったのは「夜景」だった。そこにはきっと白川が例えるものに近い「光」と「影」があるだろう。そう考えたからだった。私はその夜景を空からの空撮で表現しようと思った。この映画を作るにあたって私が白川と交わした約束はたったの二つだった。一つは前記したように、「光」と「影」をテーマとして描くこと。もう一つは、「新宿歌舞伎町」と「東京タワー」というロケーションの指定だった。私は、二つ目の約束も「空」から撮ってみようと考えた。実はそこにこれといって深い意味は無かった。ただ単純にそれらを空から撮ったらどんな画になるのだろう、という制作者としてのあたりまえの興味に過ぎなかった。歌舞伎町と東京タワーというのは物語に出てくる場所であり、単なる理想的なロケーションの一部と考えるのが普通なのかもしれない。しかし、そうではないということを私はこの後すぐに知ることになった……。「今夜ですよ!」ヘリコプター会社のスタッフが駆け込んで来るとそう言った。そして私たちの返事も待たずにスタッフは続けた。「最高の空です!」【冬】【乾燥した空気】【雨上がり】という絶対条件を待ち、ついに一年に数度しか訪れないであろう絶好の空がやって来たのだ。私は撮影班と共にすぐさまヘリコプターへと乗り込んだ。目指すのは東京。場所はたった二つ。新宿歌舞伎町上空と東京タワー上空だ。ヘリが東京都心の上空にさしかかる頃には冬の短い陽は完全に幕を降ろし、空を漆黒へと変えていた。それはまさしく「影」だった。そしてその眼下に広がるのは色も形も不揃いな宝石をぶちまけたような巨大な東京夜景だった。想像を絶するほど圧倒的な煌めき、それこそがまさに「光」の部分だった。その光景を見て、私はこの映画で光と影を表す一つの表現方法に東京夜景の空撮を選んだ事が間違いじゃなかった事を確信した。そうしているうち視界に入ってきたのは最初の目的地、新宿の姿だった。果てしなく広がる光の集積の中、歌舞伎町だけはまるで光が一つの塊となり、真っ赤に燃えているようだった。その姿は、光だらけの中でさらに光り輝き、辺り中の光を飲み込んでいるかのようだった———。

眠りについたオフィスたちが羅列する西新宿の高層ビル群と、眠らぬ街、歌舞伎町は、新宿大ガードを境界にして地上に大きな光と影のコントラストを描いていた。新宿一帯を余すことなくカメラに収めると、ヘリは東南方向へと舵をとった。数分と経たないうちに見えてきたのは次の目的地、東京タワーだった。それは、さっきまでとは一転して、悲しくなるほど美しい暖色の光を放っていた。ただ一つ、すべてを見守る様にそびえ立ち東京中を照らしているかのようだった。周りの光など淡く霞んでしまうほど絶対的な存在だった。その姿はまさに「物者の象徴」だった。眼下に灯る東京タワーを見ていると私はある事に気が付いた。「歌舞伎町」も「東京タワー」も映画に必要な画的なロケーションではないという事だった……。何故なら、この二つは他の何よりも圧倒的に光り輝いていたからだ。同時に、それは同じ分だけ大きな影を持っているということを知ったからだ。この時、この作品に対しての気持ちが初めて振り出しへと戻った。やはり、この作品のテーマは「光」と「影」だと。映画の台本にこんな台詞がある。「東京は綺麗だよな……光が眩しいのか空が暗いのか時々わからなくなる」登場人物の吉永渉というヤクザが言った台詞だ。もしかしたら彼(吉永)もどこかでこの景色をこんな風に見たことがあったのかもしれない。「光」と「影」。それは決して「表」と「裏」ではない。光も影も常に一つの物が同時に生み出すものであり、この物語に登場する人間たちも、皆、何かしらの光を求めては影を残していった。彼らが何を思い、どんな答えを探し求め続けたのか……。巨大なる「光」と「影」を目の前にして自分自身もそれを知りたくなっていた。

ストーリー






200X年、東京———。片桐蓮は東京タワーの大展望台で一人、過去の記憶を蘇らせていた。目を閉じると今でもそこには遥かなる追憶が息をしているようだった……。

舞台は1997年。関東地方の田舎町、城南市。この小さな町に育った五人の若者がいた。片桐蓮、宮城大成、藤田秀人、高崎慎哉、大林裕亮。彼らはこの町に古くから続く暴走族「城南一家」の二十六代目のメンバーだった。世間からは「不良」そう呼ばれていた。しかし、何よりも強い絆で結ばれていた十八歳の少年達。「今」が全て、持て余す力、そして抱えきれない心の十字架を振り回す彼らの生き方は最高の輝きを放っていた。特に蓮と大成はともに少年院出身の経歴を持ち、明日入るかも知れない二度目の少年院さえも「今」という時間の前では単なる結末位にしか思っていなかった。ただし、二人にはある大きな違いがあった。それはそれぞれを取り巻く環境の違いであった。大成には母や祖父という生まれながらの家族の愛があたりまえにあった。母の温もりや祖父の優しさが何時でも手の届くところにあった大成と、一方、父と兄がヤクザだった蓮。その蓮には母がいなかった。蓮は幼き頃から親友である大成の生きる環境に憧れを抱いていた……。それに対して、大成は引け目を持たない蓮の生き方に憧れ、その背中を追い続けていた。そんな蓮を幼い頃から大成と一緒に我が子の様に可愛がったのは他でもない大成の母、小百合だったのだ。血は違えど、蓮と大成はまるで兄弟のようだった。そしてもう一つ、蓮と大成のそばには二人を支える「愛」があった。それが幼馴染で唯一の女の子、浅水シズクの存在だった。

感情の無い真っ直ぐな瞳の蓮。あたりまえの優しさを知る真っ直ぐな瞳の大成。どちらが男の眼なのか、十八歳のこの時はまだ答えなど無かった。それはいつも隣に存在する仲間達が居たからこそ、二人は同じ少年の瞳でいられたのだろう……。しかし、そんなある日に起こったのは、最愛の仲間である秀人の死だった……。もう永遠に十八歳から変る事のない秀人の笑顔の前で、少年達は答え無き時間に傷つき、涙を落とすことしかできなかった。そして、たった一人の仲間が居なくなった意味が十八歳という少年達の世界を少しずつ狂わせていった……。いや、大人へと変えていったのかもしれない。それはちょうど十八歳の終わり。「少年」という時間も終わりを告げる頃だった。仲間達はそれぞれの道へと別れていった……。蓮は暴走族を引退すると、ヤクザになるため自ら裏社会へと進んでいった。世間への反発心などではない。蓮の人生に唯一存在していてくれた絶対的運命、それがヤクザだっただけのことだ。蓮は実父の息がかかる傘下組織、黒崎組で部屋住み見習いの若衆となった。それを知ると大成は、地元、家族、仲間すべてを捨てて一人東京へと出て行った。ヤクザになるためだった。大成は辿り着いた地、新宿歌舞伎町でヤクザの世界へと身を落としていく……。ただし、同じヤクザの道でも大成が選んだのは蓮とは別の組織だった……。そして、二人の運命はすれ違っていく……。それから二年後の1999年。二十歳の歳を迎えた男達は、故郷城南の街で最初で最後の再会をする———。

スタッフ

製作総指揮:久保和明
原作/脚本:白川 蓮「アメイジング グレイス 〜儚き男たちへの詩〜」(エベイユ 刊)
プロデューサー:久保和明、佐伯寛之
監督:川野浩司
撮影:田宮建彦
照明:南園智男
録音:中川究矢
美術:井上心平
助監督:亀谷英司
制作担当:高瀬博行
スタイリスト:吉田実穂
ヘアメイク:大内聖子
キャスティング:綿引近人
音楽:西ヶ谷元紀、松岡大祐
音響効果:渋谷圭介
監督助手:小南敏也、松尾大輔
小道具:松崎南津子、河野夏美
スタイリスト助手:阪上秀平
ヘアメイク助手:今野亜季
制作主任:天野佑亮
撮影助手:河戸浩一郎
照明助手:加藤恵子
録音助手:戸田慎吾
美術助手:野中謙一郎、浦崎七帆、熊沢一平
制作進行:征矢吉裕、前芝啓介
殺陣:江澤大樹
ガンエフェクト:近藤佳徳
劇用刺青:岩崎雅一(神奈川Candy Art)
彫師指導:玉井直樹(埼玉 久喜 彫なお)
ロケバス:篠原大成
データ管理:横江宏樹
VFX:田村 亮
メイキング:高橋 悠
ホームページ制作:増田裕美
英語字幕翻訳:J.Gordon International Ltd、西村容子、キャメロン・ストローザ
海外販売協力:株式会社クレイ、齋藤正明、田中 歩
宣伝:ブラウニー
整音:吉田憲義
整音助手:加藤詩織
MA:Cinema Sound Works カラーコレクション:IMAGICA、関口正人
EED:稲川美希、堀辺麻衣子
トータルコーディネート:MGF JAPAN PROMOTION
スペシャルサンクス:田辺智也、大久保さやか、白沢孝之、宮垣結光、宮田昌範、宮田靖平
バイクシーンスーパーバイザー:長澤良馬
メイン劇用バイクデザイン:岩谷佳岳
メイン劇用バイク制作:篠原裕行
録音助手・応援:千阪哲也、松井千佳、高畑鍬名
スタイリスト応援:石原祐一
ヘアメイク応援:川上沙織
演出部応援:野尻克己、松尾 崇、佐々木資門
制作応援:西村絵美
車輌応援:蘭汰郎
主題歌:「Amazing Grace」 Song for Shizuku Asami
歌:神田沙也加
ピアノ・編曲:松岡大祐
レコーディングエンジニア 古川健司
レコーディングスタジオ アバコクリエイティブスタジオ
制作協力:株式会社アールグレイフィルム
制作プロダクション:株式会社レオーネ
企画:株式会社レオーネ、MGF JAPAN
製作:株式会社レオーネ

キャスト

窪塚俊介
宮田大三
神田沙也加
鎌苅健太
粟島瑞丸
上吉原陽
大嶋宏成
畑山隆則
宮地真緒
折山みゆ
永山たかし
加藤沙耶香
吉木りさ
大嶋記胤
佐藤貢三
諏訪太朗
鳥肌実
ベンガル
渋川清彦
美保純

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