黄色い星の子供たち
原題:La Rafle
約束して。必ず、生き抜くと。 1942年夏、パリで行われた史上最大のユダヤ人一斉検挙。 家族と引き裂かれながらも、過酷な運命を懸命に生きた子供たちの真実の物語。
2010年3月10日(ベルギー)
2010年/フランス・ドイツ・ハンガリー/125分/原題:La Rafle/シネマスコープ/ドルビーSRD 後援:フランス大使館文化部/協力:ユニフランス東京/提供:ニューセレクト 文部科学省特別選定作品 少年・青年・成人・家庭向き 配給:アルバトロス・フィルム
2011年7月 23日、 TOHOシネマズ シャンテ、新宿武蔵野館ほかにて全国順次ロードショー!
©2010 LEGENDE LEGENDE FILMS GAUMONT LEGENDE DES SIECLES TF1 FILMS PRODUCTION FRANCE 3 CINEMA SMTS KS2 CINEMA ALVA FILMS EOS ENTERTAINMENT EUROFILM BIS
公開初日 2011/07/23
配給会社名 0012
解説
歴史の陰に隠された、史上 最大のユダヤ人一斉検挙。
家族と引き裂かれながらも過酷な運命 を懸命に生きた子供たちの真実の物語
「子供たちに、もう一度生命を与えたい」
祈りにも似た願いから生まれた真実の物語
50年もの間、公式に認められなかった事件がある。1942年にフランス政府の手によって行われた、史上最大のユダヤ人一斉検挙だ。1995年にジャック・シラク大統領がフランス政府の果たした役割を認めるまで、事件はナチスドイツのユダヤ人迫害のひとつとして捉えられていた。誰もが知っている歴史の陰に、知られざるもうひとつの暴挙が隠されていたのだ。いったいフランスは、何をしたのか? 何と引き換えに、何を目的に、罪のない尊い命を差し出したのか──?
その事件の全貌を、初めて詳細に追いかけた映画『黄色い星の子供たち』が誕生した。この物語に登場する人物は、ごく小さな子供たちも含めて、すべて実在する。ここに
描かれている出来事は、最も悲惨なものを含めて、すべて本当に起こったことである。〈真実〉だけを描こうと決意し、3年近くにわたって、綿密な調査と研究を続けた監督は、元ジャーナリストのローズ・ボッシュ。脚本も手がけた彼女は、記録文書や映像に片端から目を通し、生存している目撃者に連絡を取って証言を集めた。
なぜ今、ユダヤ人の一斉検挙を描くのか──? 知られざる歴史の真実を暴くことが、第一の目的である。いつの時代も、未来の幸せをかなえようとする時、必要なのは過去の過ちを知ることだ。だが、それだけではない。もっとシンプルな情熱が、ボッシュ監督を駆り立てた。「非業の死を遂げた人々と子供たちに、もう一度生命を与えたい」という祈りにも似た想いだ。一人一人の愛すべき小さなエピソードと、彼らに起きた憎むべき大きな運命を調べれば調べるほど、彼らの人生を再現して、フィルムに生きた証を焼きつけたいと願ったのだ。
その重大な使命を負ったボッシュ監督に、一人の男性が勇気と力を与えた。ジョゼフ・ヴァイスマン、一斉検挙された16歳以下の子供のなかで、生き残った数少ない人物だ。11歳の時に検挙され、収容所から脱出し、現在に至る彼の人生を基に、主人公の少年ジョーが生まれた。
夜明け前のパリで奪われた、ささやかな幸せ
昨日まで母に抱かれていた子供たちの運命は──?
すべての始まりは、“黄色い星”だった。当時、ナチスの支配下にあったフランスで、ユダヤ人は衣服の胸に黄色い星をつけることを義務付けられたのだ。11歳のジョーは、黄色い星をつけて学校に行くのが嫌だった。ジョーの母親と近所のユダヤ人たちは、公園や映画館、遊園地などの公共施設への立ち入りが禁じられたことに腹を立てていた。みんな、何かが変わろうとしていることは、わかっていた。それでも彼らはその夜、明日になればまた、ささやかな幸せに彩られた一日が始まると信じて、眠りについた。朝陽ではなく、フランス警察の荒々しいノックの音に、たたき起こされるまでは──。
1942年7月16日、夜明け前のパリで始まったユダヤ人一斉検挙で、1万3000人もの人々が逮捕された。幼い子供も女性も、赤ん坊さえも、ヴェル・ディヴ(冬季競輪場)に押し込められ、5日間、水、食料、健康管理もなく放置された。自らも検挙されたシェインバウム医師が一人で、人々の治療を引き受けていた。そこに赤十字から派遣された看護師のアネット・モノが加わるが、とても追いつかない。だが、それは信じ難い出来事の、ほんの始まりに過ぎなかった──。
両親から引き離された子供たちを、母親に代わって最後まで守ろうとするアネットには、『オーケストラ!』のメラニー・ロラン。その献身的な愛情には、涙せずにはいられない。シェインバウム医師を演じるのは、フランスが誇る名優『ダ・ヴィンチ・コード』のジャン・レノ。ハリウッド映画で見せるスター俳優の顔ではなく、苦悩する一人の医師を、静かな品格をもって演じた。
どうか、一人一人の子供たちの人生の一瞬一瞬を、胸に刻んでほしい。小さな掌、澄んだ瞳、汚れなき笑顔、母を求める涙、そしてどんなに過酷な状況でも、決して消えることのない希望の輝き──。スクリーンに甦った子供たちの生命を、私たち一人一人がしっかりと抱きしめたなら、世界が過ちを繰り返すことは、きっとなくなると信じて──。
ストーリー
それは、“黄色い星”から始まった──
1942年6月、パリ。ジョーは、胸につけた“黄色い星”がイヤだった。ユダヤ人に付けられたこの星をつけていると遊園地に入れないし、汚いものでも見るような目つきをする大人がいる。だがジョーの父(ガド・エルマレ)や母(ラファエル・アゴゲ)、近隣に住むユダヤ人家族たちは、誇り高く仲睦まじく暮らしていた。
生活は貧しかったが、子供たちも逞しかった。ジョーと仲良しのシモンは、シモンの幼い弟ノノにカフェの前で歌わせては、ドイツ兵から小銭を稼いでいた。父のために彼らの吸い殻を集めるのも平気だった。
すぐそこに近づいた、時代の不穏な足音
ヒトラーはユダヤ人迫害政策を推し進め、ナチス・ドイツの支配下にあるフランスにもユダヤ人を引き渡すよう求めた。ペタン元帥も増えすぎたユダヤ人移民を撤廃するには都合がいいと考えた。ドイツ軍との交渉の窓口に立つフランス警察の責任者ブスケは、警察の権威を認めるのを条件に、自分たちの手でユダヤ人検挙を行うことを承諾する。
最後に話をまとめたのは、ラヴァル首相だ。パリ地区の外国籍のユダヤ人2万4000人の検挙が決まった。ドイツ側が子供の除外を提案したにもかかわらず、ラヴァルはこれに反対する。国が孤児の面倒をみきれないことを理由に──。
夜霧にまぎれて奪われた、ささやかな幸せ
7月16日、午前4時。検挙の噂は流れていたが、人々は信じていた。連れて行かれるとしても、兵器工場に必要な男だけだ、と。なぜならここは、“救いの国フランス”なのだから──。しかし、朝が来る前に、ささやかな幸せは永遠に奪われた。怒鳴り声と共に激しく叩かれるドア、容赦なく告げられる命令。女も子供も一人残らず逮捕され、バスに追い立てられた。絶望して赤ん坊と飛び降りる若い母親、騒ぎに紛れて子供を逃がす者、それを匿うフランス人──。その日、1万3000人のユダヤ人が検挙され、ヴェル・ディヴ(冬季競輪場)へと移送された。
水も食料もない、ヴェル・ディヴ(冬季競輪場)
一歩入るなり、赤十字から派遣された看護師のアネット(メラニー・ロラン)は、息をのんだ。「息子が高熱なんです」「2日も水を飲んでいないの」「娘が麻疹に─」──口々に助けを求める人々に「すぐ来ます」と答えるのがやっとだ。ヴェル・ディヴ、ここには数千人の患者がいたが、医師は自身も検挙されたシェインバウム(ジャン・レノ)だけ。看護師は、アネットが加わって、やっと6人だ。国は“証人”を増やさないために、志願者を拒んでいるのだ。
人懐こいノノが、「ママが戻るのを待っているの」とアネットに話しかける。だが、シモンとノノの母親(シルヴィー・テステュー)はその朝、流産が原因で亡くなっていた。5日間、劣悪な環境に置かれたユダヤの人々に対して、一度だけ人間らしい行いが為された。ホースの点検に来た消防団の責任者が、消火用の水を振る舞ったのだ。人々は消防士たちに、親戚や友人たちへの手紙を託した。
家族一緒に過ごした、最後の収容所
検挙の日と同じく突然に、彼らはロワレ県ボーヌの収容所へと移送される。子供たちが心配で共に移動したアネットは、さらに愕然とする。不潔で、食料も乏しく、これでは皆、病気になってしまう。シェインバウムが止めるのも聞かず、ユダヤ人と同じ食事を続けたアネットは、3週間で8キロも痩せてしまう。彼女はその姿で知事を訪ね、ようやく食料の配給を受ける。
その日、子供たちは甘いマドレーヌに歓喜し、大人たちは十分な食事を楽しんだ後、ラジオから流れる音楽でダンスを踊った。これが最後の美しい思い出だと、どこかでわかっているかのように──。
引き裂かれる親子、遂に訪れた別れの時
アネットの献身的な努力も、終わりを告げる日が訪れる。別の収容所への移送が決まり、今度はユダヤ人しか行けないというのだ。「あなたを逃がすべきだった」溢れる涙を抑えられないアネットに、優しく別れを告げるシェインバウム。
あってはならないことが、遂に起きてしまう。子供たちを残して、大人だけが出発するというのだ。大人たちには、わかっていた。もう二度と会えないことを。ジョーの母は駆けもどり、息子の手を取って力の限りに伝える。「約束して、生きるのよ」。
ジョーはノノをおぶって逃げようと、シモンを誘う。出発は、10日後。子供たちの運命は、汚れた手で握りつぶされようとしていた──。
スタッフ
監督 ・脚本: ローズ・ボッシュ
プロデューサー: イラン・ゴールドマン
アソシエイツ・プロデューサー: カトリーヌ・モリス
エクゼクティヴ・プロデューサー: マルク・ヴァドゥ
撮影: ダヴィッド・ウンガロ
録音: ロラン・ゼイリグ
編集: ヤン・マルコール
美術: オリヴィエ・ラウー
衣装: ピエール=ジャン・ラロック
キャスト
メラニー・ロラン( アネット・モノ)
ジャン・レノ( ダヴィッド・シェインバウム医師)
ガド・エルマレ( シュメル・ヴァイスマン)
ラファエル・アゴゲ( スラ・ヴァイスマン)
ユーゴ・ルヴェルデ( ジョー・ヴァイスマン)
オリヴィエ・シヴィ( シモン・ジグレール)
マチュー&ロマン・ディ・コンチェート( ノエ・ジグレール)
レベッカ・マルデール( ラケル・ヴァイスマン)
アンヌ・ブロシェ( ディナ・トローブ)
イザベル・ゲリナス( エレーヌ・ティモニエ)
ティエリー・フレモン( ピエレ大尉)
カトリーヌ・アレグレ( 管理人 «タ⦆ チ⦆»)
シルヴィー・テスチュー( ベラ・ジグレール)
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