原題:Paper Birds / Pájaros de papel

いつか、君と一緒に舞台に立とう。人生という名の曲とともに。

第34回モントリオール世界映画祭 観客賞受賞 第25回スペイン・アカデミー賞(ゴヤ賞)歌曲賞、新人監督賞ノミネート 第7回ラテンビート映画祭 作品賞・主演女優賞受賞 第58回サン・セバスチャン国際映画祭Made in Spain部門出品 第16回ロサンゼルスRecent Spanish Cinema出品 スペイン・ゴールデンマイク賞2010 最優秀映画賞受賞 第55回バリャドリッド国際映画祭 スペイン映画部門出品 第22回パームスプリングス国際映画祭 観客賞ノミネート 第11回トゥデラ市オペラ映画祭 観客賞・Youth賞受賞

2010年3月12日スペイン公開

2010年/スペイン/スペイン語/35mm/カラー/SR/SRD/シネマスコープ/123分/字幕翻訳:林かんな 後援:スペイン大使館、協力:セルバンテス文化センター東京 配給・宣伝:アルシネテラン

2011年8月13日、銀座テアトルシネマ他にてロードショー

(C)2010 Vers til Cinema, Globomedia & Antena 3 Films. Exclusive Distributor: IMAGINA INTERNATIONAL SALES. All Rights Reserved

公開初日 2011/08/13

配給会社名 0013

解説


パタパタと翼をはばたかせるペーパーバード。それは、二人の希望の証—。
1930年代のマドリード。内戦からフランコ独裁政権へと20世紀のスペインが迎えた悲しみの時代。スペイン内戦によって最愛の妻子を失い、癒しがたい心の傷を負った喜劇役者ホルヘ。内戦によって全てを奪われたホルヘは、両親を失った孤独な少年ミゲルと出会う。亡くした息子と同じ年頃のミゲルとの出会いが、生きる希望も気力も失くしていたホルヘの心に、生きることの意味と、未来への希望を芽生えさせる。そして、その出会いは、両親を亡くしたミゲルにとっても未来へと一筋の光となる。生きるって、哀しくて苦しいけれど、その分だけきっといいことがある。親子ではないけれど、お互いをかけがえのないものとして深い絆を育む二人の姿は、多くの観客の心を打ち、第34回モントリオール世界映画祭で観客賞を受賞した。二人の心の交流が、誰かとともに生きること、誰かがそばにいることの温もりを教えてくれる。

制作のきっかけは当時の思い出話
厳しい言語統制と思想統制が敷かれた軍事独裁政権下、映画や文学は検閲を受け、自由な表現が制限された。この時代には、多くの芸人やアーティストたちがキューバをはじめ、南米を中心とする国外へと脱出したといわれている。そんな時代を舞台にした本作の制作のきっかけは、アラゴン監督が出演と演出を務めていたTVドラマ「Medico de familia」(’95-’99)。このドラマの父親役の俳優が、撮影の合間に語った当時の思い出話を語っていたという。その時に耳にしたエピソードと、ダンサーや自転車乗り、さらにアメリカで大人気を博したスペイン人腹話術師セニョール・ウェンセなど、監督自身が祖父や父から聞いた当時の仲間たちの逸話を加え、時代に翻弄されながらも強く生き抜こうとする人々の姿を描いた。

スペインを代表するエンターテイナーたちによる珠玉の作品
監督は、代々続くサーカス・アーティストの家系で、スペインの国民的芸能一家出身のエミリオ・アラゴン。ホルヘとミゲルの間に芽生える深い絆を、温かく、そしてどこか懐かしいタッチで描く。「この作品が、私を選んだような気がする。」と語るように、スペインを代表するエンターテイナーの監督ならではの作品となっている。
主演は、個性派俳優としてスペインで活躍するイマノル・アリアス(『セクシリア』(82)『私の秘密の花』(95))。エンリケ役には、『バッド・エデュケーション』(04)『抱擁のかけら』(09)などの作品に出演し、スペインを代表する俳優の一人であるルイス・オマール。もう一人の主役である戦争孤児ミゲルには『永遠のこどもたち』(07)の天才子役ロジェール・プリンセプ。そして、劇団の歌手ロシオとして作品に華を添えるのは、存在感十分のカルメン・マチ。さらに、監督の父親でありスペインの国民的サーカス・アーティストのミリキ・アラゴンが出演。
また、監督自身の作曲による音楽には、アラ・マリキアン(ヴァイオリン)、ケパ・フンケラ(トリキティシャ)、ペペ・アベチュエラおよびホセミ・カルモナ(ギター)とスペインのトップアーティストたちが参加し、作品により深い情感を与えている。衣装ビナ・デグレ(『リミッツ・オブ・コントロール』(’09)や『BIUTIFUL ビューティフル』(’11))が担当し、魅力あるレトロクラッシックな世界観を作り上げている。

ストーリー



スペイン内戦下、マドリード。喜劇役者のホルヘは、苦しい生活ながらも、愛する妻マリアと息子ラファに恵まれ、幸せに暮らしていた。そんなある日、相方の腹話術師エンリケとの舞台を終えたホルヘは、家に帰る途中に爆撃に遭う。家へと急ぐと、そこはがれきの山となっており、愛する妻と息子はその下敷きになっていた。内戦がホルヘの全てを奪ってしまった。深い悲しみとともに、ホルヘはマドリードを離れる。内戦が終わった1年後、劇団に戻ってきたホルヘは、相方のエンリケと再会する。そして、戦争で両親を失いエンリケに引き取られていたミゲルという少年とともに3人で暮らすことになる。食べることさえままならない厳しい生活の中、何とか飢えをしのぎ、つつましく暮らす3人。そんな生活の中で、ホルヘは、亡くした息子と同じ年頃のミゲルを、息子を亡くした寂さのままに冷たく突き放してしまうのだった。それでもミゲルは、ホルヘを慕い、必死に芸を覚えようとする。
一方、スペイン内戦終了後、フランコ政権は反体制派に対して厳しい弾圧を行っていた。そして、行方不明になっていた1年間の間に反フランコ政権の襲撃事件に関与したとして、ホルヘは要注意人物としてマークされてしまう。さらに、軍はホルヘの監視のために、ホルヘとエンリケが所属する劇団にパストールを内偵者として送り込む。
とうのたった歌手のロシオ、メガネなしでは舞台から落ちてしまう一輪車乗りのピサロ、行き場のないダンサーのメルセデス、犬の曲芸の老夫婦、大道具のペドロ。ホルヘとエンリケの所属する劇団には、様々な人々がいる。彼らもまた、貧しいながらも明るさと誇りを失わずに生きている。ホルヘとエンリケは、そんな彼らともに舞台に立ち、歌や踊りそして笑いで観客たちの心に灯をともしていく。そんなホルヘたちの劇場や巡業先にやって来ては、執拗に反体制派摘発の圧力をかける軍人たち。彼らの監視におびえるエンリケは、「ここに未来はない」と言い、しきりに海外への脱出を主張するが、ホルヘはそれを断り続ける。
やがて首都マドリードを出て、巡業へと旅立つ劇団には、様々な出会いと別れがやって来る。歌手のロシオは巡業先の村長と一緒になることを決め引退を決断する。そして、犬を失った夫婦は劇団を離れ、街へと帰っていく。そんな日々の中で、ホルヘはミゲルに喜劇役者としての才能を見出し、芸を教え始める。そんなある日、劇場で上映されたニュースフィルムの中に、ミゲルは亡くなったはずの母親の姿を見つける。「ママだ!生きてる!!」と喜ぶミゲルに、「期待するな 見つからないかも。」というホルヘだったが、手を尽くしてミゲルの母親を見つけ出し、ミゲルが折った紙の鳥を手に、1人で会いに行く。しかし彼女は、内戦のショックで息子の記憶を全て失ってしまっていた。そんな彼女に、ホルヘはミゲルの素質を褒め、自分がミゲルの面倒をみると話す。自分を父親のように慕い、「楽器の弾き方も、手品のタネも、喜劇も、ホルヘから習いたい。」というミゲルを、ホルヘは息子のように思い始めていた。そして、ミゲルに「いつか、2人だけのネタを作ろう」というホルヘ。ミゲルの存在が、深い悲しみを抱え、生きる希望を失くした彼の心の傷をいつしか癒していたのだった。
 そんなある日、軍の命令によって、ホルヘたちの劇団は独裁者フランコ総統の前で公演を行うことになる。そして、いよいよ本番という時、ホルヘを巻き込んだ陰謀が明らかになる。それを知ったホルヘは、ミゲルとエンリケとともに、スペインを出て、ブエノスアイレスへ脱出することをついに決意する。ホルヘとミゲルとエンリケ。家族のように過ごしてきた彼らに待ち受ける未来とは—。

スタッフ

監督:エミリオ・アラゴン
エグゼクティププロデューサー:サンティアゴ・デ・ラ・リカ、エミリオ・アラゴン
プロデューサー:エミリオ・アラゴン、メルセデス・ガメロ
脚本:フェルナンド・カステッツ、エミリオ・アラゴン
キャスティング:ルイス・サン・ナルシソ、トヌチャ・ビダル、アンドレス・クエンカ
アートディレクション:フェルナンド・ゴンザレス
衣装:ビナ・デグレ
メイク:アナ・ロペス=プイグセーバー
ヘアメイク:マーラ・コヤーソ
アシスタント・ディレクター:ペドロ・ラザガ
プロダクションマネージャー:ラケール・ディアス
ライブサウンドミキシング:セルヒオ・バーマン、マーク・オーツ、ペラヨ・グティエレス、ファン・ヴィナダー
作曲:エミリオ・アラゴン
ヴァイオリン:アラ・マリキアン
トリキティシャ:ケパ・フンケラ
ギター:ペペ・アビチュエラ ホセミ・カルモナ

編集:ホセ・サルセド
撮影:ダビ・オメデス A.E.C.
ラインプロデューサー Antena 3 Films:ペペ・トレスクサ
プロダクションマネージャー:カルロス・アポリナリオ

キャスト

イマノル・アリアス
ルイス・オマール
ロジェール・プリンセプ
カルメン・マチ
フェルナンド・カヨ
ディエゴ・マルティン
オリオール・ビラ
ルイス・バレラ
ホセ・アンヘル・エヒド
ハビ・コール
コンチャ・イダルゴ
アナ・クエスタ
ペドロ・シベラ
パコ・メリノ
ロラ・バルドリッチ

特別出演
アスンシオン・バラゲール

特別出演
クリスティナ・マルコス

特別出演
エミリオ・アラゴン・ベルムデス“ミリキ”

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