人を裁くことは、同時に自分も裁かれることではないか? 苦悩する裁判官の姿を通して描かれる、人を裁くことの困難と命の尊さ。

2010年/日本映画/35mm/1時間57分/DTSステレオ 配給:スローラーナー

2010年11月19日よりDVDリリース 2010年5月29日、渋谷ユーロスペースと銀座シネパトスにてロードショー

(C) BOX 製作プロジェクト 2010

公開初日 2010/05/29

配給会社名 0048

解説


人を裁くことは、同時に自分も裁かれることではないか?
苦悩する裁判官の姿を通して描かれる、人を裁くことの困難と命の尊さ。

昭和41年6月30日未明、静岡県清水市で味噌製造会社専務の自宅が放火され、一家四人が殺害された。静岡県警は、従業員で元プロボクサーの袴田巌を容疑者として逮捕。巌は、犯行を頑強に否認していたが、勾留期限3日前に一転自白。熊本典道は、主任判事として、この〈袴田事件〉の裁判を担当することになった。しかし、巌は裁判で犯行を全面否認。典道もまた長時間にわたる取り調べや、供述が二転三転することから警察の捜査に疑問を抱き始める。事件は冤罪なのか、それとも巌が真犯人なのか? 乏しい物証。強制の疑いがある自白。しかし、警察によって犯行後1年も経つにも関わらず〈新証拠〉が提出される…。困難を極めた裁判は、結果、裁判官の合議の末1対2で死刑判決が決定。典道は、巌の無罪を確信しながらも、死刑の判決文を書かなければならないこととなった。裁判官を辞職し、苦悩する典道は、巌の無罪を実証しようと動き始める…。
人は人を裁くことができるのだろうか? 人を裁くことは、同時に自分も裁かれることではないか? 死刑確定後の現在もなお、冤罪を叫び、再審請求が続けられている〈袴田事件〉。苦悩する裁判官の姿を通し、人を裁くことの困難と命の尊さを描いた傑作が誕生した。

『禅 ZEN』の高橋伴明監督最新作に日本映画のベテランスタッフが集結。
美しい映像と骨太な世界観を持つ傑作の誕生!

『BOX 袴田事件 命とは』のメガホンをとったのは、道元禅師を描いた『禅 ZEN』(08)をはじめ、『光の雨』(01)、『愛の新世界』(94)、『TATOO〈刺青〉あり』(82)で知られる高橋伴明監督。監督は、「裁判員制度が始まって、まず思ったのは人を裁くことの重さということです。もし間違いが冤罪につながり、ひとりの人生を奪ったとしたら、それはとりかえしのつかない罪であり、科した刑以上の量刑をその人は負うべきでしょう。そんな思いを〈袴田事件〉を借りて映画にしたいのです。」と、この映画に対する熱い思いを語る。そんな監督のもとに、撮影に林淳一郎(森淳一監督『重力ピエロ』、黒沢清監督『ニンゲン合格』『回路』)や美術の丸尾知行(塩田明彦監督『どろろ』、黒沢清監督『CURE』)をはじめとする日本映画のベテランスタッフが集結。美しく重厚な『BOX 袴田事件 命とは』の世界を作り出している。

萩原聖人、新井浩文をはじめ、企画に共鳴した豪華な共演陣が実現!!

苦悩する判事・熊本典道を演じるのは、『光の雨』以来の高橋伴明監督との顔合わせとなる萩原聖人。豊田利晃監督『蘇りの血』(09)、大森立嗣監督『ケンタとジュンとカヨちゃんの国』(6月公開)の新井浩文が、無罪を訴える元ボクサー・袴田巌を演じるほか、葉月里緒奈、村野武範、保阪尚希、ダンカン、須賀貴匡、中村優子、雛形あきこ、大杉 漣、國村 隼、志村東吾、吉村実子、岸部一徳 、塩見三省、石橋凌といった豪華な共演陣が、この企画に共鳴して実現した。
2009年5月21日、一般国民が審判を下す裁判員制度が導入され、『BOX 袴田事件 命とは』に描かれた熊本典道の苦悩、人が人を裁くことの重さは、同時に現実のわたしたち自身が抱える問題となった。

ストーリー




昭和11年、二人の男の子が生を受けた。
ひとりは佐賀県鳥栖市で生まれた熊本典道。ひとりは静岡県浜名郡雄踏町で生まれた袴田巌。
太平洋戦争を経て、戦後へ。
典道は司法試験に合格し、将来を嘱望された裁判官として静岡地方裁判所へ赴任した。
巌は、アマチュアボクシングからプロゴクシングへ。期待されながらも挫折。静岡県清水市の味噌工場で働いていた。
二人の人生が、交わることなどありえなかったのだ。

昭和41年6月30日未明。清水市の味噌工場が放火され、その焼け跡から一家四人が刺殺され焼死体で発見された。捜査にあたった立松刑事は、容疑者として一人の男に目星をつけた。元プロボクサーであり、味噌工場で働いていた袴田巌である。従業員のほとんどが橋口味噌工場の親戚や友達ばかりなのに、巌だけが遠州生まれのよそ者であること。殺された専務は柔道2段だったが、それとわたりあえる格闘技をやっていた者であること。巌は妻に逃げられ、多少の借金があるのではないかと噂されていたこと…。物証は少なく、捜査は難航を極めていた。警察は巌を一度は逮捕するが、証拠不十分で釈放。しかし、再度、巌を逮捕。犯行を頑強に否認していた巌だったが勾留期限3日前に一転自白、起訴された。

典道は、主任判事としてこの事件の裁判を担当することになった。
しかし、巌は第1回公判で起訴事実を全面否認。以後一貫して無実を主張することになる。混沌とする裁判。その中で、警察の取り調べに疑問を持った典道は、その供述調書を調べはじめる。すると、最初は殺された橋口の妻と肉体関係を持った巌が、妻から頼まれてやった犯行だという自白が、幼い子どもと老母と一緒に暮らすための資金欲しさからの犯行へと、自白の犯行動機が日替わりで変わっているのだった。警察が巌の自白を強要した。典道は、自白の信憑性を疑ったのだ。立松刑事をはじめ、幾人もの関係者が証言したが、決め手を欠いた裁判は長期にわたった。

しかし、犯行から1年あまりが過ぎた昭和42年9月13日、法廷に警察から新証拠が提出されたのだ。裁判に衝撃が走った。事件当時に捜査した工場の味噌樽をもう一度捜査したところ、血染めの犯行着衣が発見されたというのだ。巌が真犯人なのか? それとも証拠は警察の捏造なのか? 

裁判は巌の有罪に傾いた。典道は、自白だけでなく、新証拠にも意図的なものを感じ、巌に有罪判決をくだすことに反対した。「この五点の衣類に、何らかの意図的なものを私は率直に感じます。もし、これが新たなる犯罪を生んでしまったらなら、それは我々の罪ではないのですか?」
この裁判で、われわれ日本の法曹界が裁かれている。常に法廷は裁判官が裁かれている。

しかし、裁判官の多数決で、巌は有罪という結論が出た。三人の裁判官のうち有罪判決に反対したのは典道ひとりであった。しかも、反対した典道が主任判事である慣例として、死刑判決を言い渡す判決文を書かなければならなかった…。

典道の苦しみが始まった。この裁判の後、典道は裁判官を辞職。大学で刑事訴訟法を抗議しながらも、自ら警察による証拠を実証し、無罪にするために有効だと思われる実験の報告を弁護士に送った。しかし、それでも典道の苦しみは去ることがなかった。

「もういかんちゃ…俺は殺人犯と一緒っちゃ…俺を死刑にしてくれんね」

昭和55年11月19日、最高裁上告棄却。
12月12日、巌の死刑が確定した…。
袴田事件とは?

袴田事件(はかまだじけん)は、1966年に静岡県清水市(現静岡市清水区)で発生した強盗殺人放火事件、およびその裁判で死刑が確定した袴田 巖(はかまだ いわお、1936年3月10日-)死刑囚が冤罪を訴え再審を請求している事件である。2009年5月現在、最高裁判所に出した再審請求は棄却されている。

スタッフ

監督・脚本: 高橋伴明
企画: 忠叡
共同エグセクティブプロデューサー: 中島仁 / 加治潤一
プロデューサー: 西健二郎 / 林淳一郎
アソシエイトプロデューサー: 大原盛雄
エグセクティブプロデューサー: 後藤正人
脚本: 夏井辰徳
音楽: 林祐介
撮影: 林淳一郎
照明: 豊見山明長
録音: 福田伸
美術: 丸尾知行
VFXスーパーバイザー: 立石勝
記録: 阿保知香子
編集: 菊池純一
監督補: 小久保利己
制作担当: 榊田茂樹

制作プロダクション:ブリックス
配給:スローラーナー
製作:BOX製作プロジェクト

キャスト

萩原聖人
新井浩文
葉月里緒奈
村野武範
保阪尚希
ダンカン
須賀貴匡
中村優子
雛形あきこ
大杉漣
國村隼
志村東吾
吉村実子
岸部一徳
塩見三省
石橋凌

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