現代を生きる〝家族〟に寄り添いながら、 その希望を描く感動作。

2010年/日本/カラー/シネマスコープ/ドルビーデジタル/2時間6分 配給:松竹

2010年08月04日よりDVDリリース 2010年1月30日(土)より全国ロードショー

(C)2010「おとうと」製作委員会

公開初日 2010/01/30

配給会社名 0003

解説



家族の絆とは、人生とは、別れとは何かを切々と問いかける、笑いと涙の物語。

山田洋次監督10年ぶりの現代劇の集大成。
最新作『おとうと』が遂に完成。

『家族』、『幸福の黄色いハンカチ』、『息子』、『学校』シリーズ、そして『男はつらいよ』シリーズで、その時代、時代の日本の家族を描き続けてきた山田洋次監督。いつの時代も変わらない家族の絆を描く一方、社会が抱える問題にも鋭いまなざしを向けてきました。『十五才 学校Ⅳ』以来、10年ぶりの現代劇となる最新作『おとうと』でも「看取り」や「ターミナルケア」などの現代的な問題に触れています。
本作は、東京で堅実に生きてきた姉と、大阪で何かと問題ばかりを起こしてきた弟との、再会と別れを優しく切々と謳いあげる、笑いと涙にあふれた物語です。

東京の郊外で、夫亡きあと小さな薬局を営み、一人娘の小春を育ててきた姉・吟子。大阪で何ひとつ成し遂げないまま歳を重ねてしまった弟・鉄郎。音信不通だった彼が突然、小春の結婚式に現れる。以前も吟子の夫の十三回忌で、酔っ払い大暴れした鉄郎。今日は一滴も飲まないと約束するが、酒を目の前にした鉄郎は我慢できず、酔っぱらって大騒ぎ、披露宴を台無しにしてしまう。激怒する身内の中、鉄郎をかばうのは吟子だけだったが、後日、ある出来事がきっかけで、吟子は鉄郎に絶縁を言い渡してしまう。肩を落として出ていく鉄郎の背中に不吉な予感を覚える吟子だったが……。
姉の吟子に扮するのは、吉永小百合。『母べえ』に続く、山田洋次監督作品での主演です。前作の重厚なテーマから一転、本作では、冗談ばかりの弟と真面目な姉の、微妙にかみ合わないおかしさを軽やかに演じると同時に、賢い姉であり母である吟子の家族への愛情を全身からにじませ、スクリーンに優しさと温かみを添えています。
愚かな弟の鉄郎には、『私は貝になりたい』『ディア・ドクター』の笑福亭鶴瓶。やはり『母べえ』に続く山田作品出演になります。問題ばかり起こしてはいるけれど、愛すべき存在である彼の姿に、『男はつらいよ』の“寅さん”が重なります。軽妙洒脱なしゃべりと、無邪気な笑顔、時折見せる傷ついた男の険しい表情のバランスは、彼にしか演じられなかったでしょう。
吟子の娘、小春には、今や日本映画界になくてはならない若手女優となった『フラガール』『百万円と苦虫女』の蒼井優。エリートとの結婚に破れ、新たな愛を見つけるなかで、家族の絆の深さを知る小春の成長を、繊細に演じ切っています。小春の幼なじみで大工の亨には、『それでもボクはやってない』『硫黄島からの手紙』の加瀬亮。結婚の失敗に傷ついた小春を優しく見守る青年役を好演しました。
また、絶妙な間合いで鉄郎さえ絶句させる吟子の義母に加藤治子、厳格な兄に小林稔侍が扮し、小日向文世、石田ゆり子、笹野高史、森本レオ、キムラ緑子、近藤公園など、錚々たる顔ぶれが出演しています。

喧嘩したり、許したりを繰り返す家族に、いつかは必ず訪れる最期の別れ。どのように家族を看取り、現実を受け入れていくのか。戦後の昭和に生まれ育った姉と弟の切りようにも切れない絆を、バブル景気の直前に生まれた娘の眼を通して描く本作で、私たちがスクリーンに見るのは、現在とこれからの日本の家族の姿です。

家族に会いたくなる、人恋しくなる──『おとうと』は、そんな映画です。

オマージュを捧げる市川崑監督の『おとうと』から半世紀を経過した2010年、待望の公開を迎えます。

ストーリー



みんな、
どうしようもないあなたが、
好きでした──

東京の私鉄沿線、商店街の一角にある高野薬局。夫を早くに亡くした高野吟子(吉永小百合)は、女手ひとつで一人娘の小春(蒼井優)を育てながら、義母の絹代(加藤治子)との三人で暮らしている。小春とエリート医師との結婚が決まり、一家は幸せの頂点にあった。
結婚式の前日、吟子は宛先人不明で戻ってきた招待状を受け取る。大阪で役者をしているはずの弟、鉄郎(笑福亭鶴瓶)だ。酒を飲んで大暴れした吟子の夫の十三回忌を最後に、音信不通になっていた。鉄郎が来ないと分かった絹代は「ああ良かった」と安堵の表情を浮かべるのだった。
式の当日、吟子の兄の庄平(小林稔侍)は、「お世話になりました」と母に頭を下げる小春を見ただけで涙ぐむ始末。ところが、和やかに始まった披露宴に暗雲が──。羽織袴の鉄郎が、汗だくになって駆けつけたのだ。庄平に酒を飲むなと強く釘を刺されるが、我慢できたのは最初の数十分だけ。若者に交じって酒を一気飲み、頼まれてもいないスピーチでマイクを独占、ディナーショーさながらに会場を練り歩いて浪曲の披露、あげくはテーブルをひっくり返し……と大暴れ。新郎の両親にさんざん文句を言われた庄平は、鉄郎と縁を切ると宣言する。
思えば、吟子はずっと鉄郎をかばってきた。鉄郎が学校でタバコを吸えば謝りに行き、万引きしては警察に引き取りにも行った。「いい年した弟のために謝りに行くの、うんざりよ」そう言いながらも、翌朝、大阪に帰る電車賃をそっと渡した。
小春の結婚生活は長くは続かなかった。育った環境の違い、夫の多忙、そしておそらくは鉄郎の件も。やがて離婚が成立し、再び高野家で三人の暮らしが始まった。
ある夏の日のこと、鉄郎の恋人だという女性が、借金を返してほしいと高野薬局にやってきた。鉄郎直筆の借用書を見せ、鉄郎と連絡が取れないので、いくらかだけでも返してもらえないかと申し訳なさそうにする彼女を哀れに思い、吟子はなけなしの預金を引き出すと、全額手渡すのだった。
ほどなく、鉄郎が東京に現れる。吟子の様子から、すべてを察した鉄郎は言い訳をするが、その不誠実な言動に、「もうこれきりにして、お姉ちゃんなんて呼ぶのは」と、吟子は鉄郎との絶縁を言い渡す。「わいみたいな、どないにもならんごんたくれの惨めな気持なんか分かってもらえへんのや」鉄郎の消息はぷっつりと途絶えてしまった。
季節が流れ、小春をひそかに想い続けていた幼なじみで大工の長田亨(加瀬亮)が、何かと高野薬局に顔を出すようになり、小春の表情にも明るさが戻ってきた。
穏やかな日々が過ぎ、高野家では鉄郎のことが話題に上ることもなくなっていった。しかし、吟子だけは、最後に会った時の顔色の悪い鉄郎の姿が忘れられず、心配で大阪の警察に捜索願を出していたのだった。
吟子の心配は的中。消息不明だった鉄郎が、救急車で病院に運ばれたという連絡が入った。反対する小春を諭して大阪に向かう吟子。駆けつけた大阪で、吟子の恐れは現実となる。
鉄郎の身体中にガンが転移、あと何カ月も生きられないというのだ。
吟子は去来する想いを胸に、鉄郎と再会を果たすが──。

スタッフ

監督:山田洋次
脚本:山田洋次・平松恵美子
撮影:近森眞史(JSC)
美術:出川三男
音楽:冨田勲
照明:渡邊孝一
編集:石井巌
録音:岸田和美
衣裳:松田和夫
装飾:光
助監督:花輪金一
音楽プロデューサー:重之
宣伝プロデューサー:因藤靖久・飯田桂介
スチール:金田正・中原一彦
製作担当:相場貴和
製作主任:杉浦敬
ラインプロデューサー:斉藤朋彦
プロデューサー:深澤宏・山本一郎・田村健一
製作:松竹、住友商事、テレビ朝日、博報堂DYメディアパートナーズ、衛星劇場、デンナーシステムズ、
   日販、TOKYO FM、Yahoo! JAPAN、読売新聞、朝日放送、名古屋テレビ放送、木下工務店
制作・配給:松竹株式会社

キャスト

吉永小百合
笑福亭鶴瓶
蒼井優
加瀬亮

小林稔侍
森本レオ
茅島成美
ラサール石井
佐藤蛾次郎
池乃めだか
田中壮太郎
キムラ緑子
笹野高史

小日向文世
横山あきお
近藤公園
石田ゆり子
加藤治子

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