グラン・トリノ
原題:GRAN TORINO
まちがいだらけのこの世界で、私たちは迷っている。 信頼できる誰かが、生きる道を教えてくれたなら…… あなたは人生の終わりを、どう生きますか?
2009年1月9日全米公開
2008年/アメリカ/カラー/上映時間117分/6巻/3,198m/シネマスコープサイズ/SRD/DTS/SDDS/字幕:戸田奈津子 配給:ワーナー・ブラザース映画
2014年11月12日よりDVDリリース 2009年09月16日よりDVDリリース 2009年4月25日(土) 丸の内ピカデリーほか全国ロードショー
©2009 Warner Bros. Entertainment Inc. and Village Roadshow Films (BVI) Limited. All Rights Reserved
公開初日 2009/04/25
配給会社名 0085
解説
俳優としても、監督としてもイーストウッド史上最高のオープニング成績で
全米初登場NO.1。『硫黄島からの手紙』から2年──。イーストウッドが
“人生を賭けた演技 –ウォールストリート・ジャーナル紙”で贈る衝撃の感動作
ついに、名優クリント・イーストウッドが、帰ってきた。『許されざる者』でアカデミー賞®監督賞、作品賞をW受賞。『ミリオンダラー・ベイビー』でアカデミー賞®主要4部門に輝いた彼の待望の主演作は、イーストウッドが関わった全作品のなかで、No.1のオープニングを記録した『グラン・トリノ』だ。
自分の生き方を貫き通してきた頑固な老人、ウォルト・コワルスキー。フォードの自動車工の仕事をリタイアしてからは、自宅を修繕し、庭の芝生を刈り、ひと仕事終えるとビールを飲み、月に一度床屋へ行く、そんな決まりきった日々を送っている。妻に先立たれてからは、ふたりの息子と孫たちも寄り付こうとしない。心を開ける相手は、愛犬のデイジーだけだ。
そんなウォルトの日常に、異変が起こる。隣に住むアジア系移民モン族の少年タオが、ウォルトが何より大切にしている72年製のヴィンテージ・カー〈グラン・トリノ〉を盗もうとしたのだ。ライフルで撃退されたタオは、母親と姉に連れられて償いに働かせてほしいと謝りに来る。それをきっかけに、ウォルトとタオの不思議な師弟関係が始まった。
学校にも行かず仕事もなく、手本となる父親もいないタオは、ウォルトを見習うことで労働の喜びを知り、男としての自信をつかんでいく。偏狭だったウォルトもまた、タオを一人前にするという目標に生きがいを感じ、見違えるように変わっていく。しかし、タオは愚かな若者たちの争いに巻き込まれてしまう。タオに行くべき道を示すため、ウォルトがつけた最後の決着とは……?
不安に満ちた世界の、先が見えない時代に、私たちは生きている。“人生はいいものだ。生きてきて良かった”と、前を歩く誰かに示してほしい──そんな祈りにも似た想いに応えるのが、人生の終わりに初めて生きる喜びを見つけたウォルトだ。彼からの贈り物である、衝撃のラスト──どうかきっちりと見届けてほしい。
演技から遠ざかっていたイーストウッドの、新境地にして最高の当たり役
映画史上最も頑固で口が悪く、最も偏見に満ちたキャラクター、ウォルト。神を信じず、人に心を許さない。ギャングを気取った無礼な若者たちには、白人、黒人、ヒスパニック、アジア系、お構いなしに罵声を浴びせ、必要ならば銃を抜く。自宅の芝生に一歩でも侵入されれば、問答無用で磨き上げたM-1ライフルを突きつける。相手がたとえ孫娘でも、気に入らなければ唾を吐く──
並大抵の俳優なら、しり込みしてしまうような役どころだ。
なぜ、イーストウッドは、俳優人生の最終章にさしかかった今、これほど強烈な役を選んだのか? じつは驚くべきことに、イーストウッドは「もう俳優業は控えよう」と考えていたと言う。そんな時、これがデビュー作の新人、ニック・シェンクの脚本を読み、「私を思い浮かべて書いたのではないかと思うような男だ」と深く共感、監督・主演を決めたのだと言う。
ではいったい、イーストウッドは、ウォルトのどこに共感したのか? 物語が進むにつれて、私たちにもその答えが見えてくる。偏狭さという硬い殻の中に閉じ込められていた真のウォルトが、徐々に現われてくるのだ。朝鮮戦争での自分のおこないに対して抱く、深い罪悪感。まっとうな道に導くと決めたタオに対して抱く、強い責任感。そんなウォルトのやさしく慈愛に満ちた心を引き出したのは、どんな相手とも本音で付き合うモン族の人たちだ。監督イーストウッドは、ウォルトの劇的に変化していく過程を、モン族の人たちとのユーモアに溢れたやり取りで描き出す。
ウォルトとの運命の出会いに従って、再びカメラの前に立ったイーストウッド。自分自身を投影したこの演技には、78年間生きてきた、人間イーストウッドのすべてが込められている。
『硫黄島からの手紙』に続き、アジアに目を向けた物語とそれを支えるスタッフ
ラオス、ベトナム、タイなどアジア各地に居住し、厳しい歴史を歩んできたモン族の真の姿を伝えるため、イーストウッドは実際のモン族の人々を起用した。イーストウッドならではの伝説の監督術で、演技経験がまったくないキャストたちの、自然で生き生きとした姿を捉えている。
イーストウッドの意図を瞬時に理解する、馴染みのスタッフが集まった。撮影監督は、これが7作目のイーストウッド作品となるトム・スターン。美術は、『硫黄島からの手紙』『チェンジリング』に続くジェイムズ・J・ムラカミ。衣装は、20年以上にわたってイーストウッド作品に関わってきたデボラ・ホッパー。音楽は、『ミスティック・リバー』以降の作品を手がける、イーストウッドの実子カイル・イーストウッドと、マイケル・スティーブンス。心に染みわたる主題歌は、英国のジャズシンガー、ジェイミー・カラムとドン・ランナーの演奏。
ストーリー
男は迷っていた、人生の締めくくり方を──。
少年は知らなかった、人生の始め方を──。
そして、二人は出会った。
ウォルト・コワルスキー(クリント・イーストウッド)には、自分だけの正義があった。それに外れるものは、何もかも許せない頑固で偏狭な男だ。
妻の葬儀では、孫娘の露出過剰なファッションにキレ、大勢の参列者は「会食に出すハムを食いに来ただけだ」と一刀両断。説教が気に入らない新米神父には、「頭でっかちの童貞」と毒づく。ふたりの息子たちは、式が済むと逃げるように帰って行った。
もっと、許せないことがある。近隣に暮らす、ウォルトが偏見を隠さないアジア系の移民たちだ。大人たちは家屋の手入れをせず、若者たちはギャングを気取って異人種間の小競り合いを繰り返している。
彼らに罵声を浴びせる以外のウォルトの日常は、いたって退屈だ。自宅を修繕し、芝生を刈り、愛犬デイジーに語りかけながらビールを飲み、月に一度は床屋へ行く。そんな彼の唯一の楽しみは、磨き上げた愛車〈グラン・トリノ〉を眺めること。定年までフォードの自動車工を勤め上げたウォルトが、1972年に自らステアリング・コラムを取り付けたヴィンテージ・カーだ。
その宝物を盗もうとする、命知らずの少年が現われる。隣に住むモン族のタオだ。学校にも行かず仕事もないタオは、従兄のスパイダーに不良グループへ引き込まれ、車を盗めと命令される。夜中にガレージに忍び込んだタオは、ウォルトにM-1ライフルを向けられて、逃げ出した。ウォルトは、朝鮮戦争で使い込んだそのライフルを、タオにヤキを入れに来たスパイダーたちにも突きつける。彼は自宅の庭に侵入されて激怒しただけなのだが、タオを不良たちから救う結果になるのだった。
翌日、タオの母と姉のスー、そして親戚までが、花に植木、料理にお菓子とお礼を持って押しかけるが、ウォルトには迷惑なだけだった。数日後、ウォルトはスーが黒人の二人組に絡まれているところを助けてやる。朗らかで機転の利くスーとの会話は、ウォルト自身意外なことにじつに楽しいものだった。
また別の日、ウォルトはスーから自宅に招待される。ビールに釣られて訪ねると、最初は気まずい空気が流れるが、祈祷師に心の中をズバリ言い当てられ、女たちに美味しい料理を振る舞われ、ウォルトは思わず「どうにもならない身内より、ここの連中のほうが身近に思える」と呟く。
今度はスーと母親がウォルトを訪ね、お詫びにタオを働かせてほしいと強引に頼みこむ。渋々引き受けたウォルトとタオの不思議な交流が始まった。近隣の家の修繕を命じられたタオは、労働の喜びに目覚めていく。手本となる父親がいないタオにとって、ウォルトはまさに人生の師だ。ウォルトもまた、生き生きと働くタオを見直し始める。約束の日数が過ぎても、タオは何かとウォルトを手伝った。
タオに建設現場の仕事を世話し、自慢の工具を貸し与えるウォルト。今やウォルトは、タオを一人前の男にするという人生の最後にふさわ相応しい仕事に、生きる喜びを感じていた。何もかもが順調に見えた時、スパイダーたちの嫌がらせが再燃する。ウォルトが受けて立ったばかりに争いはさらに加速し、ウォルトはタオと家族の命の危険さえ感じ始める。タオとスーの未来を守るため、ウォルトがつけた決着とは……?
スタッフ
監督:クリント・イーストウッド
製作:ロバート・ローレンツ、ビル・ガーバー
脚本:ニック・シェンク
原案:デイブ・ジョハンソン
製作総指揮:ジェネット・カーン、アダム・リッチマン、ティム・ムーア、ブルース・バーマン
撮影:トム・スターン
美術:ジェイムズ・J・ムラカミ
編集:ゲイリー・ローチ
衣装:デボラ・ホッパー
音楽:カイル・イーストウッド、マイケル・スティーブンス
キャスト
クリント・イーストウッド(ウォルト・コワルスキー)
ビー・バン(タオ・ロー)
アーニー・ハー(スー・ロー)
クリストファー・カーリー(ヤノビッチ神父)
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