PVC-1 余命85分
原題:PVC-1
2007年カンヌ国際映画祭ローマ市賞 2007年テッサロニキ国際映画祭審査員特別賞、観客賞、最優秀男優賞、国際映画批評家連盟賞 2008年バンコク国際映画祭最優秀作品賞 ほか受賞
2007年/コロンビア/ヴィスタ/ドルビーSRD/カラー/85分/字幕翻訳:岩辺いずみ/提供:トランスフォーマー/ 配給:トランスフォーマー+トルネード・フィルム 宣伝:トルネード・フィルム
2009年3月14日(土)より、シネセゾン渋谷にてレイトショー ※他全国順次公開
(c) 2008 The Independent Film Channel LLC. all rights reserved
公開初日 2009/03/14
配給会社名 0248/0633
解説
85分ワンカット、リアルタイムの戦慄。全編にみなぎる圧倒的臨場感と一瞬たりとも眼が離せない緊張感。冷徹なカメラがありのままに写し出す、生きるための究極の試練と死闘。未来の見えない時代、映画の常識を覆す挑戦的な表現で描かれる理不尽な暴力への底なしの不安と一触即発の恐怖。極限状況で試される夫婦の愛、親子の愛。そして、人間の命が金のために取引される世界最悪の犯罪地帯から叩きつける強烈な映像メッセージ。世界各国の映画祭を凍りつかせるとともに、数々の賞賛をあびている衝撃の問題作。それが、『PVC-1 余命85分』だ。
反政府左翼ゲリラや極右武装勢力、巨大麻薬カルテルが入り乱れ、政府軍や国家警察との紛争を繰り広げる不安定な治安の中、90年代には世界で最も殺人発生率の高い国として悪名を馳せ、現在も世界の誘拐事件の70%近くがこの国で起こっているといわれる南米の国、コロンビア。
2000年、その国で驚くほど凶悪で、信じられないほど卑劣な誘拐事件が発生した。これはその実話を基に創作された物語である。町から離れた山間部で農園と養鶏場を経営する一家を突如、武装したグループが襲撃し、一家の母親の首にリモコン付きの爆弾を装着すると多額の身代金を要求して姿を消した。一家は当局に連絡し、国家警察の爆弾処理のエキスパートが処理を開始するが…。
「PVC-1」とはポリビニール・クライド(ポリ塩化ビニール)の略。被害者の首に装着されたドーナツ型をした爆弾入りのパイプの素材である。
スタソロプロス監督はこの素材を題名に選んだ理由を次のように語っている。
「この映画のテーマが“限りある命”であり、ここでは爆弾がその限りある命を象徴しています」と語る。「外すことのできない爆弾を体に仕掛けられるというのは、その人間が死を宿命づけられたことを意味します。だが、われわれは皆、生まれた瞬間から止めることのできない時限爆弾を仕掛けられているようなものなのです。人生を支配するのは時間であり、時間を変えることはできません。私はその本質を軸に試練と闘う人間の姿を描きたかったのです」
この映画は決して遠い国の出来事ではない。現代社会を生きる者の誰もが突然の暴力や理不尽な犯罪、不慮の事故の被害者になる可能性から逃れることはできない。これはまさに、今日あなたに起こるかもしれない本物の恐怖なのである。
製作、監督、脚本および、スティディカムでの撮影を自ら手掛け、この映画で長編監督デビューを飾ったのは全世界注目の新鋭スピロス・スタソロプロス、29歳(本作完成時)。ギリシャ出身で7歳のときに家族と共にコロンビアに移住した彼は、幼いころからビデオによる映画製作を開始、14歳のとき製作した短編が賞を取り、コロンビア全土にテレビ放映されて脚光を浴び、その後アメリカで本格的に映画製作を学んだ。
「85分間」カットなく続けられる物語にリアリティを持たせ、画面のテンションをより高めるために、スタソロプロス監督は主要キャストに南米の映画・演劇界で活躍する最高の俳優を選び、綿密な計画と徹底的なリハーサルを積んで撮影に臨んだ。爆弾を装着され体力と精神力の限界で生死の境をさまよう母親オフェリアにキューバの舞台女優メリダ・ウルキーア、妻を励まし、温かく見守る夫シモンにコロンビアの映画、テレビで活躍するダニエル・パエス。コロンビア国家警察の爆弾処理のエキスパート、ハイメ中尉を演じてテッサロニキ国際映画祭最優秀男優賞に輝いたのはコロンビアの名優アルベルト・ソノルサ。
本作は2007年カンヌ国際映画祭監督週間で上映されローマ市賞を受賞したのをはじめ、2007年テッサロニキ国際映画祭審査員特別賞、観客賞、最優秀男優賞、国際映画批評家連盟賞、2008年バンコク国際映画祭最優秀作品賞などを受賞している。
ストーリー
ある日の午後、コロンビアのクンディナマルカ県の郊外。山道を走る一台のジープに乗った4人の男と1人の女。その一人は何かが入ったバックを慎重に抱えていた。やがて彼らは車を止め、布で顔を隠し、銃を手にすると、その地区で農園と養鶏場を経営するバルデス家の敷地へと足を踏み入れた。
バルデス家は、シモンとオフェリア夫妻とその長女ロシータ、長男マリアーノ、次女アンジェリータの5人家族だった。犯人たちは一家の不意を衝いて家に侵入し、銃を突きつけて家族全員を縛り上げると、1500万ペソという法外な身代金を要求した。夫妻はそんな大金などどこにも無いと犯人の説得を試みるが、犯人たちはまるで聞き入れず、バッグから大きなドーナツ型のチューブを取り出してオフェリアの首に装着すると、1本のカセットテープを残して姿を消した。
シモンがカセットテープを再生すると、そこにはオフェリアの首に付けられたものが遠隔操作のできる爆弾で、もしそれを外そうとしたり、警察に通報したり、あるいは身代金を支払わなければ、それを爆発させて家族全員を殺害するという強迫声明が吹きこまれていた。
あまりにも突然で理不尽な要求に一家は途方に暮れ、絶望した。彼らにはそのような大金を工面できる方法など考えつかなかった。オフェリアは気丈にもマリアーノに「親戚に電話して、警察に通報してもらうように」と命じ、自らはとにかくシモンと一緒に街へ行き、装置を外せる人を探すことにした。夫妻は隣人のラモンに街まで車に乗せて欲しいと頼むが、ラモンはオフェリアの首に付けられているものが爆弾だと知ると協力を拒否した。そのとき、電話を終えたマリアーノが走ってきた。彼は両親に警察の爆弾処理担当者が15分後に村はずれの給水所まで救助に来てくれることを伝えた。
夫妻と長女ロシータの3人はトロッコに乗り、林を抜け、川を渡り、救助隊の待つ場所を目指した。マリアーノは妹のアンジェリータと共に家で待機した。なりふり構わず、死に物狂いで目的地を目指す3人。爆弾は時折不気味な警告音を発し、彼らを震え上がらせた。ようやく待合わせ場所に到着した3人が救助隊を待っていると、コロンビア国家警察のハイロ中尉が車でやってきた。さっそくオフェリアの状況を確認した彼は、事態が予想以上に深刻な事を知る。中尉は爆弾処理を始める前に、車の中にいた妻と幼い赤ん坊を自宅へ帰らせ、シモンとロシータにもオフェリアと自分から十分に距離を取るように命じた。やがて、国家警察の部隊や救護隊も現場に到着、近くの村から扱ってきた数人の村人たちが見守る中、緊迫の爆弾処理が始まった。しかし、現場には十分な器具も装備も何も無かった。中尉は防護服も付けず、ナイフ一本でオフェリアの首に装着された爆弾の処理を開始した。張りつめた一緊張感の中、決死の爆弾処理は続く。オフェリアの体力と精神力はすでに限界を超えていた。果たして彼女は家族のもとへ無事生還できるのだろうか…。
スタッフ
製作総指揮:バシリス・スタソロプロス、ドワイト・イスタンブリアン
製作:スピロス・スタソロプロス、ジェイソン・ホール
共同製作:キコ・ベラルデ、フランク・ラミレス、マーティ・エステバ
監督:スピロス・スタソロプロス
脚本:スピロス・スタソロプロス、ドワイト・イスタンブリアン
製作コーディネーター:エリカ・サラサール、エルサ・カイセード
第1助監督:フアン・パブロ・サラサール
第2助監督:アンドレス・ベラスケス
撮影監督:スピロス・スタソロプロス
製作助手:ミゲル・コロラド
美術監督:ルイサ・ウリベ
衣装:ルイサ・ウリベ
特殊効果・メイクアップ:ルイサ・ウリベ、フアン・パブロ・サラサール
音楽:パスカール・タイガー、レイナルド・ドゥアルテ、フアン・ピエドラ
キャスティング:アンドレス・ベラスケス
キャスト
メリダ・ウルキーア
ダニエル・パエス
アルベルト・ソルノサ
ウーゴ・ペレイラ
パトリシア・ルエダ
アンドレス・マエチャ
ダリーオ・ガルソーン
ウィルメル・メディーナ
リス・プリド
クリスティアン・レムス
イボン・カデーナ
カミラ・ベハラーノ
ギジェルモ・マエチャ
リカルド・チャベス
LINK
□公式サイト□IMDb
□この作品のインタビューを見る
□この作品に関する情報をもっと探す