シリアの花嫁
原題:The Syrian Bride
もう二度と帰れない。 それでも私はこの境界を越える。
2004年モントリオール世界映画祭グランプリ 観客賞 国際批評家連盟賞 エキュメニカル賞 2004年ロカルノ国際映画祭 観客賞 2004年フランダース国際映画祭 最優秀脚本賞 観客賞 第21回東京国際女性映画祭参加
2004年/イスラエル=フランス=ドイツ/カラー/97分/ 配給:シグロ、ビターズ・エンド
2009年2月21日(土)より、岩波ホールにてロードショー 他、全国順次公開
公開初日 2009/02/21
配給会社名 0035/0071
解説
もう二度と帰れない。それでも私はこの境界を越える。
最高に幸福なはずの結婚式の日。花嫁一家を待ち受けていたのは、行く手を阻む境界だった。どんなに翻弄されようとも、決意と希望を胸に歩いてゆく女たちの姿が、私たちの心の琴線をふるわす——。
結婚式の今日は、花嫁モナにとって最高に幸福な日となるはずだ。けれど、彼女も姉のアマルも、悲しげな顔をしている。なぜなら、一度“境界線”(現在の軍事境界線の意)を越えて花婿のいるシリア側へ行ってしまうと、二度と家族のもとへ帰れないのだから。彼女たちをはじめ、家族もみな、国、宗教、伝統、しきたり…あちこちに引かれたあらゆる境界に翻弄され、もがきながら生きていた。モナは決意を胸に、家族とともに“境界線”へと向かうが、そこで待ち受けていたのは、通行手続きを巡る思わぬトラブルだった…。クライマックスでの、高まる家族愛、未来へ踏み出そうとする姉妹の姿、そしてモナの驚くべき行動に、私たちの目と心が奪われる——。
舞台は、ゴラン高原のマジュダルシャムス村。イスラムの少数派とされるドゥルーズ派の一家族の結婚式の一日の物語。ここは、もともとはシリア領であったが、1967年の第三次中東戦争でイスラエルに占領されることとなった。この地域の多くの住人たちは“無国籍者”となり、新たに引かれた“境界線”の向こう側にいる肉親との行き来さえも不可能にされている。分断された彼らは、「叫びの丘」と呼ばれる場所に拡声器を握って立ち、向こう側にいる肉親と、近況や無事を確認し合うのである。
モントリオール世界映画祭グランプリ、観客賞、国際批評家連盟賞、エキュメニカル賞の4冠受賞という快挙! 世界中の観客の圧倒的支持を得た感動作、待望の日本公開!
監督のエラン・リクリスは、「LEMON TREE(レモンの木)」が、08年ベルリン国際映画祭でパノラマ部門観客賞を受賞した実力派。複雑な中東情勢を背景に、花嫁モナや家族、村の人々の一日のエピソードの数々を、時に美しく、時にコミカルに、かつリズミカルに積み重ね、観る者の心を惹きつけて離さない感動作を誕生させた。
本作は、リクリス監督のドキュメンタリー「BORDERS(ボーダーズ)」の中に登場する“境界線”を巡る結婚のエピソードと、彼自身のゴラン高原での旅の経験に基づいている。物語により深みをもたらすために、パレスチナ系イスラエル人スハ・アラフとともに、渾身の脚本を書き上げた。俳優陣にも、パレスチナ系の人たちが起用された。中でも花嫁モナの姉アマル(アラビア語で“希望”の意)には、国際的に活躍し、高い評価を得ているヒアム・アッバスが迎えられ、揺るぎない迫真の演技を披露し、圧倒的な存在感をみせている。
みごとな構成力、演出力などが称えられ、04年モントリオール世界映画祭でグランプリ、観客賞、国際批評家連盟賞、エキュメニカル賞を獲得という快挙を遂げた。同年のロカルノ国際映画祭では観客賞を受賞したほか、世界中の観客から圧倒的な支持を得て、10以上もの賞に輝き、喝采をおくられている。
ストーリー
◆イスラエル占領下のゴラン高原、マジュダルシャムス村。今日は村の娘モナが、親戚にあたるシリアの人気俳優タレルに嫁いでゆく日。ふたりは写真でしかお互いのことを知らない仲だ。
朝、姉のアマルは妹の身の上を案じながら目覚める。モナは純白のドレスを手に、結婚式の準備のため、アマルとともに村の美容院へと向かう。美容院での支度中、記念すべき結婚の日を記録するため、カメラマンのアリクがやって来る。
◆キルヤト・シュモナ(イスラエル北部の都市)のホテル。一家の長男ハテムが妻と幼い息子と朝を迎えていた。彼はロシア人女性と結婚してロシアへ渡ったが、妹モナの結婚を祝うために、8年ぶりに故郷へ戻ろうとしている。父や長老たちに逆らってロシア人と結婚したため、勘当された身だ。
イスラエル、テルアヴィヴ空港。次男のマルワンも、商売をしているイタリアから妹モナの結婚を祝いに戻って来た。
◆イスラエルの警察署。シリアの新大統領を支持するデモが行われるので、注意するように命令が下される。また、シリア側に嫁いでゆく花嫁がいるが、花嫁の父親のハメッドは軍事境界線へ行かせるな、との命令も。ハメッドは親シリア派で、政治運動をしてきたため、投獄された経験もあり、イスラエル警察から睨まれているのだ。今は保護観察下におかれていて、デモへの参加は厳しく禁じられている。
◆再び美容院。支度がすみ、ウェディングドレスに身を包まれているモナだが、悲しげな顔をしている。
姉アマルはビデオカメラに向かって、花婿タレルへのメッセージを語り出す。
「今日が姉妹最後の日。私の宝をあなたに託す」。
家に戻ったモナは、村の人々の祝福で迎えられる。長老たちも集まってきた。掟を破ったハテムの帰郷を許さない長老たちは、信仰に背いて彼を迎えれば縁を切る、とハメッドに迫る。ハメッドは、今日を逃せば、息子は永遠に妹に会えなくなる、と伝えるが長老たちには受け入れない。
◆ゴラン高原、国連事務所。国際赤十字のスタッフであるジャンヌが、今日のモナの結婚式について同僚と話している。
花嫁は“境界線”を越えたらシリア国籍が確定し、イスラエルへの入国は不可能になる。越えたら最後なのだ、と。
スタッフ
監督・共同脚本・プロデューサー:エラン・リクリス
共同脚本:スハ・アラフ、エラン・リクリス
プロデューサー:ベティーナ・ブロケンパー、アントワーヌ・ドゥ・クレルモン=トネール、エラン・リクリス、ミヒャエル・エッケルト
撮影監督:ミヒャエル・ヴィースヴェク
編集:トヴァ・アシェル
音楽:シリル・モラン
美術:アヴィ・ファヒマ
衣裳:インバル・シュキ
サウンドデザイン:ギル・トーレン
キャスト
ヒアム・アッパス
マクラム・J・フーリ
クララ・フーリ
アシュラフ・バルホウム
エヤド・シェティ
イヴリン・カプルン
ジュリー=アンヌ・ロス
アドナン・トラブシ
マルレーン・バジャリ
ウリ・ガブリエル
アロン・ダハン
ロバート・ホーニグ
ディラール・スリマン
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