−木村威夫 花座− 91歳 木村威夫 映画の余白に向けて

2008年/日本/カラー/79分/ 配給:太秦

2010年10月27日よりDVDリリース 2009年11月21日、シネマート新宿、銀座シネパトスにてロードショー

(C)PROJECT LAMU / UZUMASA

公開初日 2009/11/21

配給会社名 0864

解説


91歳 木村威夫 映画の余白に向け

木村威夫は、鈴木清順、熊井啓、黒木和雄など、日本を代表する名監督との仕事で世界的に名高い美術監督である。まさに日本映画界の至宝。
その活動範囲は、名匠から無名のインデペンデント作品まで多岐にわたる。
安定を拒み、変化と変容を求め、枯れることを知らない生命力で、常識と常套に果敢に挑み続けている。
そしてこの度、『黄金花−秘すれば花 死すれば蝶−』の公開を“〜木村威夫 花座〜”と命名。
東京を皮切りに、日本全国で〜木村威夫 花座〜興行を展開する。

木村威夫は1918年4月1日生まれ。16歳(1935年)で舞台美術の大御所である伊藤熹朔の弟子となり、ドイツ表現主義の影響を受ける。23歳(1941年)から映画美術に従事し、本年に至る68年間、携わった劇場公開作品は230本を超える。第14回モントリオール世界映画祭最優秀美術賞、毎日映画コンクール美術賞、日本アカデミー美術賞、勲四等旭日小綬賞、日本ペンクラブ功労賞、毎日芸術賞特別賞を受賞するなど、その功績を各界から称えられている。
2004年、『夢幻彷徨 MUGEN-SASURAI』で短編映画監督デビュー。以来、アイデアが泉のように湧き出し、『街』(2004年)、『OLD SALMON 海を見つめて過ぎた時間』(2006年)、『馬頭琴夜想曲』(2007年)を発表。
そして、2008年、ついに長編監督としてデビューする。岩波ホールで公開された『夢のまにまに』は、日本映画史上最高齢での長編劇場公開監督デビューとして、ギネスブックにも登録され話題を集めたほか、藤本賞 奨励賞を受賞した。
長編第2作目にあたる本作は、映画美術世界の第一線として活躍してきた木村威夫だからこそ為しえる、既存の映画文法を打ち破り、既成概念を大胆に逸脱した渾身の一作。自身が歩んできた映画界の歴史と、自らの人生を重ね合わせ、“映画に残されている余白”の中で縦横無尽に戯れ、世阿弥の幽玄、シェークスピアの猥雑さを、『フェリーニの道化師』の如くに表現した。
〜木村威夫 花座〜は、今始まったばかりなのである。

〜木村威夫 花座〜に集う名優たちのゴールデンタイム!
主役の植物学者・牧草太郎役を日本映画に欠かせない存在である原田芳雄が演じ、鍵を握る介護士長役を松坂慶子がつとめた。舞台となる「浴陽荘」で暮らす奇妙な老人たちを、川津祐介(役者老人)、三條美紀(おなお婆さん)、松原智恵子(小町婆さん)、絵沢萠子(おりん婆さん)、野呂圭介(ピーナッツ老人)、飯島大介(易者老人)、牧口元美(質屋老人)、真実一路(物理学者老人)、中沢青六(板前老人)が、個性豊かに熱演。そして、「浴陽荘」の院長役には長門裕之、巡礼役に麿赤兒が扮し、奥行きを深める。そのほか、医者役に松尾貴史、上ノ茗真二、留学生役にシャノー・ユリアーナ、大学の教授役に小林三四郎、さらにクラブの歌い手としてあがた森魚が花を添えた。生と死、明と暗、絶望と希望、静寂と喧騒、若さと老いを、自らが体験した戦後の混沌、そして映画の世界で闘い続けた自身の半生に重ね合わせ、日本映画の全盛期さながら、名優たちのゴールデンタイムが甦える。

北白川派代第一弾作品
協力プロデューサーである林海象監督が学科長を務める京都造形芸術大学映画学科が映画制作に全面的に協力して本作は完成した。ラインプロデューサーに山本起也、撮影監督に小川真司、録音に浦田和治、脚本協力に水上竜士など、熟練の大学講師陣が強力にバックアップ。90歳を超える木村監督と現場に参加した学生他との年齢差は何と70歳。木村監督が命名し、林監督が構想する映像集団“北白川派”の記念すべき第一作目となった。

花座の由来
世阿弥の「秘すれば花、死すれば蝶」の「花」の文字は美しい。
満天の星座をみつめていて、その座に気付いた。
銀座・歌舞伎座、みんな縁起が良い—そうだ、「花座」だ—と定めた。
単純にして奥が深い感じだ。
「花座」は、私を取り巻く、グループのプロダクション名という事になる。

ストーリー



老人ホーム「浴陽荘」。そこには植物学者の牧草太郎博士はじめ、物理学者、役者、自称映画女優、バーのママ、板前、質屋、などなど、多くの孤独な老人が身を寄せている。老人達は人生を邂逅し、尽きせぬ想いと死への恐れに打ち震えながら、それぞれが作り上げた物語の登場人物を演じることで嘘とも本当ともつかぬ奇妙で不思議な日々を送っていた。
牧博士は人生の大半を植物学の研究に費やし、遊びも、酒も、女も、俗世間の全てを顧みずに生きてきた。そうして迎えた80歳の誕生日、職員の青年と自然薯を掘りに出かける。その折、青年がついた些細な嘘によって小さな泉に辿り着き、黄金色に光り輝く妖しい花を見てしまう。それは、牧博士が長年探し求めていたヒマラヤ聖女の傍らに咲くという不老不死の花「黄金花」であった。
その日を境に、植物学に没頭するために、あえて封印したはずの記憶の断片が、大きな渦となって押し寄せてくる。少年時代の母への想い、青年時代の留学生の若き恋人への切ない思いと永遠の別れ、戦後の混乱、植物学への熱情と挫折。混沌と夢幻のなか、易者老人の死に立ち会い、牧老人はその夜誘われるように時の川を遡り人生の最期の旅に出る。
浴陽荘で牧博士の植物学に憧れを抱く青年ミツオとヒマラヤの聖地に咲くという「黄金花」をめぐってのささやかな触れ合い、介護士長への密やかな想い、道化師のような老人たちとの生活。そして、新しい命の誕生。虚と実、夢と現実、日常と非日常、生と死、相反するすべてのものを包み込み、傷つき苦しみながらも、生きることへの限りない想いが浮き彫りになってくる…
植物学者・牧博士の時空を超えた魂の物語=ファンタジー。

[山を崩すな!!〜水のテーマと山と日本人〜]
古来より、自然との共生・調和をはかる事で生きてきた日本人。また、遥か古代史の三輪山信仰の時代より畏怖の対象であった山。山は神様の住む場所であり、すべての源泉でもあった。本作ではその山から湧き出る『水』が物語の重要なキーポンイトの一つ。冒頭の水の挿話はこれから起こるであろう危機と松坂慶子扮する『泉の精霊』と繋がる。自然薯を必要以上に掘り起こす事で、山の神様の怒りを買うものの、再び山に自然薯を戻す事で”黄金花”に出会う。これは”人間は必要以上にモノを取ってはいけない。自然界はあるバランスの上になりたっている”という監督のメッセージでもある。

スタッフ

監督・脚本・原案:木村威夫
プロデューサー:川端潤
サポートプロデューサー:林海象、高橋伴明
ラインプロデューサー:山本起也
撮影:小川真司
音楽:川端潤
キャスティング:小林 良二
製作:エアプレーン レーベル、太秦株式会社
製作協力:京都造形芸術大学

キャスト

原田芳雄
飯島大介
絵沢萠子
川津祐介
三條美紀
真実一路
中沢青六 
長門裕之
野呂圭介
牧口元美
松坂慶子
松原智恵子
麿赤兒

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