原題:THE FALL

君にささげる、世界にたったひとつの作り話

2006年/アメリカ/ビスタ/SR-SRD DTS SDDS/118分/字幕太田直子 配給:ムービーアイ・エンタテインメント

2009年02月11日よりDVDリリース 2008年9月6日(土)、シネスイッチ銀座、渋谷アミューズCQN、新宿バルト9ほか全国順次ロードショー

(C)2006 Googly Films,LLC.ALL Rights Reserved.

公開初日 2008/09/06

配給会社名 0366

解説


構想26年、撮影期間4年 映像の魔術師ターセムが、魂を込めて作り上げたのは生きる力と、やさしさをくれる ぬくもりのカレイドスコープ

夜明けの来ない夜はない
それは、落ちてはじまる物語

時は1915年。映画の撮影中、橋から落ちて大怪我を負い、病室のベッドに横たわるスタントマンのロイは、追い討ちをかけるように、私生活でも恋人を主演俳優に奪われ、自暴自棄になっていた。そこに現れたのが、オレンジの樹から落ち、腕を骨折して入院していた5才の少女・アレクサンドリア。ロイは動けない自分に代わって、自殺するための薬を薬剤室から盗んで来させるべく、純真無垢な彼女を利用することを計画。アレクサンドリアの気を引こうと、思いつきの冒険物語を聞かせ始める。
それは6人の勇者が世界を駆け巡り、悪に立ち向かう【愛と復讐の叙事詩】—。
めくるめく物語に魅了され、話の続きをせがむアレクサンドリア。その一方で、希望を失ったままのロイは遂に…。

世界遺産13箇所、24カ国以上でロケ!
目も眩む 《映像美》、 魂に響く 《物語の力》

きっかけは、少女を操るためだった。しかし、好奇心旺盛な少女の期待に応えるために、その場しのぎで紡いでいった他愛も無い寓話は、やがて少女と青年の唯一無二の《二人の物語》となり、少女に希望を与え、青年自身をも救う、驚きと輝きに満ちた壮大な叙事詩へと育っていく。絶望の淵に落ちた時、いつだって希望をくれるのは、物語の力—。
構想26年、監督自らが”本当に作りたかった映画”と語る本作は、傷ついた青年が、少女とのふれあいの中で、生きる力を取り戻していく、優しさ溢れる感動巨編。
前作「ザ・セル」の意匠を凝らした画作りで観客を驚かせたターセムが、今回はCGに頼らず、世界24カ国以上、13の世界遺産を含む美しいロケーションを背景に、4年の歳月をかけて、こつこつと手作りで一級の美術品を完成させました。

誰もが愛さずにいられない
少女の純真な笑顔、泣き顔、そしてやさしい心 —

ロイ役は「グッド・シェパード」のリー・ペイス。小さなヒロイン・アレクサンドリアを演じるのは、これが映画デビューのカティンカ・アンタルー。監督は、彼女の素のリアクションやアイデア、勘違いまでも脚本に活かし、自然な演技を導き出すことに成功。「ニューシネマ・パラダイス」のトト少年、「ポネット」のヴィクトワールちゃんを超える名演に、観る者皆が笑顔になり、やがてエンディングで涙するに違いありません。
煌びやかにして斬新な衣装を手がけるのは、アカデミー賞衣装デザイン賞に輝く石岡瑛子。才気に満ちたスタッフ、キャストが結集し、《人の心は無限の可能性を秘めている》ことを信じさせてくれる、素晴らしい世界を作り上げています。

ストーリー




第1章

 ロサンゼルスのとある病院。いつもと変わらぬ夏の日。風に揺れる椰子の木と、絵の具を溶いたような濃淡のある空が頭上を覆っている。
 5歳の少女・アレクサンドリアは家業のオレンジ収穫を手伝っているときに誤って木から落下し、左腕を骨折して入院中。人なつっこくて好奇心旺盛な彼女は、ベッドにじっとしていられず、敷地内をちょこちょこと歩き回り、つたない英語で話しかけては病院内の人々を和ませていた。
 ある日、病院の2階から外を覗くと、仲のいい看護婦エヴリンが下を歩いているのを見かける。アレクサンドリアはエヴリンに声をかけ、書き留めていた英語の手紙を彼女に向かって投げた。ところがその手紙は彼女の手に届かず、下の階の病室へ舞い落ちていった。
 手紙の行方を探るために下の病室を覗くと、そこには男がエヴリン宛に書いた手紙をひらひらと持ちながらベッドに横たわっていた。彼女は病室に入っていき、男から手紙を取り返そうとする。「何よ、勝手に」、「君が、これを書いたアレクサンドリア?」、「そうよ」、「僕はロイ」。それがロイとの出会いだった。
「アレキサンダー大王にちなんだ名だね。こっちにおいで」。ベッドにアレクサンドリアを呼び寄せ、ロイはアレキサンダー大王にまつわる話をし始める。物語が大好きな少女がロイの話に夢中になるのに時間はかからなかった。
 ロイがアレキサンダー大王の話を終えると彼女にこう言う。「明日、別の話をしてあげる。愛と復讐の叙事詩だ」。アレクサンドリアはうれしそうに部屋を後にした。
 翌日、物語を聞くためにいそいそと病室を訪ねるアレクサンドリア。「じゃ、目を閉じて」。アレクサンドリアの前に漆黒の闇が広がる。ロイはゆっくりと、そして静かに語りだした。

第2章

 茫洋とした深緑色の大海に囲まれた絶海の孤島。そこには5人の戦士が同じ決意を秘めて立ち上がった。それは総督オウディアスへの復讐。弟を殺された元奴隷のオッタ・ベンガ。妻を誘拐され、死に追いやられたインド人。爆発物の専門家であるがゆえに危険分子とみなされ存在を抹消されたルイジ。追い求めていた幻の蝶の死骸を送りつけられた、生物をこよなく愛する英国の博物学者チャールズ・ダーウィンと猿の相棒ウォレス。そして、総督オウディアスに弟と共に死刑を宣告された仮面の黒山賊。5人は一致団結し、オウディアスへの復讐、そして黒山賊の弟の死刑を阻止すべく島の脱出を試みる。
 島からの脱出に成功した一行は、壟断された山々に囲まれた岸にたどり着く。そこには黒ずみ枯れ果てた一本の老木が所在なげに立っていた…。パチパチ。木の幹から爆ぜるような音がし、きな臭いにおいに気づいた一行の視線が、その老木に集まる。するとそこから、全身が煤けた長髪の霊者が這い出てきた。神聖な森を総督によって焼き払われた霊者は、自分も一行に加わりたいと言うが、一行は、得体の知れない霊者の姿を警戒し、仲間に加えることを拒んだ。
 黒山賊の弟が捕らわれている宮殿に到着した5人の戦士。見事、奇襲に成功し、守衛から奪った鍵で頑丈な門を開けると、そこには待ち構えていた数多の兵を圧倒する猛々しい霊者の姿があった。一行は1人で守兵を全滅させた霊者を仲間として迎え入れた。  しかし、到着が遅すぎた。すでに黒山賊の弟とその仲間は、総督に拷問され、殺されていたのだった。 

第3章

 「やめろ!」空間に亀裂の入るような声が響く。その怒声とともに現実世界に引き戻されるロイとアレクサンドリア。病室は遊び場じゃないぞ、と言わんばかりにロイの物語を中断させたのは、偏屈そうな同室の患者。もう一人の同室の患者、やさしい入れ歯の老人は、怯えるアレクサンドリアを表に連れ出してやる。
 翌日、アレクサンドリアは病院内の礼拝堂から盗ってきた聖餐を持って再びロイの元を訪ねる。「何だい?」、「食べ物」、「魂の救済?僕の魂を救ってくれるの?」。やさしく微笑むアレクサンドリア。
 物語の続きが楽しみなのか、嬉々とした表情でベッドの上で足をばたつかせるアレクサンドリア。その拍子にベッドのサイドテーブルのコーヒーをこぼしてしまう。ナプキンに染み込み、広がっていく茶色の液体。それは次第に赤く変色していく。布に血を染み込ませていく手。黒山賊の手。6人の戦士は、山々に囲まれた荒涼とした地に掲げられた弟の遺体をくるんだ巨大な布の前に立っていた。「わが弟。俺の弱さゆえ、救えなかった。地の果てまで行き、オウディアスを必ず殺してやる」。仮面をはずし黒山賊の顔があらわになる。ロイだ。「われら同士なり!」。黒山賊の弟の死によって復讐の念は、より強固なものとなり、一行は打倒オウディアスを誓う。
 オウディアスの牙城に向かう途中、鞭に打たれながらオウディアスの旗を掲げた瀟洒な山車を引く奴隷たちの姿を目撃する。「解放しよう」決然と黒山賊は言った。
 「アレクサンドリア。英語読める?」、「いつもこれからって時にやめるんだから」再び物語は中断する。
 ロイはアレクサンドリアに英語の文字が書かれた紙切れを渡す。そこには「M O R P H I N E 」と書かれていた。ロイは、薬がないと話が続けられないと言い、アレクサンドリアに薬剤室からモルヒネを取ってきてほしいと頼む。うなずくアレクサンドリア。

第4章

 「取ってきた?」ロイが尋ねる。「はい、これ」と3錠の薬を差し出す。「3錠しかない。1瓶頼んだ」、「そう紙に書いてたでしょ。M-O-R-P-H-I-N 3。それより、お話の続き!」。
 一行は奴隷の手足を拘束していた鎖を断ち切り、奴隷を解放し、山車の扉の前に立つ。「出て来い、オウディアス!」。中から姿を現したのはオウディアスではなく、扇で顔を隠した姫と、甥で臣従の男の子だった。一行は姫をさらい、清冽な川を下って一旦隠れ家に戻り雌伏することにした。
 湖の上に浮かぶ風雅な宮殿。黒山賊と姫が対峙する。「あなたは何者?」、「人呼んで仮面の山賊」、「あの悪名高い?」、「そうだ、顔を隠していればね」おもむろに仮面をはずす黒山賊のロイ。それを見た姫も答えるようにベールを開き自身の顔をあらわにする。  「看護婦さん?」とアレクサンドリア。姫は看護婦のエヴリンだ。

第5章

 「自殺願望は捨てろ、医者もぼやいている。怪我は治る。要は心だ。たかが女で。だれでも失恋ぐらいする」。厭世的なロイを勇気付ける声。ロイは恋人にふられ絶望し、スタントの仕事中、橋の上から落下したのだった。
 「私、治りたくないな」。ロイのベッドに腰掛けたアレクサンドリア。「ここであなたといたいから」。「お話聞きたい?頼みがある」。ロイは同室の男が自分の薬を盗んでいるので、取り返してほしい、とアレクサンドリアに頼む。でなければ物語を話さない、とロイ。
 アレクサンドリアは向かいのベッドに近づき茶色のビンを見つける。「これ?」、「それだ。僕のだ」。瓶を手にし、ロイはすぐさま数十錠を口に含んだ。「僕が寝たら帰るんだ。そして明日は来るな」。ロイは物語の続きを話し始める。
 姫と黒山賊の間に愛が芽生え、結婚することになった。しかし、結婚式を取り仕切った司祭の裏切りによって一行は捕まってしまう。

第6章

 砂漠のど真ん中に縄で繋がれた一行。渇きは限界を超え、照りつける灼熱の太陽によって皮膚もただれてきた。絶体絶命のピンチ。「助からないの?」、とアレクサンドリア。「ああ」、投げやりなロイ。そこに猿のウォレスの入っていたはずの皮袋から仮面をつけた少女が出てくる。アレクサンドリアだ。彼女の願いが、物語に介入したのだ。いつしかロイの物語は二人の物語となった。
 黒山賊・ロイの縄をほどき、手に銃を持たせる仮面のアレクサンドリア。兵士に銃を向けるロイ。しかし、先ほど飲んだ睡眠薬が暖かな毛布となって意識を包み込んでいく。「撃って!」。アレクサンドリアの声もむなしく、ロイは意識を混濁させその場に倒れこんでしまう。「寝ないで、起きて」。物語の続きを聞きたいアレクサンドリアの声に一切反応を見せないロイ。諦めたアレクサンドリアは、ロイの頬にキスをして病室を後にする。
 翌日、アレクサンドリアは病棟から白い布に覆われた遺体が運び出されるのを目にする。「経過は順調だったのに」。そうつぶやく医師。アレクサンドリアは泣き叫びながら遺体にしがみつく。「起きて。ロイ。起きて。」
 アレクサンドリアは、どうしたらよいのか分からず、ロイの病室に駆け込んだ。ロイのベッドの間仕切りのカーテンを開けるとそこにはロイの姿が。「ロイ!私あなたが死んじゃったのかと…」。「砂糖だ…」。状況が把握できないアレクサンドリア。「あれは偽薬だ。お前の薬は砂糖だ。死に損ねた!」。同室の男を怒鳴りつけ、怒り狂ったロイはベッドを激しく揺らす。涙は涸れ果て、徐々に込み上げてくる氷のような怒り。ロイの心には、今や一切の希望がなくなっていた。
 昼間のことが気になり、ロイに会いたくなったアレクサンドリアは夜中、皆が寝静まった頃にこっそり自分のベッドから抜け出す。薄闇に包まれ、熟睡する森閑とした病院内。そこにかすかに聞こえてくる声。アレクサンドリアは声をたどり、ドアの前で立ち止まる。覗くと、看護婦のエヴリンが男と抱き合っていた。ロイを好きだと思っていたのに。
 ロイしか信用できない。アレクサンドリアは、ロイに喜んでもらおうと、再び薬剤室に忍び込む。しかし、モルヒネの瓶を掴もうとした瞬間、足を乗せた棚の上にあった瓶で足を滑らせ、転倒し床に落下してしまう。
 アレクサンドリアの混沌とした意識の中で過去の記憶とロイの物語が交錯し、フラッシュバックのように明滅する。馬泥棒に火を放たれた我が家。パパの最期の姿…。「グーグリ、グーグリ、あっち行け!」。怖いときのおまじないを唱え続けるアレクサンドリア。
 「君の責任だよ。何て事をしたんだ。生きようとしろ」、ロイを叱責する声。頭の中で、ゆらゆらと形の定まらない色彩が飛び交い、声が響いている。目を開けると、そこには憔悴し切ったロイの姿があった。

最終章

 アレクサンドリアのベッドの脇で、泣き崩れているロイ。目を覚ましたアレクサンドリアは、ロイに告げる。「また落ちちゃった」。ロイは身勝手な自分を恥じていた。そして、彼女を操るために、作り話を聞かせて気を引こうとしていたことを告白する。それでも、無邪気に微笑み、物語の続きをせがむアレクサンドリア。塩辛い涙がぽろぽろこぼれ落ちる。「僕のお話は、ハッピーエンドなんかじゃないんだ。他の人に頼め」。「話して。続きを教えて」。ロイはゆっくりと物語の結末を語りだした…。

スタッフ

監督:ターセム
脚本:ターセム、ニコ・ソウルタナキス、ダン・ギルロイ
音楽:クリシュナ・レヴィ
衣装:石岡瑛子

キャスト

リー・ペイス
カティンカ・アンタルー
ジャスティン・ワデル ほか

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