シークレット・サンシャイン
原題:Secret Sunshine
第60回カンヌ国際映画祭コンペ部門・女優賞受賞(チョン・ドヨン) 第80回アカデミー賞外国語映画部門・韓国出品作 第8回東京フィルメックス出品作品(クロージング)
2007年5月23日韓国公開
2007年/韓国/カラー/142分/ 配給:エスピーオー
2009年01月01日よりDVDリリース 2008年6月7日(土)シネマート六本木ほか、全国順次公開 2007年11月17日(土)〜11月25日(日)第8回東京フィルメックス上映
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公開初日 2007/11/17
公開終了日 2007/11/25
配給会社名 0424
解説
ふりそそぐ陽射しをどれだけ浴びたら、
あなたの悲しみは消えてゆくのだろう——
最愛の息子を失い、心を閉ざしたシングル・マザーと、
その痛みをただ受け止めることしかできない不器用な男——
ふたりを照らす太陽が昇るまでの、ゆるやかな愛の物語。
幼い息子とふたり、亡き夫の故郷である地方都市・ミリャン(密陽)に移り住んだシングル・マザーのシネ。悲しみを隠して気丈に生きる彼女に、純真で不器用な男ジョンチャンは一方的に想いを寄せていく。そんなある日、最愛の息子を誘拐事件で失ってしまったことから、シネの人生は大きく狂い始める。悲しみの闇に包まれ、自分と周囲の人々を傷付けながら、希望の≪陽射し≫を探して必死に生きるシネの姿は、ときに強く、ときに脆い——そんな彼女に厭われながらも、いつも傍でそっと守り続けるジョンチャン。シネとジョンチャンの間には、いつしか見えない絆が芽生え始めていく…。
密かな陽射しが心に差し込む…
すべての悲しみが、涙の彼方に消えてゆく———
世界中に驚嘆と喝采をもたらした、魂をゆさぶる感動作!
最愛の人が突然、目の前からいなくなったとき、その悲しみを救うことができるのは<何>なのか? 『シークレット・サンシャイン』は、ある女性の魂の救いをテーマにした珠玉のラブストーリーである。最愛の人を失ったシングル・マザーが陥る絶望、その悲しみを受け止めることしかできない不器用な男との愛と再生。悲しみが狂気に変わるとき、人はどうすればいいのか——、本作品はすべての≪大切な人≫を持つ人々が陥るかもしれない究極のシチュエーションに、毅然としながらも温かく真摯な態度で答えていく。観た後、まるで心が陽射しに包まれたような気分になり、不思議と悲しみが浄化されていく…リアルに心に浸透していくその効果に驚く人も多いはずだ。
ヴェネチアを熱狂させた『オアシス』から5年——カンヌを皮切りに世界中が奮えた、さらに深化するイ・チャンドン監督の映画美学
2002年のヴェネチア国際映画祭で監督賞を受賞した『オアシス』で、韓国のみならずアジアを代表する監督へとのぼりつめたイ・チャンドン監督。小説家からスタートし、『グリーンフィッシュ』『ペパーミント・キャンディー』と発表してきた彼が『オアシス』以降、文化観光部長官の職を経て5年ぶりに復帰を果たした監督第4作目が本作である。2007年カンヌ国際映画祭でのチョン・ドヨンの主演女優賞受賞を皮切りに、カルロビバリ映画祭、トロント国際映画祭、ロンドン国際映画祭、ニューヨーク国際映画祭など、世界中の映画祭を席巻。また2007年11月に開催された第8回東京フィルメックスでは、イ・チャンドン監督が審査委員長に選ばれ、クロージング作品としても本作品が上映された。チケットは前売り券発売と同時に完売し、話題にもなっている。また、韓国国内でも公開2週目で観客動員数100万人を突破し、最終的に 170万人を動員した本作は、青龍映画賞主演女優賞、大韓民国映画大賞4冠達成(最優秀作品賞、監督賞、男優主演賞、女優主演賞)はじめ、多くの賞を総なめにしている。
2007年カンヌ国際映画祭 最優秀主演女優賞受賞!
世界中のメディアが絶賛したチョン・ドヨンの演技
2007年のカンヌ国際映画祭で最も注目を浴びたのが、主演女優のチョン・ドヨンだった。アジア人女優ではマギー・チャンに続き2人目となる快挙を果たした彼女は、『ユア・マイ・サンシャイン』『スキャンダル』、ドラマ「プラハの恋人」などで人気実力を兼ね備えた国際派女優。カンヌに続き、アジアパシフィックスクリーンアワード2007でも主演女優賞を受賞した。
オンリーワンのトップ俳優、ソン・ガンホ
まるで空気のように自然な驚異の演技力!
また、チョン・ドヨンと同じく演技力を絶賛されたのが、もう1人の主役、ソン・ガンホ。壊れゆく女シネを優しく見守る彼の自然体の演技が、絶妙な空気を生み出している。背景のようにそこに佇むだけなのに、なくてはならない存在に見える男——『グエムル〜漢江の怪物〜』『殺人の追憶』で韓国を代表する演技派と呼ばれる彼だからこそこなせた役どころである。パーム・スプリングス国際映画祭2008では、主演男優賞を受賞した。
実在の街<密陽(ミリャン)>が放つ魅力、個性的な脇役の数々。
実在の地方都市・慶尚南道ミリャン(密陽)を舞台に5ヶ月間にわたる撮影を敢行。主演俳優二人以外の大部分のキャストは、密陽特有の方言など映画の背景をリアルに表現するため、ミリャンに近いテグ(大邱)、プサン(釜山)の地元で活躍する舞台俳優たちが選ばれ、オーディションに参加した数は延べ3000〜4000人にのぼる。イ・チャンドン監督のディテールに対するこだわりはロケ地も俳優も変わることはない。本物の感動を生むこだわりに満ちたイ・チャンドンの映画づくりに妥協はありえない。
ストーリー
車の故障で立ち往生してしまったシネというシングルマザーが、地方都市ミリャンの入り口近くの国道でレッカー車を呼んでいる。幼い息子のジュンを連れてソウルから引っ越してきた彼女は、死んだ夫の故郷であるこの町で再出発をしようとしていた。レッカー車を運転してきたのは、地元で小さな自動車修理工場を営むジョンチャンという38歳の独身男。
「ミリャン(密陽)の意味を知ってますか?」
「意味? 考えたこともないね」
「秘密の密に、陽射しの陽。秘密の陽射しなんて素敵でしょう?」
「秘密の陽射しか……。いいね」
初めて出会ったこのときから、ふたりの会話はどこか噛み合わなかった。
ミリャンの商店街にピアノ教室を開いたシネは、近所の洋品店の女主人、薬局を営む夫婦、ジュンが通う弁論教室の先生らと知り合う。彼らは皆、夫を亡くしたシネに憐れみの目を向けるが、彼女は「不幸ではありません。立派に暮らしてます」と気丈に答える。シネは訳ありの過去の持ち主だが、今も夫を心から愛していた。そんなシネに心惹かれたジョンチャンは、投資物件の土地を探しているという彼女を案内してやったり、頼まれてもいないのに仕事そっちのけで何かと世話を焼く。しかしシネから見れば、彼はただの愚直な俗物男だった。こうしてシネの新天地での生活は、ぎこちなくも穏やかに始まった。
やがて悲劇は何の前触れもなく起こった。ある夜、帰宅してみるとジュンの姿がどこにも見当たらないのだ。何者かからの脅迫電話を受けたシネは、ジュンが誘拐されたのだと知り、心底うろたえずにいられなかった。ジュンを取り戻したい一心で犯人の要求を受け入れた彼女は、翌日、銀行で引き下ろした全財産を指定された場所に届ける。しかしジュンは帰ってこなかった。
ジュンの死体が水辺で発見されてからまもなく、警察が逮捕した犯人は意外な人物だった。その男は、周囲の人々に同情されまいと資産家であるかのように振る舞っていたシネの嘘を真に受け、卑劣な犯行に及んだのだった。ジュンを火葬に付した日、心にぽっかりと穴が空いたシネは、もはや涙すら乾ききっていた。布教活動に熱心な薬局の中年女性に同情されたシネは、入信を薦められる。シネには神など信じられなかった。
「もし神様がいて、その愛が大きいのなら、なぜジュンの命は奪われたの?」
しかし後日、あまりの心の痛みに耐えかね、路上で激しく取り乱したシネは、藁にもすがる思いで近くの教会へとさまよい込む。大勢の人々が賛美歌を歌うその場に身を置いた彼女は、なぜか不思議な安らぎを得るのだった。
シネは見違えるように元気になった。近所の教会仲間との集会や布教活動に積極的に参加するようになり、ジョンチャンもせっせとそれをサポートする。いくら友人に冷やかされ、シネに煙たがれようとも。シネはミリャンの町で初めて幸福を感じていた。
「誰かが私を愛してくれている。それを感じることが幸福なのです」
やがてシネはある決意を固める。ジュンを誘拐し、殺害した犯人に赦しを与えることを。敵を赦し、敵を愛せという神の教えを実践するために。
ジョンチャンの車に乗って刑務所を訪れたシネは、犯人の男と面会した。
「今日、私がここに来たのは、神の恩寵と愛を伝えるためです」
それを聞いた犯人は、すっきりとした表情で予想外のことを言い出した。
「ここに入所した後、私も神を心に迎えました。神はこの罪人に手を差しのべ、懺悔をお聞きになり、罪を赦したのです」
シネにはその言葉の意味がわからなかった。自分が相手を赦す前に、なぜ神が犯人を赦したのだろうか。それは絶対に受け入れられない現実だった。刑務所を出たとたんに気絶したシネは、この日を境に人が変わったように憔悴し、自宅に引きこもるようになる。
夫も、息子も、もう永遠に帰ってこない。愛する者すべてを失ってしまったシネは自暴自棄になり、恨みを晴らすかのように常軌を逸した行動を取り始める。
まだシネは気づいていなかった。この世で独りぼっちになった彼女を、ひたすら不器用に愛し続けるジョンチャンが今も寄り添っていることを。誰も知らないふたりの秘密の関係に、陽が差し込む日は訪れるのだろうか……。
スタッフ
原作:イ・チョンジュン「虫の物語」
脚本・監督:イ・チャンドン
撮影:チョ・ヨンギュ
照明:チュ・インシク
キャスト
チョン・ドヨン
ソン・ガンホ
チョ・ヨンジン
キム・ヨンジェ
ソン・ジョンヨプ
ソン・ミリム
キム・ミヒャン
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