原題:Reign Over Me

愛する者を失った時、 人はどうすればいいのか——?

第20回東京国際映画祭コンペティション部門正式出品

2007年3月23日全米公開

2007年/アメリカ/スコープサイズ/全7巻/3410m/SDDS、ドルビーデジタル、ドルビーSR/本篇上映時間:2時間4分/字幕翻訳:戸田奈津子 配給:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント

2010年05月26日よりDVDリリース 2008年06月25日よりDVDリリース 2008年12月22日(土)恵比寿ガーデンシネマ/新宿武蔵野館ほかにて全国順次ロードショー

公開初日 2007/12/22

配給会社名 0042

解説


愛する者を失った時、
人はどうすればいいのか——?

誰もが必ず出会う人生への問いかけを、
二人の男の魂の交流で描く感動作!

取り返しのつかない大きな喪失を、
人はどうすれば乗越えられるのか?
取り返しのつく過ちならば、
人はどうやって正せばいいのか?

キャリアと愛する家族に恵まれ、人もうらやむ人生を送る歯科医アランと、5年前の9月11日にたった一日で愛する者すべてを失った悲しみから、キャリアを捨てて殻に閉じこもった元歯科医チャーリー。大学時代のルームメイトだった二人が、ニューヨークの街角で偶然再会した時、彼らの人生は対極にあるかに見えた。だが、再び友情を育んでゆく中で、彼らは互いを必要としていることに気づいてゆく。
本作をひと言で紹介するならば、“9.11後のニューヨークを舞台にしたバディ・ムービー”である。しかし、その設定はこの映画の魅力の入り口にすぎない。物語が進むに連れて、人生への普遍的な問いに真摯に迫り、最後には豊かな余韻を残す、力強く温かい感動作なのだ。

新境地をひらいた人気コメディ俳優と演技派俳優
かつてない役どころに挑む二人を支える、
豪華共演者たち

 物語の軸となる二人の主人公を演じるのは、『50回目のファースト・キス』『ロンゲスト・ヤード』など1億ドル超えのヒット作を次々に放つ人気コメディ俳優アダム・サンドラーと、アカデミー主演男優賞にノミネートされた『ホテル・ルワンダ』や、ポール・ハギス監督・脚本でアカデミー作品賞・脚本賞・編集賞を受賞した『クラッシュ』の名演で知られる演技派ドン・チードル。
チャーリーを演じるサンドラーにとって、シリアスな役柄に挑戦するのは、ゴールデン・グローブ賞主演男優賞にノミネートされた『パンチドランク・ラブ』、佳作として評価の高い『スパングリッシュ/太陽の国から来たママのこと』に続いてこれが3度目。最愛の妻と3人の娘たちを一度に失った深い悲しみから目をそむけ、子どものように自由気ままな世界に遊ぶチャーリーを、ユーモアと悲痛さの絶妙なバランスのうちに演じてみせた本作では、これまでとはまったく違うサンドラーに驚かされることだろう。
チードルはシリアス・アクターとして高い評価を確立してきたが、今回のアラン役ではサンドラーとのコンビネーションを通して意外な軽やかさも発揮してみせる。女性患者の欲望の対象にされて閉口したり、女性セラピストを待ち伏せしては、友人のことを相談するふりをして悩みを聞いてもらったり、原付スクーターの二人乗りに大はしゃぎしたりといった、カワイイところのある男を熱演するチードルに新たな魅力を見出す観客は少なくないはず。
共演者たちの豪華な顔ぶれも見逃せない。チャーリーとの交友にのめりこんでいく夫アランを心配するジャニーンを演じるのは『マトリックス/リローデッド』『マトリックス/レボリューションズ』で知られるジェイダ・ピンケット=スミス。『ロード・オブ・ザ・リング』3部作で知られるリヴ・タイラーは、物語のターニング・ポイントでキー・パーソンとなる精神科医アンジェラ役。チャーリーの再生に思いがけない形で関わってゆくバツイチ美女ドナ役には『トロイ』のサフロン・バロウズ。終盤の法廷シーンでは『M★A★S★H』『普通の人々』のベテラン、ドナルド・サザーランドが判事役で登場する。

深いテーマをハイセンスな
ヒューマンドラマに仕上げた監督&スタッフ、
そしてロックの名曲の数々

 監督・脚本は『インディアン・サマー/タマワクの英雄たち』『ママが泣いた日』のマイク・バインダー。スタンダップ・コメディアン出身の才人で、自らの監督作に出演することも多く、本作でも会計士のシュガーマン役を演じている。共演者たちの才能を引き出す能力や、ユーモアと知性のバランスに優れた作品作りには定評があるが、本作では、重いテーマを扱いながら、決して押し付けがましいセンチメンタリズムに陥ることなく、『ハンナとその姉妹』などのウディ・アレン作品を彷彿させるハイセンスなヒューマンドラマに仕上げてみせた手腕が絶賛を浴びている。
製作は兄マイクの作品を手がけてきたジャック・バインダーと、エミー賞に輝くTVアニメーション「キング・オブ・ザ・ヒル」で知られるマイケル・ロテンバーグ。
撮影のラス・オルソーブルック、美術のピポ・ウィンターはバインダー監督の前作『Man About Town』に続いての参加。編集は『ママが泣いた日』、TVシリーズ「The Mind of the Married Man」でバインダーと組んでいるスティーヴ・エドワーズと、これがデビュー作となったジェレミー・ルーシュ。衣装は『タイタニック』でアカデミー賞に輝いたデボラ・L・スコット。音楽は『アバウト・シュミット』『サンキュー・スモーキング』のロルフ・ケント。
サウンドトラックにはグラハム・ナッシュの「シンプル・マン」、ザ・プリテンダーズの「ストップ・ユア・ソビング」、ブルース・スプリングスティーンの「アウト・イン・ザ・ストリート (表通りにとびだして)」と「ドライヴ・オール・ナイト」といった70s、80sのナンバーが並び、映画ではドラマと密接に関連する使われ方がされている。また本作の原題にもなっているザ・フーの「Love, Reign O’er Me」はオリジナル・バージョンに加えて、パール・ジャムがカバーしたバージョン(CD発売予定無し)がエンドタイトルに使用されている。

ストーリー




愛する者を失った男と、愛する者を見失った男。
大学のルームメイトだった二人が、ニューヨークの街角で出会った———

アラン(ドン・チードル)はニューヨークの歯科医。仕事は順調だし、美しい伴侶と愛する娘二人に恵まれ、他人から見れば文句のつけようのない人生を送っていた。ある日アランは、9.11の飛行機事故で妻子を失くし、消息がわからなくなっていた大学時代のルームメイト、チャーリー(アダム・サンドラー)を街で見かける。ぼさぼさの頭、だぶだぶの服にペンキ缶をぶらさげたその格好は、とても成功した歯科医とは思えない。アランは渋滞の車越しに呼びかけるが、彼の声は届かない。

アンジェラ・オークハースト(リヴ・タイラー)はアランのクリニックと同じビルで開業している若き精神科医。アランは今日も仕事帰りの彼女をつかまえ、“例の友人の件”を相談する。その“友人”は幸せな家庭を持っているが、一緒に息抜きができる男友達がいないのが悩みだという。アンジェラは度重なるこの無料相談に閉口気味だ。

 夜、友達の家まで送ってほしいと娘に頼まれたアランは、疲れていたにもかかわらず喜んで引き受ける。最近、妻のジャニーン(ジェイダ・ピンケット=スミス)と一緒に家にいると、なぜか息が詰まるのだ。
娘を送り届けた後、アランは街角で再びチャーリーと遭遇する。話しかけると、驚いたことに、彼はアランのことを知らないと言う。それでもアランの説明を信じたのか、あるいは記憶が甦ったのか、彼は自宅のアパートに招いてくれる。そこは不思議な空間だった。所狭しと置かれた大量の中古レコード。居間の大きなモニターに映し出されたプレイ中のTVゲームの場面。リフォームの最中らしいキッチン。そしてドラムやギターが並ぶ音楽ルーム……。どうやら彼はもう仕事をしていないらしい。

 チャーリーのことが気になったアランは、もう一度アパートを訪ねてみる。だが管理人は彼がチャーリーの友人だと名乗っても信じない。彼女は、この4年間で部屋に入ったのは自分と会計士と掃除人だけだと言う。押し問答をしているところへチャーリーが現れ、アランの容疑は晴れる。チャーリーは原付スクーターの後ろに彼を乗せると、ニューヨークの通りへ飛び出した。
 とあるクラブでドラムを演奏するチャーリーを楽しそうに眺めるアラン。学生時代、よく二人でジャム・セッションをしたことが懐かしく甦る。アランは出番を終えたチャーリーに思い出話を始めるが、亡くなった家族のことに話題が及んだ瞬間、チャーリーは怒り出し、アランに敵意をむき出しにするのだった。

 ドナ・リマー(サフロン・バロウズ)がアランのクリニックに初めて現れた時、その目的が歯のホワイトニングではないことは誰の目にも明らかだった。2度目の診療で、彼女はアランへの欲望を行動で表そうとして、追い出される。だがそれで終わりではなかった。彼女はアランに性的暴行を受けた件で訴えると言ってきたのだ。クリニックの同僚たちはアランに責任を押し付け、かばおうともしない。アランの心は重い。

通りで初老の女性がアランに話しかけてくる。チャーリーの亡くなった妻の母親ジンジャー・ティンプルマン(メリンダ・ディロン)である。彼女によれば、チャーリーは家族を亡くした後、仕事を辞め、航空会社と政府の慰霊金や生命保険で生活しているという。心を閉ざし、家族などいないと言って、残された唯一の身内である自分たちにも会おうとしないチャーリーが心配だ、と彼女は話す。

アランがチャーリーと過ごす時間は次第に増えていった。チャーリーを放っておけないというだけでなく、彼に仕事の愚痴を話したり、彼の音楽ルームでセッションしたり、TVゲームに熱中したりするのが楽しかったのだ。そんなアランに、ジャニーンはいい顔をしなかった。
ある晩、チャーリーに誘われてオールナイトで映画を観ている間に、アランの父が急死する。ジャニーンからの電話でそれを知り、ショックを受けるアラン。すぐに帰ると言う彼を、チャーリーはしつこく朝食に誘う。さすがのアランも今度ばかりは業を煮やし、彼を置き去りにする。

 チャーリーの会計士シュガーマン(マイク・バインダー)がアランを訪ねてくる。チャーリーが君に100万ドルを贈与すると言っているが、そうはさせないといきまく彼に、そんな金は要らないと言って安心させるアラン。どうやらチャーリーはお詫びのつもりだったらしい。

 チャーリーとアランの、一見子どもじみた奇妙な交流は、その後も続いていった。しかしアランがチャーリーの重要な問題に触れようとすると、彼は激しく反発する。ある時、クリニックに訪ねてきたチャーリーが荒れているところへ、ドナが現れる。彼女は、夫に裏切られ続けた不幸な結婚生活を打ち明け、アランへ謝罪する。

 チャーリーを何とか社会復帰させたいと願うアランは、彼をこっそり精神科医に引き合わせようと試みる。だがアランと医師の小芝居は簡単に見抜かれ、チャーリーを怒らせてしまう。一方、ジャニーンも、チャーリーのことに執心するアランへの不満を募らせていた。あなたはチャーリーの自由を羨んでいる、とジャニーンに冷静に指摘され、アランは返す言葉を失った。

 チャーリーがとうとうセラピーを受けることに同意する。アランの思いが通じたらしい。彼が紹介したのはアンジェラだった。アンジェラはチャーリーが心を開くのを辛抱強く待ち続けたが、彼にとって自分を見つめることは、思った以上に難しかった。何度目かのセラピーで、席を立って出て行こうとするチャーリーに彼女はこう提案する。家族を一度に失ったことについて話してほしい、私でなくてもかまわない、と。
ドアの外ではアランが待っていた。チャーリーは隣に座ると、静かに話し始めた。3人の娘たちのこと、飼っていた犬のこと、最愛の妻のこと、そしてあの日のことを……。

スタッフ

脚本・監督:マイク・バインダー
製作:ジャック・バインダー、マイケル・ロテンバーグ
製作総指揮:ジャック・ジアラプト、リンウッド・スピンクス
撮影:ラス・オルソーブルック、ASC
美術:ピポ・ウィンター
編集:スティーヴ・エドワーズ、ジェレミー・ルーシュ
音楽:ロルフ・ケント
音楽スーパービジョン:デイヴ・ジョーダン
製作補:レイチェル・ジマーマン
衣装:デボラ・L・スコット

キャスト

アダム・サンドラー
ドン・チードル
ジェイダ・ピンケット=スミス
リヴ・タイラー
サフロン・バロウズ
ドナルド・サザーランド
ロバート・クライン
メリンダ・ディロン
マイク・バインダー

LINK

□公式サイト
□IMDb
□この作品のインタビューを見る
□この作品に関する情報をもっと探す