原題:Nightmare Detective 2

第13回釜山国際映画祭出品作品ミッドナイト企画

2008年/日本/カラー/102分/ 配給:ムービーアイ

2009年06月26日よりDVDリリース 2008年12月20日(土)より、シネセゾン渋谷ほか全国順次ロードショー

(C)2008 NIGHTMARE DETECTIVE 2 FILM VENTURER

公開初日 2008/12/20

配給会社名 0366

解説



静謐な恐怖の果てに見える、愛に満ちた美しい物語

湿り気のあるセピアの夢から浮かび上がるのは、亡き母の哀しい記憶。それは、茫漠とした恐怖に怯える母が、「怖い、怖い…」と、まだ幼かった自分を拒絶する姿。「何がそんなに怖いの?」「お母さんはどうしてボクを怖がるの?」——。そんな過去を背負った男は、やがて他人の夢の中に入れる特殊能力をもった“悪夢探偵”と呼ばれる存在になっていく…。

07年、恐るべき破壊力を持つ作品として世界に向けて発表された『悪夢探偵』の続編が、早くも完成した。しかしそれは上質なサイコサスペンスのような構造を持った前作の続きではない。なぜ影沼京一は悪夢探偵となったのか? その秘密に迫る“序章”とも言うべき物語。新たな依頼者である女子学生の悪夢の謎と、亡き母・逸子の死を巡るエピソード。この2つの物語が同時進行し、やがて一つに繋がるとき、我々は「怖さ」と「優しさ」が同居した未だかつてない芳醇な人間ドラマを観ることとなる。

“悪夢探偵”である京一のもとに、新たにやってきた依頼者は、悪夢で眠れないと訴える女子学生の雪絵。一度は冷たく突き放す京一だが、雪絵の悪夢に登場する“異様なほど怖がりの同級生・菊川”の存在に、亡き母の記憶を呼び起こされる。それは、すべてのことに怯え、その恐怖に耐え切れず自らの命を絶った母・逸子の記憶。菊川を通して、母の思いを知りたいと願う京一は雪絵の夢に入ることを決意する。京一は母の思いに辿り着き、彼女たちを救うことが出来るのだろうか・・・。

新たな悪夢探偵の魅力を引き出したのは、“世界が認める鬼才”塚本晋也。作品ごとに話題を呼ぶその独自の映像センスは、常に世界レベルの注目を集めている。そんな彼が、長編11作目にして明らかに新たな領域へと足を踏み入れ、自身の最新作であり最高傑作を作り上げた。
 
主人公の影沼京一を演じるのは、前作に続いての登板となる松田龍平。今や日本映画界を代表する存在となった彼が、前作にも増して京一の人間性を見事に体現している。依頼人の女子学生・間城雪絵を演じるのは三浦由衣。その個性的な顔立ちと自然体の演技で、300人を超える候補者の中から見事ヒロイン役を射止めた。雪絵を眠らせない悪夢の正体、極端な怖がりの菊川役に『誰も知らない』の韓英恵。年齢を超えた存在感で確かなキャリアを積む彼女が、事件のキーとなる役で確かな演技力を見せる。近年は、舞台やTVドラマで、コメディエンヌとしての新たな一面を覗かせる市川実和子が、京一の母という振れ幅の激しい難しい役どころを見事に演じきり、観るもすべての心を掴む叙情的な演技を見せている。また、その妻を自殺から救えなかったことに苦悩し続ける京一の父・滝夫役に日本映画界を代表する名バイプレイヤー光石研、その他、内田春菊、北見敏之らが、確実な仕事でしっかりと作品の核を支える。

静寂な恐怖の果てに見えてくるのは、切なく美しい物語。恐怖という感情に迫りながら、やがて暖かい感動に満たされる新たな傑作が誕生した。

ストーリー



その少女を、そして自分自身を、悪夢から救うことができるのだろうか

イヤイヤながらも、他人の夢に入るという特殊能力を持ってしまった影沼京一(松田龍平)は“悪夢探偵”と呼ばれていた。そんな彼の前に新たな依頼者、女子高生の間城雪絵(三浦由衣)が現れる。「悪夢を見て眠れないんです。助けてください」。雪絵の悪夢に登場するのは同級生の菊川夕子(韓英恵)。菊川は異様な恐がりで、それを面白がった雪絵は睦美(安藤輪子)とアキ子(松嶋初音)を誘い、ちょっとしたイタズラのつもりで彼女を体育倉庫に閉じ込める。しかしその日から菊川は不登校となり、雪絵の悪夢に姿を現すようになる。京一は自分の夢に入ってほしいと頼む雪絵を、「本当に悪いと思うなら、ちゃんと会って謝ればいい」と冷たく突き放す。

そうして最初の事件が起きる。睦美が原因不明の心臓発作で急死したのだ。しかも授業中に居眠りをしたまま隣の机に頭を強打するという異様な死に様だった。「次は私かもしれない…」パニックに陥った雪絵は再び京一に助けを求める。雪絵は母子家庭で、母親の貴理子(内田春菊)は仕事のことで頭が一杯のため、娘の問題に気持ちを向ける余裕がない。雪絵が頼るのは京一しかいなかった。「ああ、いやだ。ああああ、いやだ。ああ、いやだ…」。京一は重い腰を上げ、菊川の家へ向かう。

 雪絵と出会ってからの京一は亡き母、逸子(市川実和子)のことをしばしば思い出していた。人の心の奥底に潜む悪意までも透けて見えてしまう繊細な心を持った逸子は、自分を取り囲む世界すべてを恐れていた。そしてそんな世界に京一を産み落としてしまったことに罪の意識を感じ、自分と同じように他人の心が見えてしまう京一を恐れてもいたのだ。生きていることそのものが恐ろしい——逸子は周りのものを傷つけ、やがて自分自身を傷つけて命を絶ってしまう。

菊川の家を訪れた京一は、彼女が描いた暗黒の闇を思わせる絵画の数々を目にする。自分を取り巻く世界そのもの恐がる菊川の精神性は、やはり亡き母を思い出させた。しかも追い討ちをかけるように、今度はアキ子急死の知らせが入る。「菊川は母に似ている。いま会わないと、取り返しのつかないことになる気がする」。京一はようやく、雪絵の悪夢に入り込む決意をする。最後に背中を押したのは、自分の存在を拒絶したまま亡くなってしまった母との絆を取り戻そうとする京一自身の、魂の再生へ強い意志だった…。

スタッフ

原案・監督・撮影・編集:塚本晋也
脚本:塚本晋也、黒木久勝

製作:ムービーアイ・エンタテインメント、海獣シアター
企画・制作プロダクション:海獣シアター
配給:ムービーアイ
支援:文化庁

キャスト

松田龍平
三浦由衣
韓英恵
松嶋初音
安藤輪子
内田春菊
北見敏之
光石研
市川実和子

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