80年代インディペンデントの極北。 日本映画の廃墟に咲いた異形の花。 不屈のシネアストたちの夢。

1988年/日本/カラー/150分/ 配給:安岡フィルムズ 配給協力:東風

2014年9月20日(土)〜10月3日(金) K's CINEMAにて再上映 2011年11月12日(土)〜18日(金) 連日20:45よりポレポレ東中野にてレイトショー 2007年12月21日よりDVDリリース 2007年9月2日、博多百年蔵ホールにて上映 2007年9月1日、シアター・イメージフォーラムにてレイトショー 2007年9月22日、大阪 シネヌーヴォX、京都みなみ会館、名古屋シネマテークにて公開予定 1988年5月、中野武蔵野ホールにて公開(16mmオリジナル版)

(C)Tomoshige Asada (C)1988-2007 松井良彦&安岡フィルムズ

サブ題名 デジタルリマスター版

公開初日 2011/11/12

公開終了日 2011/11/18

配給会社名 0706

解説


2004年5月7日、東京中野にあるミニシアター「中野武蔵野ホール」が閉館した。
同館最終上映21時からのプログラムは『追悼のざわめき』。
80席に満たない劇場が発行した入場整理券は200枚を超えた。
異例の“ダブルレイトショー”。最終回、上映開始は24時。終映は26時30分。
最終上映が終わると、出口に待ち構えていた監督の松井良彦が、観客ひとりひとりと握手を交わした。彼を取り囲む人垣は27時を過ぎても消えることはなかった。

1988年5月に初公開されて以来、『追悼のざわめき』は毎年のようにこの劇場で上映されてきた。1988年、公開に先立つ試写会では、賛否が激しく対立した。小人症の主人公たち、兄にレイプされ死にいたる少女、その妹の腐乱死体をむさぼり食う兄、舞台は、猛々しいヤクザが支配する大阪のアンタッチャブルな寄せ場「釜が崎」・・・、あからさまな差別や偏見にまみれ、それぞれの閉ざされた苦境の中で懸命に生きようとする登場人物たちの絶望と破滅が描かれていた。

85年のトリノ国際映画祭に出品を予定されながら、イタリア税関でストップ。86年には香港での日本映画祭に招待されながらも、同じく税関ストップ。試写を担当した映写技師が嘔吐するという「事件」まで引き起こした。映画誌「イメージフォーラム」(1988年6月号)では、おすぎが「とにかく汚らしい」と吐き捨てるようにののしる。同人誌「シネマ・エデン」では、本作を19回見た編集者・三谷みどりが「私は『追悼のざわめき』になりたい。」という表題で恍惚としたオマージュを書きつづる。超満員の劇場では、開映後20分を過ぎたあたりから、気分を悪くした観客が続々と席を立つ。「最低!」と「最高!」、交錯する反響が伝説のカルトムービーを産み出した。

撮影開始から24年、公開から18年、聖地「中野武蔵野ホール」の閉館から3年…。かつて、『追悼のざわめき』が描いた寓話の世界が、今、現実のものとなっている。意味不明な残虐犯罪の続発、親殺し、子殺し、兄妹殺し…。『くりいむレモン』『僕は妹に恋をする』etc.当たり前のように描かれる近親相姦…。時代が『追悼のざわめき』に追いついてきた。『追悼のざわめき』は過去のものではない。今の現実に潜むやみがたい狂気へのレクイエム、究極のハードコア・ファンタジーとして甦るのだ。「中野武蔵野ホール」の閉館以来、封印されていた劇場公開が、この夏、ついに解き放たれる。バージョンは、傷だらけの16ミリフィルムではなく、ニュープリントからのHDテレシネ。音響はオリジナル音源からのデジタルリマスター。さらに、本作に熱烈な共感を寄せていたミュージシャン・上田現が書き下ろした楽曲が追加される。鮮烈な描写が、暴力的なほど鮮明なハイビジョン画像とデジタル音響で襲いかかる。ここに「伝説」の新たな1ページが開かれるのだ。

ストーリー



大阪市南部、若い女性たちの惨殺事件が続発する。
被害者たちは下腹部を切り裂かれ、その生殖器が持ち去られていた。

犯人は廃墟ビルの屋上で暮らす孤独な青年、誠(佐野和宏)。
彼は「菜穂子」と名づけられたマネキンを愛し「愛の結晶」が誕生することを夢想していた。
次々に若い女性を惨殺し、奪った生殖器を菜穂子に埋め込む。

やがて彼女に不思議な生命が宿りはじめ、様々な人間が、誠と菜穂子が暮らす「魔境」=廃墟ビルへと引き込まれていく。

現実の街並みは、いつしか時間感覚を失い、傷痍軍人や浮浪者など、敗戦直後を思わせるグロテスクなキャラクターが彷徨しはじめる。

純粋に二人だけの世界で生きていた幼く美しい一組の兄と妹(隈井士門、村田友紀子)。遊びといえばケンパしかしらない。かれらもまた、菜穂子がいる廃墟へと導かれてゆく。

菜穂子と産まれてくる子供のために、誠は、小人症の兄妹(日野利彦、仲井まみ子)ふたりきりで営まれる下水道清掃会社で働きはじめる。
福田の妹・夏子は誠に心ひかれてデートに誘うが、路上で暴漢に襲われ、無残にもレイプされてしまう。深い絶望は、自分の醜い火傷姿が男たちに愛されたことで癒されるが、誠に、愛する「女」がいることを告白され、孤独と嫉妬に打ちひしがれる。
街をさまよい、やがで廃墟ビルへ…。

廃墟ビルの屋上。
幼い妹は菜穂子に「母」の面影を見る。
兄は、その姿に激しく「性」を感じる。

そのとき、廃墟ビルに引き込まれた人々に残酷な運命が訪れる……。

スタッフ

監督・脚本:松井良彦
製作:安岡卓治
製作補:山本希平
演出補:佐々木宏
録音:浦田和治
編集:高島健一、緒方達也、鐘門律知、佐々木宏
音楽:菅沼重雄、上田現
音響効果:本間明
特殊メイク:松井祐一
スチール:浅田具茂
撮影:手塚義治、村川聡、井川義之
協力:白藤茜、維新派、白虎社

キャスト

佐野和宏
仲井まみ子
隈井士門
村田友紀子
大須賀勇(白虎社)
日野利彦(人力飛行機舎)
白藤茜
皆渡静男
高瀬泰司
(声)松本雄吉、他

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