ラザロ
2006年/日本/カラー/201分 配給:「ラザロ」上映委員会
2007年7月14日、ポレポレ東中野にてロードショー 名古屋シネマテーク、大阪・第七藝術劇場、広島・横川シネマ他全国順次公開予定
公開初日 2007/07/14
配給会社名 0844
公開日メモ 世界の破滅とその後に訪れるであろう再生を希求する女、マユミをめぐるこの三篇の物語は、彼女の闘争の記録であり、愛と憎しみの軌跡である。そして、彼女の意志に共鳴した女たちの精神の叫びである。
解説
■怪物的ヒロインが誕生した。彼女の名は……マユミ。
社会からはみだした女たちを組織し、資産家の子息を殺してその財産を奪い、偽札をばら撒いて経済テロを目論む……この世界の破滅とその後に訪れるであろう再生を希求する女、マユミ。
この三篇の物語は、彼女の闘争の記録であり、愛と憎しみの軌跡である。
そして、彼女の意志に共鳴した女たちの精神の叫びである。
「金持ちはより金持ちに、貧乏人はより貧乏になる。それがこの社会のカラクリや」
そう呟きながら、無表情で殺人を遂行していくマユミ。
『蒼ざめたる馬』編では、格差社会が生み出したモンスターであるマユミが、女たちを率いて資産家の子息たちをたぶらかし、殺害していく様が描かれていく。
「好きとか嫌いとか、気持ちとか心とか、そんなもんでしか繋がれへん関係はとっくの昔に捨てたんや! 例え、心で憎しみあってても共通の目的のためなら一緒に行動できる、あたしはな、そんな絆しかいらんねん!」
自らに愛を向ける者をそう冷酷に切り捨て、日本経済の破滅という目的のためだけに、大量の偽札をばら撒くマユミ。
『複製の廃墟』編では、マユミと行動を共にするナツエとの同性愛的な関係と、偽札犯を追う刑事たちの関係を軸にドラマは展開し、愛を信じることの出来ないモンスターの苦悩と葛藤、そして孤独が描かれる。
なぜ、彼女は民衆の敵(パブリック・エナミー)№1となったのか?
『朝日のあたる家』編では、いかにしてマユミがモンスターとなったのかという、その誕生の過程が、現代日本のリアルな社会状況を背景に、マユミと妹の直子の関係を軸に描かれる。
■ラザロ−LAZARUS−とは?
新約聖書の「ヨハネによる福音書」に登場する貧民の名前で、死後四日目にイエスによって復活させられる。
ドフトエフスキーは『罪と罰』において、主人公のラスコーリニコフが殺人を自白する契機として、聖書の「ラザロの死とよみがえりの個所」を娼婦に朗読させる場面を書いているが、『蒼ざめたる馬』編ではマユミが仲間のリツコにこのラスコーリニコフの自白について語って聞かせるシーンがある。
また、ロシアの小説家レオニード・アンドレーエフに『ラザロ』という短編小説があり、アンドレーエフは、甦った後のラザロの姿や生活をほとんど恐怖小説として描いている。
この映画では、アンドレーエフのこの『ラザロ』が重要なモチーフとなっており、『朝日のあたる家』編におけるモンスター、マユミの誕生の秘密と深く関わっている。
ストーリー
『蒼ざめたる馬』篇 −怪物マユミ−
浴室に横たわる男の溺死体。その傍らで、息を切らせて立ちすくむ3人の女。
ミズキ、リツコ、そしてマユミ。
死体の男は、リツコがたぶらかして付き合い始めた金持ちの息子・尚志だった。
女たちは、資産家の子息たちを狙ってたぶらかし、殺害した後に、殺した相手の預金を引き出して生活資金を得るという、奇妙な共同生活を送っているのだ。
マユミは言う。
「金持ちはより金持ちに、貧乏人はより貧乏になる。それがこの社会のカラクリや」
不幸な生い立ちのミズキとリツコは、マユミに操られるまま、罪を犯していく。
だが、一番年下のミズキは、だまして殺すはずの相手・陽介のことを好きになり始めていた。普通で幸せな生活、陽介との結婚という将来に淡い夢を抱き始めるミズキ。
一方、陽介は、尚志と連絡がつかなくなったことを次第に不審に感じ始める。
それを知ったマユミは、すぐさま次の行動をミズキに命じるのだったが……
『複製の廃墟』篇 −マユミの孤独−
首都圏一帯に蔓延した大量の偽札は、日本経済に深刻な打撃を与えていた。
威信をかけた警察の捜査も、進展のないまま被害は拡大の一途を辿っていく。モンタージュ写真の女を追って、日夜捜査に奔走するベテラン刑事松村と新米の相沢。
ある日、捜査中の2人は路上で激しい激突音を耳にする。駆け寄ると、黒い車が猛スピードで逃走していくのが見えた。現場には、年老いた男が血を流して倒れている。そして、その様子を遠くから見つめている白い日傘の女。相沢は目撃証言を得ようと、その女のあとを追った。
蝉時雨の降り注ぐ公園でようやく追いついた相沢は、警察手帳を示した。日傘を上げ 顔を覗かせる女。その瞬間、相沢の全身に衝撃が走った。女の視線に見入られたように動けなくなる相沢。女は謎めいた笑みを残し、やがて静かに立ち去って行くのだった。心奪われた相沢は呆然と後姿を見送ることしか出来なかった。
そんな中、偽札使用の実行犯が突然逮捕される。執拗な取り調べの末、実行犯が口にした主犯の名は あまりにも意外な人物のものだった。愕然とする刑事たち。捜査は新たな局面を迎え、急展開をみせてゆく。
しかし捜査が進むに連れ、相沢の疑念は次第に増していくことになる。あの日傘の女は、やはり偽札事件と何か関係があるのではないか・・・
相沢は、そのことを確かめるべく単独行動をとり始めるのだった。
『朝日のあたる家』篇 −マユミの誕生−
グローバル資本主義は、旧来の地域経済を破壊し尽くし、同時に地域の共同体をも破壊しさる。現在、日本の地方都市では、市街地の商店街や小売店はほとんど沈没し、郊外ではアメリカ型の大型店舗が隆盛の極みを見せている。それが日本のあらゆる場所で見られる現象である。
とある地方都市の駅前商店街。かつての活況は見る影もなく、店々は深くシャッターを閉ざしたまま沈黙している。それを見下ろすかのごとく郊外に聳え立つ大型店。その町で、マユミはささやかな幸せを望みながら暮らしていた。
ある日、妹のナオコが突然東京から戻ってくる。ナオコは絵描きになる夢に挫折して故郷に帰ってきたのだった。変わり果てた商店街の姿に目を奪われつつ、廃業した洋品店の実家に手荷物を置くナオコ。
その夜ナオコは、マユミと交際しているという梶川と偶然出会う。梶川の落ち着いた雰囲気に好印象を抱くナオコだったが、翌日マユミから彼の勤め先が、郊外の大型スーパーであることを聞かされて、激昂する。
「うちの商店街が寂れたんは全部あいつらのせいや!」
「それは逆恨みや、あの人が悪いわけじゃない!」姉妹は激しく対立することになった。
そのいきさつを聞いた梶川は、釈明を試みようとクルーザーを駆ってナオコを海へと誘った。自分の考えや立場を誠実に語る梶川。ナオコは誠意ある梶川の態度に理解を示し、マユミとも仲直りをした。マユミは最愛の妹と平穏な日常に戻れることを喜び、安堵の表情を浮かべた。ナオコも笑顔でこたえた。
しかし、ナオコは完全に納得したわけではなかった。
胸の奥のくすぶりは やがて激しい炎となって、ナオコを思いもよらぬ行動に駆り立てるのだった・・・
スタッフ
監督:井土紀州
脚本:板倉一成、井土紀州、森田草太、遠藤晶、西村武訓、吉岡文平
プロデューサー:木村文洋、吉岡文平、西村武訓
撮影:鍋島淳裕
仕上:臼井勝
音楽:花咲政之輔 太陽肛門スパパーン
録音:小林徹哉
製作:吉岡文平
配給・宣伝:『ラザロ -LAZARUS- 』上映委員会
キャスト
東美伽
弓井茉那
成田里奈
池渕智彦
小野沢稔彦
伊藤清美
堀田佳世子
小田篤
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