原題:Catch a Fire

南アフリカを舞台に一人の男がテロリストと化した、 実話を基に描く社会派サスペンスドラマ

ナショナル・ボード・オブ・レビュー賞 優秀インディペンデント作品賞受賞

2006年度作品/ユニバーサル映画/スタジオカナル/ワーキングタイトル|ミラージュエンタプライズプロダクション/ シネマスコープ/5巻/カラー/上映時間:1時間41分/翻訳:古田由紀子 配給:UIP映画

2007年06月14日よりDVDリリース 2007年1月27日(土) シャンテシネ他にて全国順次公開

公開初日 2007/01/27

配給会社名 0081

解説


◆全米マスコミ絶賛!
トロント映画祭では涙のスタンディング・オベーション
アカデミー賞受賞スタッフが、1人の男の半生を通して世界に問う衝撃作

 1980年代の南アフリカ──そこには人間としての尊厳を奪われた人々がいた。国連からも「人類に対する犯罪である」と呼ばれたほど過酷なアパルトヘイト《人種隔離政策》の現実。舞台となる時代こそ異なってはいるが、その国で何が起こっていたのかを描いた作品は、『遠い夜明け』、『白く乾いた季節』、『ワールド・アパート』、『サラフィナの声』等、どれもが心を揺さぶる名作ばかり。しかしその悲劇的な歴史には、いまだに語られることのない真実が隠されていた。実話ゆえの衝撃が、否定することのできない感動を呼び起こす。『輝く夜明けに向かって』は、パトリック・チャムーソという実在の男を通し、南アフリカの歴史に再び一石を投じた作品である。
 パトリック・チャムーソ、彼は政府側から見れば「テロリスト」だが、民衆にとっては「自由の戦士」。家族を愛する普通の男、政治に関ることを避けていた彼が何故、”反逆の英雄”へと変貌していったのか…。そこには政治的なメッセージよりも、生き抜くための心の叫びが込められている。アパルトヘイト崩壊から15年──アカデミー賞に輝くスタッフ&キャストが贈る渾身の物語に、世界中から賞賛の声が寄せられている。
 「歴史の重さ」、「人権の重さ」、そして「真実の重さ」を一つに束ねながら、決して重たいプロパガンダだけに陥らない人間ドラマの演出を手がけているのは、名匠フィリップ・ノイス監督。『裸足の1500マイル』、『愛の落日』といった社会派の感動作でも描いた”歴史に翻弄される人々”。そして彼の名前を一躍メジャーに押し上げた『パトリオット・ゲーム』、『今そこにある危機』のエンターテインメント・サスペンス性。本作品ではそれらの要素が融合して、見事な映画の世界観を構築。ベテラン監督でありながら、新たな領域への第一歩を踏み出している。
 また製作陣も超一流の顔ぶれが集結。『愛と哀しみの果て』でアカデミー賞を受賞し、近年では『ザ・インタープリター』が記憶に新しいシドニー・ポラックが製作総指揮を、『イングリッシュ・ペイシェント』で同じくオスカーに輝いたアンソニー・ミンゲラが製作を担当。ともに監督として壮大なスケールのドラマを手がけてきた2人の巨匠が本作を支えている。

◆極限の実話だけが伝えられる、リアルな社会派サスペンス・ドラマ
アカデミー賞俳優ティム・ロビンスと新鋭デレク・ルークが魂をぶつけ合う

 1980年、南アフリカ北部の炭田地帯。アパルトヘイトの過酷な状況下、セクンダ石油精油所で働くパトリック・チャムーソ(デレク・ルーク)は妻と2人の子供とともに、当時の黒人としては豊かな生活を送っていた。しかしアフリカ民族会議(ANC)の起こした爆破事件の犯人として”無実の罪”を着せられたことから、彼の人生は大きな転機を迎える。テロ対策班のニック・フォス(ティム・ロビンス)による厳しい追求に愛する妻が巻き込まれたことで、パトリックは立ち上がる決意をするのだった。自由を勝ち取るためにANCの急進的な工作員となったパトリック。そして国家と家族をテロリストから守るという大儀を胸に捜索の手を緩めないニック。やがて歴史の大きなうねりに身を置く2人は、恐ろしい爆破計画を巡って再び対峙するのだった…。
 テロ対策捜査官ニックに扮するティム・ロビンスは、冷徹な表情で厳しい拷問も辞さない一方、父親として家族を愛する、善悪だけでは単純に割り切れない複雑なキャラクターを熱演。アカデミー賞を受賞した『ミスティック・リバー』に匹敵する演技を披露。監督としても『デッドマン・ウォーキング』等を手がけているだけに、演技者としてだけでなく、「白人警官を含み、南アフリカを多角的に捉えたい」という製作意図を汲んだ人物表現を見せている。
 主人公のパトリックを演じるのは、デビュー作『きみの帰る場所/アントワン・フィッシャー』で数々の賞に輝く注目を集め、『エイプリルの七面鳥』や『プライド/栄光への絆』でも魅力を発揮した新鋭デレク・ルーク。普通の男だったパトリックが英雄と呼ばれる存在になった心の変化を見事に演じ、早くも本年度アカデミー賞の呼び声も高い。
 脚本を担当したのは、両親が反アパルトヘイト活動家であった実体験を基に『ワールド・アパート』を執筆したショーン・スロヴォ。父は劇中にもANC幹部として登場するジョー・スロヴォであり、本作品のアイデアは彼から与えられたものである。残念ながらジョーは映画化を待つことなく95年にこの世を去り、エンドクレジットには「ジョー・スロヴォに捧げる」と記されている。またジョーの娘であり、ショーンとは姉妹のロビンもプロデューサーとして参加している。反アパルトヘイト活動にとって重要な役割を担った音楽を再現したのは、南アフリカ音楽界の多方面で活躍しているフィリップ・ミラー。何万人もの人々が祖国の解放と自由を夢見て歌い続けた「フリーダム・ソング」をはじめ、まるで大地の底から湧き上がってくるようなスコアが深く心に響いてくる。
 「故郷よ、さらば。別れを告げて他の国へ向かおう。両親にも知られず、自由のために戦おう…」──魂の命じるまま、後戻りのできない道を歩み出したパトリックが最後に見たものは?苦しみと憎しみを乗り越えた彼の胸に去来したことこそが、本作品の真のテーマなのである。

ストーリー




 1980年、南アフリカ北部の炭田地帯。パトリック・チャムーソ(デレク・ルーク)は友人の結婚式に出席した帰り、妻のプレシャス(ボニー・ヘナ)と2人の娘と母を乗せて車を走らせていた。しかし楽しいはずのドライブは警察の検問によって中断される。近くでアフリカ民族会議(ANC)が列車爆破テロを起こしたらしい。黒人にもかかわらず車とカメラを持っていることに目を付けられてしまったのだ。犯人が目の前で逮捕されたことによって通過を許されたものの、パトリックの胸を不安の影が覆い始めていた。
 仕事熱心なパトリックはセクンダ石油精油所で、監督をするかたわら、近所の子供たちを集めてサッカー・チームのコーチをしていた。公私共に満ち足りた生活を送っているパトリックは政治に無関心で、ANCが放送している「ラジオ・フリーダム」などには耳を貸すこともない。一方で政府のアパルトヘイト政策を忠実に遂行しようとする公安部テロ対策班のニック・フォス大佐(ティム・ロビンス)は、過酷な取調べによるテロリストの発見と一掃に心血を注いでいた。彼にも2人の娘がいるが、身を守るためには幼い子供に射撃を教えるほど、その考え方は徹底していた。
 パトリックはチームを引き連れてサッカー大会に出場し、ついに決勝戦進出を果たす。ところがそのためには仕事を休まなければならず、プレシャスに頼んで病気の診断書を偽造。その1日が、彼の生涯を大きく変えることになろうとは…。見事に優勝を勝ち取ったその夜、彼はチームを離れて1軒の貧しい小屋を訪ねる。そこには別れたはずの愛人ミリアム(テリー・フェト)と、その息子が住んでいた。つかの間の再会だったが、パトリックは「父親であることを息子に打ち明けてほしい」というミリアムの言葉に背を向けるしかなかった。そして帰路の途中、暗闇を照らす巨大な炎を目にする。それは反体制勢力がセクンダ石油精油所を攻撃した証。翌日、厳戒態勢の工場では黒人労働者たちの歌う「フリーダム・ソング」が響き渡っていた。
 ついにテロ対策班の捜査の手がパトリックにも及ぶ。容疑はテロリストを手引きして精油所爆破に加担したというものだった。ニックは無期限に拘束したパトリックに拷問を繰り返しながら、日曜日には自宅の食事に連れて行くなどの硬軟を使い分けて自白を強要。そして残してきた家族の姿を見せられた時、真実を語らざるを得なかった。ところがその言葉すら、ニックは信じようとはしない。そして──パトリックが最も恐れていた事態に発展する。ニックたちは事もあろうにプレシャスを拷問したのだ。あまりにも酷いやり方に怒り狂うパトリックは、「あの夜、フェンスを破って精油所に侵入した」と嘘の自白をする。いくら自分が罪をかぶって虐げられても、家族だけは守らなければならなかった…。
 やがてパトリックは釈放された。「無罪の男を有罪にしている間に、本物のテロリストが暗躍する」というニックの決断である。しかしこの出来事がきっかけで、パトリックは家族に何も告げることなく、モザンビークの首都マプトにあるANC本部に身を寄せていた。「戦う決意をしたら決して後戻りはできない。家族にも2度と会えないかもしれない」──ジョー・スロヴォ作戦部長とオバディ軍事教官の言葉とともに、パトリックはコードネーム”ホットスタッフ”として厳しい訓練に参加。ニックもテロリスト摘発の手を緩めず、スパイを使ってANCメンバーの潜伏先を突き止めていた。そして解放軍を装った部隊がメンバーを急襲。パトリックの目の前で多数の同志が銃弾に倒れてしまう。ニックが作戦の成功を認められて勲章を授与された時、一方ではANCの葬儀が静かに行われるのだった。
 仲間の死で決意を新たにしたパトリックは、作戦部長のジョーにセクンダ石油精油所の爆破計画を進言。工場内部に精通した自分なら、前回よりも大きな打撃を与えられると…。そこは世界から石油制裁を受けている南アフリカ政府が生き延びるための象徴であり、爆破することはANCにとって最高のプロパガンダになるはずだった。第1の爆弾で火災消化用のポンプを破壊すると同時に、警報で作業員たちを避難させ、第2の爆弾で工場の心臓部を破壊する。この計画ならば犠牲者を出すことはない。正義の戦いを目指すANCにとっては、それも重要なことであった。
 今や<自由の戦士>に変貌したパトリックは、アンゴラで軍事訓練を受けた後、単独でセクンダへと舞い戻ってきた…。

スタッフ

監督:フィリップ・ノイス(「愛の落日」「裸足の1500マイル」)
製作:アンソニー・ミンゲラ(「イングリッシュ・ペイシェント」)
製作総指揮:シドニー・ポラック(「愛と哀しみの果て」「インタープリター」)

キャスト

ティム・ロビンス(「ミスティック・リバー」)
デレク・ルーク(「きみの帰る場所/アントワン・フィッシャー」)
ボニー・ヘナ

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