原題:Darwin's Nightmare

2006年 アカデミー賞 長編ドキュメンタリー賞ノミネート 2004年 ヴェネツィア国際映画祭 ヨーロッパ・シネマ・レーベル賞 2006年 セザール賞 最優秀初監督作品賞 2005年 山形国際映画祭 審査員特別賞 コミュニティシネマ賞

2004年/フランス、オーストリア、ベルギー/カラー/英語・ロシア語、スワヒリ語/ 112分/35mm/ヴィスタサイズ/ドルビーSRD 配給:ビターズ・エンド

2007年07月06日よりDVDリリース 2006年12月23日より、シネマライズにてロードショー!他、全国順次公開!

公開初日 2006/12/23

配給会社名 0071

解説


これは、あなたが生きている世界の物語

アフリカ・ビクトリア湖は、生物多様性の宝庫であることから「ダーウィンの箱庭」と呼ばれていた。その湖に、今から半世紀ほど前、ささいな試みから、新しい生き物が放たれた。この大食で肉食の外来魚ナイルパーチは、もともと生息していた魚の多くを駆逐しながら、どんどんと増え、状況は一変。湖畔の町にはナイルパーチの一大魚産業が誕生し、周辺地域の経済は潤う。しかし、一方では、悪夢のような悲劇が生み出されていった。
新しい経済が生み落とす貧困、売春、エイズ、ストリートチルドレン、ドラッグ、湖の環境悪化……。まるでドミノ倒しのように連鎖する。さらには、ナイルパーチを積みにやってくる飛行機がアフリカへ運んでくるものにも驚くべき疑惑が……。
ナイルパーチは日本にも輸出されている魚だ。強大な資本主義が世界を覆いつくそうとする今、本作で情け容赦なく暴かれていく悪夢のグローバリゼーションは、決して遠い世界の出来事ではない。

社会論争まで巻き起こした超話題作。

『ダーウィンの悪夢』は2004年ヴェネツィア国際映画祭での受賞を皮切りに、2005年山形国際ドキュメンタリー映画祭 審査員特別賞・コミュニティシネマ賞、2006年セザール賞 最優秀初監督作品賞のほか、世界中の映画祭で多数のグランプリを獲得、2006年アカデミー賞では長編ドキュメンタリー賞にノミネートされた。また、ヨーロッパ公開時には、その衝撃的な内容に賛否を含む論争までも巻き起こした。
監督のフーベルト・ザウパーは、オーストリア出身のドキュメンタリー作家。前作「KISANGANI DIARY」でも国際的な賞を数々受賞。本作は、「大胆、かつ情け容赦ない傑作!」(タイムアウト・ニューヨーク)、「恐ろしい!素晴らしい!」(レザンロキュプティブル)、「おぞましいまでの崇高さ」(ニューヨーク・タイムズ)、と世界中のメディアに絶賛され、さらなる注目を集めた。世界中が驚愕した超話題作、日本公開決定!

ストーリー

 ヴィクトリア湖畔。巨大な魚を運ぶ人や水揚げする漁師たちで活気にあふれている。この巨大魚こそが、半世紀ほど前に湖に放たれたナイルパーチだ。肉食の魚・ナイルパーチは湖に元々いた魚たちを餌にして、たいへんな勢いで増えた。そして、淡白な白身で加工もしやすく、海外への輸出にぴったりだったナイルパーチは”大金になる魚”になった。皆がナイルパーチ漁にむらがり、加工・輸出の一大魚産業が誕生した。魚加工工場のオーナーに言わせれば、ナイルパーチは救世主だ。

 ナイルパーチで仕事をしているのは、漁師や加工工場の人間ばかりではない。最大の輸出先であるEUの国々に魚を空輸するパイロットもそうだ。彼らは旧ソ連地域からやってくる。1回につき55トンもの魚を飛行機の腹に詰めて、タンザニアとヨーロッパを頻繁に往復する。そして、彼らパイロットを相手に町の女・エリザたちは売春で金をかせぐ。

 ナイルパーチで仕事をしているのは、漁師や加工工場の人間ばかりではない。最大の輸出先であるEUの国々に魚を空輸するパイロットもそうだ。彼らは旧ソ連地域からやってくる。1回につき55トンもの魚を飛行機の腹に詰めて、タンザニアとヨーロッパを頻繁に往復する。そして、彼らパイロットを相手に町の女・エリザたちは売春で金をかせぐ。

 農村などからもお金を得ようと多くの人がやってきた。彼らは湖畔に漁業キャンプをつくった。漁に出てナイルパーチを獲り、工場に売って金を稼ぐために。だがボートのない彼らは、誰もが漁に出られるわけではない。工場の仕事にありつくのも難しい。彼らの中に次第に貧困がはびこり始める。同時にキャンプの男たちを目当てに売春をする女たちも増えた。そこからエイズが広がり、病気で働けなくなる者も多い。漁業キャンプの牧師によれば、毎月10?15人が死ぬと言う。それでも牧師は「教会はコンドームを勧められない」。キャンプのリーダーは、「貧困が悪循環している。強い者だけが生き残る、弱肉強食なんだ」と言う。

 町にはストリートチルドレンが目につく。画家のジョナサンも、かつては路上で生活していた青年だ。エイズで親をなくしたり、貧困やアル中で子どもを育てられない親たちに放り出されたり、路上で生活せざるを得ない子どもたち。暴力や空腹を忘れるため、粗悪なドラッグを嗅いで眠りにつく夜もある。ドラッグはナイルパーチの梱包材などを溶かしてつくる。

 ”住民参加型漁業をめざす国際ワークショップ”で、ヴィクトリア湖の自然が壊滅的状況にあることが報告される。ナイルパーチによって湖の生態系が崩れ、やがてはナイルパーチさえいなくなる危険もあるのだ。

 一方、魚加工工場で不思議なトラックを見かけた。それはナイルパーチを加工した後の残り物を集めに来たトラックだった。ナイルパーチの切り身は多くの地元民には高くて手が出せない。切り身を輸出した後の残りの頭や骨などを1ヶ所に集め、揚げたり焼いたりして売っている。それを地元民は食べる。残骸の山からはアンモニアガスが噴き出し、そのせいで眼球が落ちてしまった女性もいる。

 在タンザニア欧州委員会の代表は、EUがこの国の魚加工産業のインフラを整えたのだと胸を張った。

 ジョナサンが興味深い話をおしえてくれた。ヨーロッパからナイルパーチを運ぶためにやってきた飛行機から大量の武器が見つかった。タンザニア政府はそれを知らなかったが、行き先はアンゴラだった。ジョナサンはその話を新聞やテレビで知ったと言う。漁業研究所の夜警?ラファエルが読んでいる新聞には、タンザニアの保安長官が飛行機による武器密売に関与し起訴された、との記事が。その記事を執筆したジャーナリストのリチャードは、魚を運ぶためにやってくる飛行機にはアフリカの紛争で使われる武器が積んであると言う。果たしてそれは真実なのだろうか?

 ラファエルが呟く。「戦争があれば金になるのに……皆、戦争を望んでるはずさ」。

 魚を積んだ飛行機はヨーロッパや日本へ飛び、魚は私たちの食卓へやってくる……。

スタッフ

監督:フーベルト・ザウバー

キャスト

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